2012.07.20

【短期集中連載】スキマスイッチ常田真太郎の欧州蹴球周遊記(2回/全5回)

サッカーフリークとして知られるスキマスイッチの常田真太郎さんが、過密スケジュールの間を 縫って今年5月にヨーロッパ・サッカー観戦を敢行。本人執筆による『欧州周遊記』を全5回で公開。2回目の今回は、チャンピオンズリーグ決勝の舞台ドイツ・ミュンヘンへの到着から試合前日までのストーリーをお届けします。

 パリはシャルル・ド・ゴール空港でのトランジットを含む延べ14時間半のフライトも、直前に「俺も持ってるし対戦も出来るから」とカタパッドから教えてもらったPSVitaのテニスゲームのおかげでまったく苦にならず、我ながらゲーマー体質で良かったと心から思ったフライトだった(ちなみにサッカーゲームはお気に入りのものがまだ出てなかった。残念)。巨大なシャルル・ド・ゴール空港内で少し迷ったもののパリで入国審査も無事済ませたからか、同じユーロ圏のミュンヘン空港で空港を出る際にパスポートチェックがなかったのがかなりびっくりしたりもしたが、そんなことは到着してしまえばこの際ささいなことなのだ。そう、なんといってもついに2011-12シーズンのチャンピオンズリーグ決勝の地、念願のドイツ・ミュンヘンに降り立ったのである。到着時間は現地の昼前の11時くらいだった。6年ぶりのドイツの空気はやはり変わらず気持ちよくて、すれ違う人々も目があうと笑いかけてくれたり、彼らが連れている犬たちでさえ歓迎してくれてるような気がした。・・・たぶん。

 シャルル・ド・ゴール空港で軽く朝食を摂ったものの、まずはやはり食事だということで、とりあえずホテルのあるミュンヘン中央駅=ハウプトバーンホフに向かうことにした。ドイツでは鉄道文化がかなり発達している印象で、DBバーン、Sバーン、Uバーン、そして路面電車のトラムという4種類の鉄道でほとんどの街へ行けるつくりになっている。しかもかゆいところに手が届くような、非常に考えられた路線図のようで実に快適に移動が出来るのだ。空港からハウプトバーンホフにはSバーンでおよそ30分ほど。空港と中心部を結ぶ大動脈のはずなのに、行きはおろか空港への帰りも普通に座れたのはちょっとびっくりした。人口の具合が交通機関にとってちょうどいいバランスなのかもしれない。そんなこんなでホンモノの「世界の車窓」から覗く、欧風な町並みと田園風景の連続したコントラストに心を躍らせながら(もちろん時折あのチェロのフレーズを口ずさんだりしながら)、ハウプトバーンホフに到着した。そして二人で駅の地下街で食事が出来る場所を探す。後ほど出会うことになる通称アオキさん(こちらで勝手にアオキくんと名づけました(笑)に聞いたのだが、ミュンヘンの街は実は今は連休中でかなり賑わっており、6年前に来たフランクフルトとはまた違った、いわゆる都市の賑わいを見せていて食事の出来るお店もとてもたくさん見つかった。しかしその中で結局目に留まったのはソーセージ屋でもイタリア料理屋でもトルコ料理屋でなく、インプリンティングで完全に自分の地や肉と化して浸透しているあのM字で有名なファストフードのお店だった。とはいえさすがにここはドイツだ。ひょっとしたら日本とはまったく違うメニュー展開をしているかもしれない。そう思い、とりあえず外から店内の様子をうかがってみることにしたのだが、やはりというかなんとうか、これがまた思ったとおり7割くらいの割合で日本とは全然違うメニューなのだ。せっかくドイツに来たのだからこれは行くしかない!そうだ、ハンバーグは確かドイツで生まれたはずなんだ!と嘘か思いつきかわからない”何か”に気持ちを後押しさせるように仕向け、颯爽と店内へ入る。迷った挙句、僕はビッグベーコンハンバーガーなるものをオーダーし、日本と同じようにカウンターで受け取って席に着いた。デカイ。何がって、取るもの、いや、摂るもの全てが半端なくデカイのだ。ハンバーガーは両手でやっと持てるほどで、日本とは違ってパティに挟まれているトマトのスライスも7mmほどのぶ暑さで、しかも2枚も入っている。さらにパティはドイツパンに倣ったからかなのか少し硬いものになっており、型崩れがしにくいつくりになっていた。ポテトもジャガイモの味が素直に反映されてる印象で、何よりコーラがMサイズで700mlくらいあったのには驚いた。氷もどうやらデフォルトで入っていないらしい。昼は軽めにして2時間くらいしたら屋台などで何かドイツらしいものを食べようか、という思惑はドイツの圧倒的なスケールによって脆くも崩れ去った。こんなサイズだからあんなフィジカルが強い人種になるのかと関心してしまうほどだった。僕も日本では身体は大きい方の部類に入るが、こちらでは子供のような印象なのだろう。そんなこんなで駅前のホテルに到着した。

