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2016.10.03

【サッカーに生きる人たち】夢を追うアスリートの背中を押す人|中谷エリナ(スポーツメンタルコーチ/スポーツライター)

編集者、サッカーライター、スポーツカメラマンを目指す人のためのアカデミー

「誰かを応援できる人になりたいんです」

 柔らかな口調でこう語るのは、中谷エリナさんだ。スポーツメンタルコーチとライターという二足のわらじを履きこなす。サッカー業界に飛び込んだのは、同世代の選手たちが活躍するザックジャパンに心を動かされたのがきっかけだったという。

 4歳から社会人2年目までの約20年間、ダンスに打ち込んできた中谷さんは、自身はメンタルに左右されやすいダンサーだと感じていた。しかし、ある時、知り合いのスポーツメンタルコーチと話をすると、一気に視野が広がった。

「これまでメンタルが弱いのは性格のせいで、一生変えられないと葛藤していたんです。でも、メンタルコーチと話したことで、心の弱さは性格からくるものではないと気づかされたんですよ」

 その後、メンタルコーチのもとへ何度も通い、何冊もの関連書籍を読み込んだ。自身もアスリートたちの心を支えるようになった今、スポーツメンタルコーチとは「導く人」だと話す。

「スポーツメンタルコーチとは、選手たちのメンタル面をサポートする人のことです。答えを言って選手たちを指導や教育していくスポーツメンタルトレーナーとよく間違えられるんですが、『コーチ』という言葉の語源は『馬車』で、『馬車を導く人』という意味があるんですよ。だから、スポーツメンタルコーチは、答えを言わずに選手たちが望む結果や目的へ導く人のことを言うんです」

 こちらから質問をぶつけ、悩みのもととなっている原因を気づかせる。それもコーチングのスキルだ。自分自身と向き合うことでこそ、成長が促されるのだという。

「選手たち自身に悩みの根本などを気づかせることで、目標や夢に目を向けさせるんですよ。こちらからアドバイスはします。でも、絶対に強制はしません。あくまで選手自身に気づかせて行動させるのが私たちメンタルコーチの役割なんですよ」

 選手の目標や夢を実現させるために、スポーツメンタルコーチは時に厳しいことも言わなければならない。中谷さんは「選手たちのことを思って、グサッと刺さるようなことも言わなければならない。だから選手との信頼関係がとても大事なんです」と、真剣な表情を浮かべた。

INAC神戸の下部組織でメンタルコーチに就任

 メンタルコーチのもとへ通っていた頃から、いつかサッカーに携わりたいと考えていた。その夢をコーチに相談すると「『いつか』って、『いつ』なの?」と尋ねられ、はっとした。夢に近づくために、すぐに行動を起こした。

「まず私は、これまで学んできた心のあり方についてブログを書き始めたんです。すると、たまたまブログを見ていたINAC多摩川レオネッサの監督の目にとまったんですよ。コーチとしては未経験だったのですが、監督といろいろ話をしてメンタルコーチに就任することが決まりました」

 INAC神戸レオネッサの下部組織であり、女子中高生がプレーするINAC多摩川のメンタルコーチとして就任後、選手との必要な信頼関係を築くために、最初の3カ月間はすべての練習に参加してそれぞれとコミュニケーションを密にとった。その後、徐々に一人ひとりに対してアドバイスを送るようになっていったという。

「サッカー選手なので、やはりけがの悩みが多かったですね。けがを負った選手には、まず話を聞いてあげて、不安を取り除きます。その上で、今後どうしていきたいのかを明確にし、選手のモチベーションを上げさせる。要は、目的を描かせて、その目標から逆算して、今やるべきことへ目を向けさせるように導くことが大事なんですよ」

 悩みや目標は人それぞれだ。だが、成長するために重要な心の持ちようはさほど変わらない。中谷さんは「スポーツ選手だけでなく、みんなに共通して言える大切なことは、目標を持って自分自身と向き合い、考えて考えて、目の前の壁を乗り越えること」だと話し、こう続ける。

「『自分ではわからないけど、他人は知っている自分』や『自分も他人もまだ知っていない自分』というものを客観的に見つめることが大切です。自己洞察をしっかりと行うことで思い込みが外れたり、自分が知らなかった強みや弱みに気づき、視野が広がるんですよ。結果的に行動範囲も広がり、可能性を広げることにもつながるんですよね」

