2013.11.25

覚悟を決めて 岡 光徳(『Get Sports』ディレクター)

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「“覚悟”を持って努力している人にはドラマがある」

 インタビューの最後に、岡光徳さんは真剣な眼差しで思いを口にした。

 岡さんは現在、テレビ朝日系列で放送されているスポーツドキュメンタリー番組『Get Sports』でサッカー企画の制作に携わっている。大学時代、『フープドリームス』というNBAを目指す少年を追ったバスケットボールのドキュメンタリー映画を見たのがこの業界を志すきっかけとなった。

「夢を追い掛けている人にはパワーがあると思うんです。成功するから良い、失敗したから悪い、ではない。夢を追い掛けている人を取材して発信することで、彼らのパワーが、見ている人たちの明日に向かう力になればいい。そういう思いがテレビ業界を目指すきっかけになりました」

 サッカーは小学生の頃に始めた。中学2年時には福島県の二本松第一中学校サッカー部で全国大会ベスト8に進んだ経歴を持つ。高校でもサッカーを続け、その後、大学へと進学すると、次第に現在の仕事への憧れを抱き始める。しかし、サッカー関係の道へ進もうという気持ちにはならなかった。

「スポーツへのこだわりは、それほどありませんでした。ジャンルは問わず、夢を追い掛けている人に興味があったんです」

 ちょうどその頃、テレビでさまざまなドキュメンタリー番組の放送が始まったこと、さらには『Get Sports』が開始したことも岡さんに大きな影響を与えた。

 大学卒業後はテレビ番組の企画・制作会社に入社する。社会人3年目には『ニュースステーション』のスポーツ担当に。その後、F1レーサー佐藤琢磨の素顔に迫ったNHKのドキュメンタリー番組『いま裸にしたい男たち』では制作アシスタントを務めた。1人の人物に密着する企画では異例の2時間という長時間番組に携わったことで、スポーツを題材にしたドキュメンタリー番組を企画したいという思いが次第に募っていく。

 そして2008年から『Get Sports』のサッカー担当に。「選手の本音や考えをダイレクトに聞けることがこの仕事のやりがいですね。視聴者から番組にメッセージを頂けるのもうれしい」と笑顔を見せる。

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川口選手の密着取材は僕の人生観を変えました。

『Get Sports』のサッカー企画は大きく2つに分けられる。一つは「プレーの検証」。もう一つは「選手やクラブのドキュメント」である。

「ドキュメントを通じて、彼らの思いを多くの人々に伝えられるのも、この仕事の醍醐味の一つです。取材の現場にいると、選手の“覚悟”を肌で感じられますから。最低でも半年から1年かけて取材を続けて、ようやく彼らの思いを引き出すことができるんです」

 そう話す言葉の端々からも岡さんの“覚悟”が見え隠れする。数多くの取材現場に立ち会い、さまざまな番組制作に携わってきたからこそ、情報を発信する側としての姿勢がぶれることはない。

 印象に残っているインタビューは「2010年南アフリカワールドカップ前の川口能活選手の取材」と振り返る。密着取材は2008年から2010年まで続いた。当時の川口はワールドカップ本大会前年の9月に全治6カ月の大ケガを負っていた。ケガは順調に回復するも、その間に守護神の座を奪われ2010年の公式戦出場はゼロ。誰もが本大会のメンバー入りを予想していなかったが、岡田武史監督は川口の経験を高く評価した。

「もちろんメンバー入りを願ってはいましたけど、あのような形で選出されるとは思わなかったですね。川口選手の密着取材は僕の人生観を変えました。サッカーができない状態の選手を取材したのは初めてでしたから。『自分のしたいプレーを意識してするのではなく、無意識のうちにできた時に練習の成果が出ている』という言葉は今でも強く印象に残っています。川口選手が時折見せるスーパーセーブは、偶然起きるものではなく、練習の積み重ねによって生まれる必然的なものなのでしょうね」

 二人の出会いは中学時代までさかのぼる。中学2年時に参加した全国大会に東海大学第一中学校3年の川口も出場していた。くしくも岡さんのポジションは同じGKで、当時の川口を「まるで次元が違った」と懐かしむ。当時は話す機会こそなかったが、20年以上たった現在、こうしてつながっていることに不思議な縁を感じている。

「現在は半年から1年の密着ばかりですが、いずれは4、5年かけたドキュメンタリー番組を作っていきたいですね。どうしても半年だとすべてを伝えることが難しくなる。4、5年かければ川口選手のような人生のドラマを伝えることができますから。“覚悟”を持って努力している人にはドラマがある。“覚悟”を持った選手に対して、自分も“覚悟”を持ってインタビューをしていきたい」

 岡さんには今後挑戦してみたいことがある。

「僕は福島県出身です。これからは被災地のスポーツ文化も紹介していきたい。昨年、JFLの福島ユナイテッドを取材した時に、福島から何かを発信できればという気持ちが高まりました。選手たちが頑張っている姿から、日本中の人々が何かを得られるはずです」

 どんなスポーツ選手にも劣らないだけの“覚悟”が、岡さんを未来へと突き動かす。

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インタビュー・文=鎌田純(サッカーキング・アカデミー
写真=瀬藤尚美(サッカーキング・アカデミー

●サッカーキング・アカデミー「編集・ライター科」の受講生がインタビューと原稿執筆を、「カメラマン科」の受講生が撮影を担当しました。
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