第92回天皇杯全日本サッカー選手権大会2回戦 【レベルファイブスタジアム】
福岡大学2‐4アビスパ福岡
【得点】 [福大] 岸田和人(41分)岸田翔平(76分)
[アビスパ]城後(7分,44分)オズマール(59分)サミル(71分)
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1回戦で宮産大を延長戦の末破った福大。2回戦の相手はJリーグに加盟するアビスパ福岡(J2)。昨年Jリーグのチームを破ったように、今年度もジャイアントキリング達成し、天皇杯物語を創り上げられるか。また、同じ福岡県を拠点とするチーム同士の対決で、アビスパには福大OBが5人所属。福大のコーチ陣にも元アビスパの選手が在籍するなど、注目度の高い天皇杯とはまた違う独特の雰囲気の中での試合となった。
福大のスタメンは、J1名古屋への入団がほぼ決まっているキャプテンのDF牟田(4年=筑陽学園)。J1鳥栖の強化指定選手のDF岸田〈翔〉(4年=U-18大分)とMF清武(4年= U-18大分)。さらに、全日本大学選抜のGK藤嶋(3年=大津)と同選抜で、牟田と大型CBコンビを組むDF大武(2年=筑陽学園)らなど、大学サッカー界屈指の盤石なメンバーで臨む。
対するアビスパも福岡大卒の選手を3人(GK河田,DF山口,MF末吉)スタメンに起用。また、普段学生にとって対戦する機会があまりない外国人FWオズマールを起用するなど、プロとして勝ちにこだわるメンバーで試合に臨んだ。
先に先制点を挙げたのはアビスパだった。福大がCKのチャンスを得るもセカンドボールを拾われ、逆に素早くカウンターを仕掛けられる。左サイドでパスを淡々と繋がれゴール前にパスを出されると、DFの動きを読みゴール前に素早く入った城後に右足で簡単に合わせられ前半7分に先制点を許す。早い時間帯での失点だったが、福大は意気消沈することなくすぐさま反撃に出る。その後は高い位置からプレスをかけ相手の攻め手を潰していく。ブラジル人FWオズマールとDF牟田や岸田(翔)に1対1の場面が度々あったが、オズマールの前線への突破を防ぐ場面が目立つ。また、攻撃面でもDF岸田(翔)が右サイドを突破し、精度の高いロングボールを前線に積極的に送り込むなど、チームの持ち味である高さを活かした攻撃で試合の主導権を握っていく。すると41分。岸田翔平のクロスを双子の兄であるFW岸田和人(4年= U-18大分)が頭で合わせ同点に追いつく。勢いづきその直後も猛攻を仕掛ける福大。42分に清武がゴール前でパスを受け、決定的な場面でシュートを放つもこれはポストに阻まれる。しかし、この一瞬のプレーが試合の流れを一気に変える。44分だった。完全に引いていたDF陣の隙をついた城後が、右サイドのクロスにフリーの状態で反応しダイレクトで決められ勝ち越しを許す。痛い失点で前半を終える。
【同点ゴールを決めた岸田を祝福するイレブン】
後半、福大はFW山崎を投入し前線の層を上げるも決定的な場面が作れない。すると59分にファールで与えたFKをオズマールに合わせられアビスパに2点差をつけられる苦しい展開になる。71分にも途中出場のMFサミルの放ったシュートがポストに直撃。不運にも跳ね返ったボールをGK藤嶋は掴めず4失点目。76分に清武のパスに相手DFの裏に走り反応した岸田(翔)がこの試合ツインゴールとなる得点を決めるも、運動量で相手に圧倒され反撃はここまで。福大がアビスパにプロの実力を見せつけられ試合終了。2年連続ジャイアントキリング達成とはならなかった。
以下、福大・監督、選手コメント。
【2回戦敗退にもチームへの手ごたえ感じた乾監督】
■乾監督
ーー試合を振り返って
