2012.06.06

Predator Lethal Zones PLAYER FOCUS:アンヘル・ディ・マリア

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pass zone[クロスの名手から真髄を学べ]Special INTERVIEW アンヘル・ディ・マリア(レアル・マドリー/アルゼンチン代表)
Predator Lethal Zones PLAYER FOCUS sweet spot zone : Angel DI MARIA

攻撃にも守備にもできる限り関与するよう指示されている。

 2年前にベンフィカからレアル・マドリーに加入した時点のアンヘル・ディ・マリアは、居並ぶスターの中では目立たない選手の一人だった。少なくとも“ガラクティコス”(銀河系集団)の匂いを感じさせる選手ではなかった。だが、今は違う。彼が変わったと言うよりは、彼を見る周囲の目が大きく変わったと言うべきなのかもしれない。闘争心に溢れ、メリハリの効いた彼のプレーは、人々の大きな注目を集めるようになっているのだ。

「僕はチームのために全身全霊を込めてプレーしている。その仕事ぶりをファンが認めてくれるのはすごくうれしい」。ディ・マリアはそんな言葉で、現在の充実ぶりを語ってくれた。

マドリーのプロジェクトは2年で完遂したわけじゃない

ジョゼ・モウリーニョ体制2年目のマドリーは、着実な進化の末にリーガ制覇を果たした。昨シーズンと比べてどこが強くなったのかな?

ディ・マリア 監督のサッカーをみんながより深く理解したということさ。僕も、今シーズンは自分のすべきことを100パーセント分かっているという確信を持ってプレーできた。それに、チームの団結力も増した。ロッカールームの雰囲気も最高だったよ。

でも、チャンピオンズリーグ(以下CL)では準決勝で敗退した。すべてのタイトルを獲得するために、チームに欠けているのは何だろうか?

ディ・マリア “運”だけさ。僕たちはクラシコを制してリーグ優勝に王手をかけた。そこまでは良かったんだけど、CLではホームにバイエルンを迎えて、不要な失点を喫してしまった。言い訳をするつもりはないけど、PK戦の勝ち負けなんて運だけの話だよ。

国内リーグ優勝とCLでの敗退。どちらをクローズアップすべきかな?

ディ・マリア 優勝の話をしようよ(笑)。冗談はさておき、今シーズンの僕たちには“勝者のメンタリティー”が存在した。

ディ・マリア
ディ・マリアにとって「左右を問わない」とは、両足でボールを蹴るという意味だけではない。どちらのサイドでも戦術的課題をこなし、チームの機能性を高める働きができる

君は多彩なプレーを持ち味としているけど、自分のプレースタイルはどんなものだと認識している?

ディ・マリア 僕自身はアタッカーのつもりでいる。純粋なFWではないにしても、攻撃で持ち味を発揮する選手だ。右サイドでプレーすることが多いけど、左右は問わない。右足に苦手意識はないけど、左利きだから、左サイドでプレーする時は奥深くまで入り込んで中央に折り返す。右サイドの時はカットインから左足でシュートを狙う動きが得意かな。

君は「モウリーニョの戦術的キーマン」と見なされているけど、その自覚はある?

ディ・マリア 戦術的キーマンと言うのはちょっと大げさだね(笑)。でも、監督の要求に100パーセント応えようと努力していると、自信を持って言えるよ。監督からいつも言われるのは、「ボールを持っている時でも持っていない時でも常に思い切ってプレーしろ」ということ。つまり、攻撃にも守備にもできる限り関与するようにってことだ。当然、ピッチ上を縦横無尽に走り続けることになるけど、その要求に応えているから監督の信頼を得られているんだと思う。

モウリーニョとの関係はどんなもの?

ディ・マリア いつも僕が落ち着いてプレーできるように気を配ってくれている。彼のおかげで、ピッチ上で冷静でいられると思っているよ。出会いからずっと、監督との関係は良好だ。今後もそうであることを願うよ。

マドリーのようなビッグクラブでは、どんな選手も地位やポジションが保証されない。君は信頼を勝ち取ったけど、十分な実力を持ちながらベンチ生活を余儀なくされている選手もいるよね。この状況をどう見ている?

ディ・マリア 実力なのか運なのか、僕には何とも言えない。いずれにしても、実力があると見られている選手にとって、大事な試合でプレーできないことはつらいだろう。マドリーのようなビッグクラブにいるのは、そのリスクを常に背負っていることを意味する。僕も全試合スタメン出場というわけにはいかない。外されたらショックだよ。

モウリーニョがこの夏に退団するといううわさについては?

ディ・マリア あり得ないと思うよ。僕たちにはまだたくさんの課題がある。彼のプロジェクトが2年で完遂したとは思えない。

でも、彼は一つのクラブに長くとどまらないタイプだ。もし彼がマドリーを去ることになり、一緒に来るよう依頼されたら、君はどうする?

