2016.10.17

最後尾から響く主将の「声」、明治大を2冠達成に導いたGK服部一輝「このチームはまだまだ強くなれる」

チームの精神的支柱であり守護神の服部 [写真]=鈴木拓也(明大スポーツ)
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文=鈴木拓也(明大スポーツ)

 JR東日本カップ2016第90回関東大学リーグ戦第8節から破竹の11連勝。第18節で明治大学は慶應義塾大学を2-1で下し、現行リーグ体制になってから史上最速となる優勝を決めた。歓喜の中心にいた服部一輝は「3冠を掲げているので、2冠目を取れてまずはほっとしています」と胸をなでおろした。

 勝てばこの日での優勝が決まる慶應大戦は15分にセットプレーの混戦から先制点を許す。前半唯一の相手のシュートに無情にもゴールネットを揺らされた。

「全体のミーティングでもそうでしたけど、選手間のミーティングの中でも僕たちは『優勝』という言葉は口にしませんでした。それでも気負いがあったからあの失点につながったのかなと僕は捉えています」

 目に見えないプレッシャーが前半立ち上がりは重くのしかかった。イージーなファウルやミスが目立ち、流れがつかみ切れない中での失点だったが、ここから今年の明治大の強さが出た。

「逆転できる自信があったので、ピッチの中でも外でも慌てる選手はいませんでした」

 徐々に自分たちのサッカーを取り戻すと、前半のうちに2ゴールを挙げて逆転に成功した。

 後半、一矢を報いたい慶應大も猛攻を仕掛けるが、この後お互いのゴールネットが揺れることはなかった。ディフェンスラインの裏へのロングボールも持ち前の守備範囲の広さでしっかりとケア。相手に抜け出されても、絶妙なタイミングの飛び出しでシュートコースを狭め、ミスを誘発した。そして、試合終了のホイッスルが鳴り響くと、服部は最後尾で両腕を大きく突き上げガッツポーズ。創部初の優勝を飾った8月の総理大臣杯から約2カ月。6年ぶり4度目のリーグ制覇で2冠を手に入れた。

 それでも慢心はない、服部はすでにその先を見据えた。

「前半のセットプレーから失点してしまったところは、優勝が目に見えていたこともあって、難しかったのかなと思っています。でもそこから前半のうちに逆転できたことは、日々の練習でやってきた積み重ねが出たと思う。今年は逆転勝利が多いんですけど、先制点を取られてしまうことは僕たち守備陣としてはよろしくないことなので、先制点を与えないように残りの4試合しっかりとやっていって、インカレへとつなげていきたい」

「いろいろある」と前置きして、栗田大輔監督はリーグ優勝の要因の一つに服部の存在を挙げる。絶対的支柱である背番号1は最後尾からチームを司る。90分ピッチの中でこだまし続ける服部の声。それは後ろからピッチ全体を見渡し守備陣形を整える、いわゆる「GKの声」だけにとどまらない。自身もストロングポイントに挙げるコーチング力において、服部の真骨頂は「キャプテンの声」にある。チーム立ち上げの2月から服部は4年生とともに常にポジティブなチームづくりを目指した。

「悪い雰囲気でやっていてもチームは良くなっていかないので、褒めるところは褒めて、厳しくするところは厳しくします。その上で常に前向きなチームをつくっていきたいです」

 ピッチの中でもその姿勢は変わらない。チームが劣勢にあっても「大丈夫だから!」。その一声で落ち着きをもたらす。名前を呼んで「ナイス!」。その一声で選手の士気を上げる。一転、気持ちの入っていないプレーには厳しく指摘する。絶大な信頼を得る主将の「声」はピッチの中で圧倒的な存在感を誇る。

 快進撃を続けるチームの中で、もどかしさも味わった。故障の影響で後期初戦となる第12節から5試合を欠場。服部がスタンドでの応援やサポートでチームを支える中、2年生GK長沢祐弥が5試合で2失点の好パフォーマンスを披露し、後期の好スタートの中で重要な役割を果たした。服部はその後の第17節日本体育大学戦で先発復帰。1失点こそ許したがチームは2-1で勝ち切り連勝をキープした。いつも通りに熱く冷静に見えた守護神だったが、試合後はほっとした表情を浮かべた。

「チームが非常にいい状態できている中でGKを代えるのはチャレンジというか、リスクがあったと思うんですけど、そこで使ってもらったので自分のプレーどうこうよりもチームを勝たせるために試合に入りました。主将という立場で故障でゲームに出られないもどかしさはもちろんありましたけど、チームのために尽くしてきた自信もありました。自分が出ることでチームを勝たせられる選手になりたいと常に思っていますし、連勝の記録より、チームの流れを切らなくて少しほっとしました」

 ピッチから離れたからこその発見もあった。ベンチやスタンド、いつもとは異なる視点からチームを見て、「難しいゲームになってもピッチの中で話してうまくゲームを運べる、すごくいいチームになってきた」と手応えを再確認した。自らの理想とするチームに近づきつつあるが、それでもまだ突き詰めねばならぬ部分もある。

「来年に向けて僕らが後輩に何を伝えられるか」

 後輩、そして未来の明治大サッカー部へ何を残すべきかを常に考える。チームを大事にする服部らしい一言だった。

 シーズン当初から掲げ続ける3冠達成へ、残すは12月のインカレの頂点奪取のみ。「(リーグ)優勝したという実感はまだないです。僕たちの目指しているのは後期全勝優勝であり、3冠の達成ですから。ここは通過点。僕たちはまだまだ強くなれます」ときっぱり。現状に決して満足しない男は、最大の目標達成のために、目の前の一戦一戦を全力で戦い続ける。

GK服部一輝(はっとり・かずき)
▼生年月日/1995年3月16日 ▼身長・体重/182センチ・72キロ 
札幌大谷高出身。高いセービング能力とコーチングでゴールマウスを守る明治大の守護神。

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