 ホテルに到着してやることと言えばいろいろあるだろうが、僕らにはいの一番にやらなくてはならないことがある。チケットが届いてるかどうかの確認だ。とりあえずフロントでは何も言われなかったので、ひょっとしたら部屋にあるのかと思いドアを開けて部屋の中を見渡した。・・・ない。何もないのだ。さすがに不安になったのでフロントに行き、無理やりカタコトの英語で手紙か封筒が届いていないかを聞いてみた。…結果、通じなかった…。ので、僕よりは英語が出来るカタパッドに頼んで同じことを伝えてもらうと、やはり届いていないらしい。そういうものがあれば部屋に届けますと言われたので、そこはフロントを信じてとりあえず部屋に戻ることにした。

 ところでいきなりだがカタパッドは情報収集のスペシャリストでもある。今回の旅でも例えば円からユーロに替えるのにはどこが一番レートがいいだの、ホテルには何が付いているだの、とにかく事前に様々な情報を入れておいたみたいで、この旅行期間中、本当にお世話になった。そんなカタパッドが仕入れた情報によると、どうやらCLが開催される都市では前日からCLフェスティバルなるものを開催してるらしく、それがホテルからそんなに遠くない場所らしい。しかもなんとなんと、そのフェスティバルのメインイベントとして催されている企画が、あのビッグイヤーに触れられるというものらしい。おそらく日本人でビッグイヤーに触れたことがある人はそういないであろう。そういえば2008年にクラブワールドカップのテーマソングを担当した時にクラブワールドカップのトロフィを間近に見る機会があったが、もちろん触れさせてもらえなかった。W杯のトロフィももちろんそうだったはず。それなのにビッグイヤーは違うのだ。パオロ・マルディーニだって銀色の紙吹雪の中でかかげていた。メッシもシャビもそうだ。それがなんと自分の手で触れられる。そう思うといてもたってもいられなくなり、Uバーンに飛び乗った。

 フェスティバルの場所はミュンヘン中央駅からU3で4駅ほど北上し、そこからU2に乗り換えて2駅目になるオリンピック公園=オリンピアゼントラムというところ。そこらへん一帯がとにかく大きな公園で、先日の女子CL決勝が行われていたミュンヘン・オリンピアシュタディオンもそこにあり、なぜかBMWの博物館なるものもあったりする。到着するとパラパラと人がいたのだが、フェスティバルの会場に近づくにつれバイエルンのユニフォームを着ている人の割合が増えてきた。そういう光景を見るとやはり盛り上がる。そして簡易的なゲートをくぐると(料金は無料)、高さ3mほどもある巨大なCL使用球のモニュメントが視界に飛び込んできた。会場内にはスタンプラリーとミニゲーム(小さな的にボールを当てるゲームや、ゲートボールとサッカーを組み合わせたようなもの、コンピューターで反応するGKがゴールを実際に守るPKゲームなど)を組み合わせたような企画や、アマチュアバンドらしき人たちがミニライブを延々やっているステージ、オフィシャルショップ、湖上に作ったフットサルコートなどがあり、さながらそれはスポンサー企業が出しているパビリオンのようで、なんだか万博を感じさせた。

 ある程度回って雰囲気を楽しんだあと、いよいよ目玉のパビリオン(?)、ビッグイヤーの展示へと足を運んだ。なんてったって優勝トロフィーだ。4年に一回のW杯や正真正銘の世界一を決めるクラブワールドカップには及ばないものの、欧州一を決める大会のトロフィーだ。きっと一番大きなパビリオンで厳重な警戒のもとに展示してあるに違いない。長蛇の列も覚悟の上だ。そんな思いを胸に膨らませながら僕たちはビッグイヤーパビリオンを探した。10分ほど探しただろうか、会場をだいたい一周したあたりで二人とも顔を見合わせた。そう、何か様子がおかしいのだ。どこを探してもビッグイヤーパビリオンが見つからない。というよりそんなに大きな建物すらない。これはどうしたことかと、会場の隅に申し訳なさそう程度に貼ってある会場全図を見た。おお、そういうことか!どうやら先ほどチラリと見たフットサルコートの隣あたりに展示してあるらしい。よくよく考えればコートのある湖上、つまり湖はすり鉢上になっている広場の一番下にあり、そのあたりは上から見ただけでそこまで細かくは確認していないはず。なるほどそんな場所にあったのか。そんなこんなで僕らははやる気持ちを抑えながら湖の方へ急いだ。そしてフットサルコートが見える場所でその隣を見た時に思わず声が漏れた。