ディ・マリア 僕はあくまでマドリーの選手だ。移籍に関することは、自分で勝手に決められるものじゃない。だけど、僕はこのチームに強い愛着を感じている。確かにモウリーニョは恩人で、彼が別のクラブと契約して、「来ないか?」と言ってくれたら考慮せざるを得ない。でも、今の時点で考えることじゃないよ。

成功を収めたいなら誰よりも練習するしかない

君はこの2年間でかなりの経験を積んだ。自分の成長を実感する部分はどこだろう?

ディ・マリア 最大の変化はポジショニングに対する意識だね。監督は僕に前線での守備を求める。ボールを奪った際に敵陣のスペースを突く動きもね。これは、ただ走り回っていればいいわけじゃない。ピッチ全体の状況を把握して、適切なポジションを取ることが重要なんだ。その点ではモウリーニョ監督のアドバイスには助けられているよ。

君は左右どちらの足でも正確なボールを蹴ることができるよね。そのことで得ている最大の恩恵は何だろう?

ディ・マリア 最大のメリットは、サイドを問わないことで出場機会が増えることだ。監督の立場になってみれば、複数のポジションをこなせる選手は便利だろうからね。僕は左利きだけど、右足でも強く正確なキックができる。そのおかげで左右どちらでもプレーできるんだ。

どんな練習をすれば、その正確なキックを会得できるんだろう?

ディ・マリア みんな同じだと思うけど、最初はストリートサッカーだった。あらゆるものがボール代わりとなった。シューズにしたって、普通のゴム靴だった。ちゃんとしたシューズやボールでなければ学べないこともあるけど、それを手に入れたのはずっと先のこと。そんな中で朝から晩まで友達とボールを蹴っていた。誰もいなければ壁を相手に何百回とボールを蹴ったよ。その頃はそれが練習だなんて意識はなかったけどね。だた好きだからやっていただけさ。

今の君はちゃんとしたスパイクやボールを使える立場にある。用具へのこだわりを聞かせてもらえるかな。

ディ・マリア スパイクの技術革新にはいつも驚かされるよ。アディダスの新しいスパイクを履くたびに、自分のプレーが進化するような感じさえしている。中でも最も大きな変化はスパイクの重量だろうね。昔のスパイクは重かった。特に雨でぬかるんだピッチだと、水と泥を吸って大変なことになったものさ。あの頃を思い出すと、今のスパイクにはただただ驚くしかないよ。言うまでもなく、僕たち選手にとってはありがたいことだ。快適なプレー環境を提供してくれる人たちには本当に感謝しているよ。

ユニフォームやスパイクを着用する時のゲン担ぎはするタイプ?

ディ・マリア スパイクは常に右足から履くようにしている。でも、ゲン担ぎじゃなくて、ただのクセさ(笑)。ゲンを担ぐことより、試合前のお祈りのほうが重要だと思っているよ。

スキル解説 ディ・マリアの質の高いクロス

スピンの効いたキックでピンポイントクロスを実現
インタビューで本人が述べている通り、ディ・マリアの持ち味はスピードであり、サイドを一直線に駆け上がってのクロスで決定機を作り出す。国内リーグとチャンピオンズリーグでのアシスト数は16でチーム2位。トップスピードで走る勢いを利用し、あくまで自然なフォームで蹴り出すボールは、ニアの密集地帯を飛び越えてターゲットに落ちる。これは巧みなインフロントの使い方によるものだ。その際、「プレデターリーサル ゾーン」のスイートスポットゾーンがボールを確実に捉えてコンタクトの時間を増大し、よりスピンの効いたクロスが可能になる。また、両足を使えることによるプレーの選択肢の多さも、ディ・マリアの個性を際立たせる要素となっている。

[スピン]のスキルアップ・アドバイス

point 1 軸足を正しい位置
正確なキックを蹴るには軸足の位置が重要だ。助走の段階でボールをしっかり見て、歩幅や角度を合わせながらボールにアプローチしよう。軸足はボールの真横か、やや後ろに踏み込むのがベスト。
point 2 右回転のスピンを掛ける
ボールが左方向に曲がっていくカーブを掛けるには、右足のインフロントを使ってボールをこすり上げるようにキックする。ボールに対してオープンな角度から入ると蹴りやすい。自然なフォロースルーを忘れずに。
point 3 左回転のスピンを掛ける
ボールが右方向に曲がっていくボールを蹴るには、右足のアウトフロントを使う。こすり上げるのではなく、ボールを押し出すようにしっかりとインパクトしよう。狙う方向に対して内側にフォロースルーをするといい。

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