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全日本大学サッカー連盟広報委員のセルジオ越後氏、「大学サッカーは卒業したらもうできない。そこにかける気持ちを持つべき」

2015.12.18

(協力 一般財団法人全日本大学サッカー連盟)
取材協力=株式会社フロムワン、写真=小林浩一

 アパマンショップPresents平成27年度第64回全日本大学サッカー選手権大会(通称:インカレ)が12月8日より開催中。大会は19日の決勝を残すのみとなっています。最終回となる今回は、日本サッカーを辛口で斬ってきた、全日本大学サッカー連盟広報委員でもあるセルジオ越後氏のインタビューをお伝えします。

プロは『借金』をしている状態からスタートする

――セルジオさんはアイスホッケー・日光アイスバックスでシニア・ディレクターとして選手にプロ意識を徹底させ、考え方を変えさせました。大学サッカーにおけるもプロ意識の育成に関しても、助言をお願いします。

「良いアマチュアは良いプロにならない。けれど、良いアマチュアじゃなければいい試合にならない。ということです。良いアマチュアっていうのは、お金をもらう前に『何をしなくてはいけないか』ということを考えている人のこと。大学生はどこに所属しているかを考えると、『お父さんお母さん会社』ですよ。両親のおかげで大学まで進学できたわけです。社会問題にもなっているけれど、ご家庭によっては子どもに能力があっても経済的な問題から大学に行かせられないという親も増えてきている。そういった状況の中、中途半端なアマチュアになってしまえば、中途半端なプロにしかなれない。そう考えると、大学サッカーにおける選手が、最初にプロ意識を見せなければならないのは『親』です。社会人になるまで、家賃・服装・食糧まで与えてもらったものを親に返すとしたら、ちゃんと努力をするとか、勉強をするということでしか返せないよね」

――それが、セルジオさんの考えられる「プロ意識」のひとつということでしょうか。

「そう。プロというのは、ふつう『借金』をしている状態からスタートします。勤め先から一年間、仕事をするからお金を貸してもらっているという形。それをきちんと返したら、また来年も貸してくれる。会社に貢献すれば、その分多く借金をさせてもらえる。たぶんプロ選手はそういう自覚を持っていないと思うけれど、スポーツだって同じ。プロ選手はクラブから借金をしている。プロは道具から遠征費用まで、かなりの金額を使っているにも関わらず、返さなくていいという考えを持っているかもしれないが、そうじゃない。プロになってもらえる、手取りのお給料だけを目当てにしている人っていうのは、たいてい成長しない。クラブに貢献すれば次の年は年俸が増えるし、貢献しなければ年俸は減る。プロを目指す人は借金することはどれだけ大変かということをわかっていないといけない。それは一般企業の社員も同じ。ただ漠然とお金をもらっているだけではだめ。戦力外になってからそのクラブの悪口を言っているようでは遅い。試合に出ないで、はたしてどんな形でクラブの役に立つことをやっていますか? という話です。例えば、カズ(三浦知良選手・横浜FC)は試合ではその借金を返していない。でも存在感と広告塔としてチームに返している。試合に出ればそれが利息となる。それも、ここまでの積み重ねがなければそれだけのものは返せない。知名度もない、試合にも出ない人は借金をしているだけとなってしまう。貢献というのはいろいろな角度で見なければならないもの」

――では、「良いアマチュア」、そして大学サッカーの魅力とは?

「なんのためにスポーツをするのかを考えると、人脈、仲間を増やして成長していくということがあげられます。大学サッカーのよさは、キャンパスで……みんなで何かをするということ。部屋で勉強するだけでなく共同生活する、一緒に何かの行事をやる。そこに学校の意味がある」

――それでは、大学サッカーをめざして、現在高校サッカーを頑張っている選手たちにメッセージをお願いします。

「もし大学のサッカー部に入りたいのであれば、まずはその大学の試合を観に行くべきだね。そうすれば「すごいな、あの選手。自分もあんな選手になりたい」という気持ちもわいてくるだろう。多分Jリーガーになりたい人は、入りたいクラブの試合を観に行っている。スポーツの目標は何か、ということをよく考えるべき。Jリーグに行きたいなら高校を卒業してからすぐにJリーグのクラブに行ってもいいと思うし、進学したい人は大学の大会をまず見に行くべきだと思うよ」

――大学サッカーで現在頑張っている選手たちへメッセージをお願いします。

「サッカーというのは大学のブランドを高める点で恵まれているスポーツだと思う。スポーツをやっていない学生より、自分が大学に大きなお返しができるチャンスが多い。もし社会人になってサッカーをやめたとしても、プロになったとしてもその意識を持つべきだよ。普通はお金を払ってでも大学の代表として試合に出たいと思うものだよね。それが実力で試合に出られるのだから、試合に出られたという喜びを感じて生きるべきだよ。

僕は以前、アイスバックスの選手に『こんなすばらしい試合、お金を払ってでも出たい。だから試合に出られる選手は試合に出られる喜びを感じてプレーしなさい』と伝えたら2連敗から3連勝したことがある。だから、自分が出られることがどれだけすごいのかということをしっかりかみしめないと。そう考えなければ損だよね」

――大学を代表する選手としてのプライドを持つべきだと。

「Jリーガーや社会人になれば、長年プレーができるかもしれない。でも大学サッカーは、どれだけ上手だろうが下手だろうが、4年間で卒業したらもうできない。そこがJリーガーとは価値観が違うところ。その部分にかける気持ちを持つべき。出られない人のためじゃない、自分の歴史を作るためにやるんだ。まずは自分の仲間に勝って、それから相手を倒すことができる。だから上手でも下手でもその姿勢、気持ちが、見ている人にどう伝わるかを考えるべきだね」

――最後に、大学サッカーの今年度最後の大会でもあるインカレについても、一言お願いいたします。

「インカレに関していえば、選手たちが小学校、中学校、高校、大学と積み重ねてきたサッカーの集大成だからこそ、中途半端で終わらせては何の意味もなくなってしまうと思う。決勝はテレビ中継で映像として永久に残るのだからその環境を無駄にしないで責任をもって頑張ってほしいですね」

セルジオ越後(せるじお えちご)
1945年7月28日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身の日系ブラジル人二世。コリンチャンスでプレー後、1972年に来日。日本で3シーズンプレーして引退。現在はサッカー評論家・指導者。HC栃木日光アイスバックスシニアディレクター。JAFA日本アンプティサッカー協会スーパーバイザー。また、全日本大学サッカー連盟広報委員としても活動。

【FINAL】
12月19日(土)
12:05 @浦和駒場スタジアム
阪南大学 vs 関西学院大学
BS朝日にて生中継も実施。当日には試合以外にもJクラブ内定者サイン会やプレゼント抽選会など様々な企画も実施予定。
是非、大学日本一決定の瞬間をご覧ください!

なお、全日本大学サッカー選手権大会の詳細は下記にて発信中!
全日本大学サッカー連盟公式HP:http://jufa.jp/
全日本大学サッカー連盟公式Twitter:@JUFA_soccer
全日本大学サッカー連盟公式Facebook:全日本大学サッカー連盟

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