「え?マジで!?」

 そう、なんとあの崇高なビッグイヤーの展示場所は会場で一番大きいパビリオンでも厳重な警戒のもとでもなく、普通に屋外、しかもなんとなくのビニールの屋根が張ってあるだけの雨ざらしの状態でポツンと置いてあるのだ。一応、係の人が2人とガードマンらしき人が2人いるがみんなそれぞれ談笑していたりで、長蛇の列もその円形の展示場所をグルリと1周しているだけであった。ってかビッグイヤーってそんなものなの?そんな気さえしてくる。しかしやはりビッグイヤーはビッグイヤーだ。先日のスキマスイッチツアーファイナル沖縄公演の際に行ったちゅら海水族館のジンベイザメのエサやりタイムより見物客が少なくたって、僕たちにとって崇高なものには違いはない。そう言い聞かせるように僕らはその列に並んだ。しかしいざ並んでみると1周しか列がないとはいえ、そこに並んでいる、というより少なくともこのフェスティバルに来ている人たちは皆相当なサッカーフリークのはずだ。しかもすぐそこにビッグイヤーがあるなら感動しないわけがない。よって一組一組のお触りタイムの長いこと長いこと。写真だってOKなのだからとにかくすごい待った。

 そして待つこと1時間半、僕らの前に並んでいるカップルの熱烈なキスや抱擁にもいい加減飽きた頃(キスの応酬→ささいなことから口ゲンカ→彼女帰ろうとする→彼氏引き止める→説得→再びキスの応酬という茶番を終始見守っていた)、ついに僕らの出番が回ってきた。とりあえず一人一人写真を撮り、みんながやっていたのでいいと思い取っ手の部分にキスをしたり、持ち上げようとして怒られたり、パオロ(・マルディーニ)の真似をして掲げるふりをしたり、とにかく至福の時間を過ごさせてもらった。中でも実際に触らなければ分からない、ビッグイヤーの実質的な軽さと、裏にある優勝チームの刻印の想いの重さを感じることが出来たのは本当に幸せだった。これだけでもドイツに来た甲斐があるというものだ。そうして大満足のCLフェスティバルを後にして、ホテルに戻ってきた。

 ホテルに到着してやることと言えばいろいろあるだろうが、僕らにはいの一番にやらなくてはならないことがある。そう、チケットが届いてるかどうかの確認だ。再びフロントで確認をするが、返ってくる返事は同じだった。ここまでくるとそろそろ覚悟が必要になってくるもので、やっぱりスタジアム前でプリーズチケット!と書いたダンボールを持ってウロウロとするのか、オークションを使うのか、また新たなコネクションを探すのか、とにかくいろんなことを考えた。でも考えてもどうしようもないものはどうしようもないのだ。この日の夜は岩本さん(岩本義弘/サッカーキング編集人)に誘われてスカパー!の生中継チームと食事会をすることになっており、ひょっとしたらそこで何かしらの情報が得られるかもしれないとも思い、とりあえず連絡のあった日本料亭まで歩いていくことにした。

 食事会の模様はお酒の席ということもありさすがに詳しくここに書くのはナンセンスなので割愛させていただくが、CL決勝のスカパー解説・名波さん(SWERVESのエキシビジョンマッチに去年参加して頂いたんです)とサッカー談義に華を咲かせて、最近の日本代表の戦術の生解説や有望な若手選手の話を聞いたり、みんなで決勝の優勝チームやスコアを予想したりしてとても贅沢な時間を過ごさせてもらった。しかし肝心のチケットの情報はやはりここでも得られることはなく、途中にドイツ在住の日本人ライターさんなども参加して、そこでNさんやTさんのことをやんわりと聞いてみたりしたが、さすがにもう明日の話ということで手立てがなく、とりあえずTさんとは直接つながっているようなのでその方に連絡をとっていただき、何か進展があればこちらに連絡をもらうことにした。ちなみに帰り際に名波さんが「カタパッド、またね!!」と言ったことにカタパッドはいたく感動したらしく、このあだ名にして本当によかったと満面の笑みでもらしていたのが今でも忘れられない。

 そしてホテルに戻ったのだが、僕らにはいの一番にやらなくてはならないことがある・・・のだが、もう今日はフロントに聞くのは止めにして、最後のあがきとして日本にいるNさんに電話とメールをして寝ることにした。昔から言うじゃないか、果報は寝てまて、と。

【短期集中連載】スキマスイッチ常田真太郎の欧州蹴球周遊記(1回/全5回)

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