本格的なキャリアがスタートしたのは、INAC神戸の下部組織、INAC多摩川のメンタルコーチから。ブログの記事が就任のきっかけとなった(写真=本人提供)

本格的なキャリアがスタートしたのは、INAC神戸の下部組織、INAC多摩川のメンタルコーチから。ブログの記事が就任のきっかけとなった(写真=本人提供)

夢を叶えるために不可欠な3つの要素

 INAC多摩川レオネッサで、夢を追う10代の女子たちと向き合ってきた中谷さんによれば、夢を叶えるためには3つの要素が不可欠となってくる。

 1つ目は自分と向き合い続けること。その姿勢は特に逆境に直面した時に生きてくるという。

「自分が落ち込んだ時の対処法を知らないと、夢に向かって進んでいけないんです。弱さを認めることや、苦しい時に毎回思考することで己と向き合い、自分を知ることが大事なんですよ」

 2つ目には行動力を挙げる。「思い立ったが吉日」という故事があるように、思ったらすぐに実行に移すことが重要だと教えてくれた。

「ただ考えているだけじゃダメだし、夢は実現しない。とにかくチャレンジすること。行動力が大事だと思います」

 そして最後に、自分が使う言葉を選ぶことの大切さを強調する。自分自身に語りかける前向きな言葉は、心のエネルギーに変わるのだ。

「言葉はメンタルにすごく影響するんですよ。自分にどんな問いかけをしているか、どんな声をかけてあげているかが大事です。日常生活からマイナスの言葉ではなく、プラスになる言葉をかけてあげる。自分自身に対して、常に良い言葉を選んであげると良いですよ」

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Jリーガーからの書き込みで自信が深まる

 サッカーの戦術や結果を伝える人はたくさんいるし、記事も多い。しかし、選手たちのメンタル面などにフォーカスした記事は少ない。この事実に気づいた中谷さんはライター活動も始めた。スポーツメンタルコーチとして心と向き合い続けてきた経験が生きるのでは、という思いがあった。真剣にスポーツに打ち込むアスリートたちの生き様をうまく伝えられるのでは、という気持ちもあった。

「これまでジュニアからプロ選手まで、幅広い選手たちのメンタル面を見てきました。その瞬間に賭けている人たちには、本人たちも気づいていないような内面的魅力がたくさんあるんですよ。その魅力を自分の言葉や表現で伝えられないかと思ったのがきっかけです。私の強みであるメンタルの知識と経験でその部分をわかりやすく伝えられると思いました」

 浦和レッズに所属する柏木陽介の人間性に焦点を当てた記事を『サッカーキング』の関連サイトに掲載した際、うれしい反応があった。柏木本人から「自分が表現できなかったことを言葉にしてくれた気がします」と、Facebookにコメントが書き込まれたのだ。当のJリーガーから認められたことで、自信が深まった。ライターとしての夢はさらに広がっていく。

「今後も選手たちの思いや内面的魅力にフォーカスして、多くの人へ発信していきたいです。その手段の一つがライター活動ですね。努力の過程などにスポットライトを当てられる活動を行っていきたいし、メンタルに特化した記事を書いていければいいかなと思っています。やっぱり、頑張っている人を応援できる人になりたいですね」

 現在は、スポーツメンタルコーチとしてオンラインクラブの開設や個別トレーニングを行う一方、TwitterなどのSNSでもエールとなる言葉を大勢に向けて発信している。すべての活動を支えているのは、「頑張っている人を応援できる人になりたい」という慎ましやかな思いだ。

 コーチは「導く人」――。中谷さん自身はそう語ったが、むしろ「背中をそっと押す人」という呼び名がふさわしい。「必要としてくれる人がいるなら、この活動をずっと続けていきたい」と話す中谷さんは、これからも優しさに包まれた言葉で、目標に向かい奮闘する人たちの夢の実現を後押ししていく。

中谷エリナさんの関連情報は下記URLをチェック!
ブログ:http://ameblo.jp/n-erina-8
ツイッター:https://twitter.com/fc_erina_j
LINE@:http://line.me/ti/p/%40erina.nakatani

インタビュー・文=及川裕太(サッカーキング・アカデミー/現フロムワン・スポーツ・アカデミー
写真=金子拓弥(サッカーキング・アカデミー/現フロムワン・スポーツ・アカデミー
撮影協力=2F coffee

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