基本的な時間での失点に戸惑った。が、その後はプラン通りのサッカーが出来た。1点は入るだろうと思っていたし、1-1までは互角の勝負が出来た。前半の残り少ない時間帯での2失点目。使い方・詰めの甘さが勿体なくあれが勝負の分かれ目でした。アビスパのFWオズマールや城後とうちのディフェンスとの差はあった。彼らは肝心な所でゴール前に現れる。しかし、そんな相手に対しても後ろをただ固めて守るだけのサッカーではなく、清武が前線で収めて起点となる様な積極的なサッカーが出来た。2年連続してJリーグのチームを倒す離れ業は出来なかったが、今持っている力は出せた。4年生は4年間の天皇杯でJリーグのチームと5試合戦えた。この経験はプロとアマチュアの違いを味わえる点で大きい。
ーー残りのシーズンに向けて
前期は主力攻撃陣の怪我が相次ぎ苦しかった。しかし、そこに出てきた平田(3年=高川学園)のスピードには期待している。怪我から復帰したFW山崎(2年=玉野光南)ももっと高い次元のプレーが出来るのでそこを求めている。2位で後期リーグを迎えるので、何としても全勝で巻き返し、冬の大学選手権(インカレ)で優勝したい。
【後期のリーグ戦でも飛躍を目指す20岸田和人】
■岸田和人
ーー1点目を振り返って
翔平がいいクロスを上げてくれたので当てるだけだった。監督から「弟が上げたボールを決めろ」と言われていたので狙い通りの形だったし、福岡のお客さんの前でこれを見せられて満足している。みんなで取ったゴールだと思っている。ゴールを上げた人だけが評価されがちだが、みんなに感謝している。
ーー試合を振り返って
力の差は出てしまったが、通用した部分は今後につながる。次対戦する機会があれば、やっつけたい。
■岸田翔平
ーー1点目を振り返って
自分の狙ったところに完璧にボールが行ったわけではないが、和人が諦めずうまく合わせてくれたことでゴールになった。自分はあまり点がとれるポジションではないので、自分があげたクロスを和人が決めるという形は1番嬉しい得点の形。
ーー試合を振り返って
立ち上がりに失点してしまったのは良くなかったが、ひるむことなく得点出来たところは良かった。通用する部分としない部分が分かった。プロの道に進みたいので大学でしっかり練習したい。
【確かな手ごたえをつかんだ8清武】
■清武功暉
ーー試合を振り返って
負けたから全てが通用しなかったわけではない。空いたスペースにパスを出したり、前に仕掛けられたことなど通用する部分もあったのでこれから自信を持ってやりたい。2点目を取られたことが痛かった。しかし、牟田・大武の粘りが活きた試合だった。
ーーレベスタでアビスパと対戦できたことについて
アビスパの応援も福大の応援もすごく、観客も多い中での試合だったので、いいテンションでプレーできた。
ーー今後の意気込み
今日は細かいミスだったり、最後は足がつったりしたので、最後まで走れるように、基礎的に練習していきたい。

【キャプテンとして残りの学生シーズンにかける4牟田】
■牟田雄祐
ーー今日を振り返って
シュートの質とあと一歩前に踏み出す力といった部分がプロに比べて負けていたと思う。4失点したことは自分の責任だと思っている。攻撃陣はプロ相手に2点も取ってくれたのに申し訳なかった。アビスパ戦だったので、入場からワクワクしていたし、試合中も楽しかった。
ーーアビスパサポーターからのブーイングについて
レベスタでブーイングされる経験は初めてだったので新鮮だった。逆に嬉しかった。
ーー残りのシーズンに向けて
キャプテンでもあるし、ここまで来れたのも沢山の人が支えてくれたおかげなので、恩返しできるよう1日1日を大切にし、残りの大学生活を送りたい。今日学んだことを活かし、大学選手権では優勝したい。
【記事】金縄洋右
【写真】八尋政哉 石井健太郎




