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「自分たちは弱い。だからやれることをやった」早稲田大が最後まで貫いた“守備の美学”

文=安田勇斗、写真=平柳麻衣

 JR東日本カップ2015第89回関東大学リーグ最終節の法政大学戦で、早稲田大学はリーグチャンピオンとしての強さを見せられなかった。古賀聡監督は「非常に厳しい試合だった。前半は相手に好きなようにやられた」と語り、キャプテンのDF金澤拓真も「最初の方はボールを奪いたくても奪えなかった」と苦笑いで振り返った。選手たちから「今までで最悪の前半」という声もあがるほど、確かに法政大に押しこまれていた。

 ただし、客観的に見ると“早稲田らしい”前半でもあった。試合開始からしばらくの間は守備に追われた。しかしそこを乗りきると、次第に法政大が焦れてきて、前掛かりになって点を奪いにきた。相手陣内までは持ちこめるのだから、あとはどうやって点を取るかだけ。多少強引にでも攻めたい気持ちは理解できる。

 しかし、そこで早稲田大の術中にハマった。当人たちはそこまで計算ずくではなかったと言うが、今シーズンの早稲田大の戦いぶりを見ると、そう表現していいだろう。実際、金澤は「ブレずに戦えば点を取れると思っていた」とその状況を思い起こし、チーム全体としても“早稲田らしい”落ち着きが見て取れた。

 法政大の隙を突く攻撃は見事だった。前半がうそのように後半に入ると一転、早稲田大は相手の攻撃をいなしながらテンポの良いボール運びで次々と決定機を演出。焦る相手を手玉に取って、53分、57分に立て続けにFW山内寛史がゴールを挙げ、試合の大勢は決した。

 リーグ戦21試合を戦って最少の18失点。1試合平均1点以下に抑えている早稲田大守備陣にとって2点差はセーフティすぎるリードだった。「ディフェンスラインは関東で一番。絶対的な信頼を置いている。2点取られることはないと思っていた」との山内の言葉どおり、守備陣がきっちりとリードを守りきった。

 点差があってもそこに慢心はなかった。なぜなら彼らには余裕がないからだ。センターバックコンビはともに170センチ台前半。「いつもギリギリで勝ってきた」(DF奥山政幸)だけにセットプレーへの警戒心はどこよりも強く、偶発的な“一発”をどこよりも恐れている。だからこそ早稲田大守備陣は高い集中力を保つことができる。結果的に1点差まで詰め寄られたものの、最後までピッチ上の選手から焦りは感じられなかった。

「守備に徹する」は「勝負に徹する」と置き換えられる。早稲田大は勝敗にこだわるからこそ、無失点にこだわる。プロではない学生サッカーにおいて、このスタイルには賛否あるだろう。それでも、金澤は「うまくないし、キレイじゃないけど、泥臭く体を張って少ないチャンスをものにする。早稲田の、自分たちのサッカーを体現できた」と胸を張る。

 堅守を支えるのは4バックだけではない。古賀監督は早稲田大のサッカーについてこう語る。「自分たちは弱い。だから勝つために泥臭く献身的に、やれることをやろうと、選手たちに意識づけた」。その具体策として「サイドハーフやFWも積極的にボールを奪いにいく。それが大きい」。前線に張るFW宮本拓弥も「守備陣はうちの強み」としつつも、「ディフェンスは自分たちの仕事でもある」と話す。突きつめて言えば全員守備によって栄冠を手繰り寄せたのだ。

 最終的には、本気で勝利を追い求めた早稲田大がリーグ戦を最後まで盛りあげ、そして頂点に立った。“守備の美学”と言うと聞こえはいいが、実際はただひたすらに必死に勝利を追求した結果が、このスタイルの根底にある。

「守備力の高さは早稲田の伝統。自分がこのチームに入る前からその流れがあった。周りから見るとつまらないサッカーかもしれない。でも、理想を追い求めるか、結果を追い求めるかの2択で、自分たちは結果を選んだ」(金澤)。その姿勢を貫きリーグ最少失点でタイトルをつかんだ選手たちは清々しい表情をしていた。19年ぶりのリーグ優勝を成し遂げるために、最後までゴールと信念を“守りぬいた”彼らに心からの賛辞を贈りたい。

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