2015.10.29

流経大の中野監督が望むサッカー文化の変革「超満員の観客の中で大学リーグを開催できたら、選手はもっと伸びる」

サッカー総合情報サイト

インタビュー・写真=平柳麻衣

 流通経済大学を率いて数々の功績を残し、「誇れるもの」はすべて手にしてきた。大学サッカー界の重鎮、中野雄二監督が思い描く大学サッカーの未来とは。

「日本一愛される集団」を目指して

――流経大はチームの団結力が強いという印象があります。チーム内では流通経済大学付属柏高校出身の選手たちが中心となっているのですか?
中野 流経大柏の選手も当然ですし、組織全体として自分が試合に出る、出ないに関わらず、チームが強くあってほしいという気持ちを持っています。そして、「日本一愛される集団になろう」と。強いだけでなく、周りの人に理解してもらい、支援してもらえる人間としての在り方を考えて、地域に根づいた形でやろうということです。選手たちが校歌を歌う姿を見るとビックリすると思いますけど、応援団も選手もとても大きな声で歌います。意外と大学生くらいになると恥ずかしがってできないことなんですよね。あれは僕がやらせていることではなく、彼らが自主的にやっていることです。どうしても今の若者は、「自分さえ良ければいい」という個人主義的なところがあるのですが、流経大ではチームや学校、地域といった自分が所属しているところに対する感謝の気持ちや誇りを持つことを追求してやっています。

――今シーズンもリーグ戦と全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)を残すのみとなりました。どのような戦いをしていきたいですか?
中野 大会がある以上、すべて優勝したいと思っています。それは監督としての実績が欲しいからではありません。取れるタイトルは全部取ったし、周りから「中野監督の実績はすごいよね」と言われるくらい誇れるものもある。なので、自分のことよりも選手たちがこれから社会に出た時に、良い人生を送ってほしい。良い人生と言っても当然、それぞれ価値観が違うので、お金持ちになることが良い人生だと言う人もいるし、お金がなくても好きな人と細々と生きていくのが良いと言う人もいるし、お金より身分なんだと言う人もいる。だから、あえて抽象的に“良い人生”と言っています。どんなにスポーツ選手として成績を残しても、それで就職がうまくいくわけではないし、逆に成功したことにうぬぼれてしまうと、その先の人生で失敗する可能性は高いので、人の中で生かされているんだということを常に意識してほしいです。

――選手の人間形成の指導も大事にしていらっしゃるのですね。
中野 若いうちはどうしても、自分一人の力で努力していると思ってしまいがちなのですが、今サッカーに打ちこめているのは、大学が何億円もかけてグラウンドを作って、指導者がいて、仲間がいて、親が大学の授業料払ってくれて、時には彼女の支えてくれる言葉があるからです。その中の何かでも一つ欠けていたら、今ほどサッカーに打ちこめていないでしょ、と言い続けています。その言葉に説得力を持たせるために、組織としては結果にこだわりたいし、結果を示していかないといけない。勝てない監督がそう言っても納得してもらえないし、やはりスポーツの世界は勝たないと注目されないので。

一大学の力だけでもスポーツ文化は根づかせられる

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――中野監督は流経大の今だけでなく、選手たちの将来や、大学サッカー界の未来まで考えていらっしゃるのですね。
中野 僕は流経大の在り方を変えたし、大学サッカーの流れも変えた。日本サッカー界においても、いろんな意味で風穴を開けたというか、今までの常識を覆すような存在としてのし上がってきたと言えるかもしれません。当然、協会の中には変化や改革を嫌う人もいるかもしれないし、僕がやっていることがすべて正しいとは思っていません。ただ、今後も一石を投じるようなことはしていきたい。賛否はあると思いますけど、続けることで、日本サッカーを変えられるのではないかなと思っています。

――大学サッカーを変えることが、日本サッカーを変えることにつながると。
中野 日本の大学サッカーは、どうしても高校サッカーとプロサッカーの狭間になってしまっています。もちろん高卒でも素晴らしい人はいますけど、協会やJのスタッフで最終的に残っている人はほとんどが大卒なんですよね。やはり大卒という肩書きはアドバンテージがあるので、ただ大学を卒業するだけではなくて、4年間で中身のある人間に成長して、様々な分野に出ていってくれたらなと。やはりサッカー界を変えるためには、サッカーを経験した人がメディアや企業、学校など様々な組織にいないと、いくらスポーツマネジメントの勉強をした人がいても、サッカー界に入ってくるお金がなかったら意味がないですから。

――そのために、まずは自分が育てている学生の意識から変えていくのですね。
中野 Jクラブでなくても、一大学の力だけでもスポーツ文化は根づかせられると思っています。まずは、親や地域の人など、身近な人に理解してもらうことが大切です。僕が北海道の人に言っても説得力はないけど、龍ケ崎市の人を巻きこんでいくことはできる。そういう努力を続けていけば、10年後、30年後、もしかしたら僕が死んだ後にサッカーがもっと国民の中で愛されるようになるのかな、と思っています。流経大はここ3年間、アメリカに遠征に行っているのですが、驚くほどカレッジスポーツと地域が一体になっているんですね。人々がスポーツに対する幸福感をベースとして持っていて。それを文化の違いと言ったらそれまでですけど、例えば日本にも野球の文化は根づいていますよね?

――サッカーよりも文化として根づいています。
中野 高校野球は、甲子園予選の1回戦からブラスバンドを連れて学年や全校生徒が応援に行くのが当たり前ですよね。それが文化なんです。そして甲子園に行くと、今度は「おらが町が甲子園に出た」と言って、地域のみんなが幸福感や喜びを持って、一生懸命応援する。サッカーや他の競技も、このように誰かが変えていかなければいけないと思っています。

――高校サッカーや大学サッカーも高校野球のように盛りあげることができたらいいですね。
中野 高校サッカーも首都圏開催になって、注目を集めるようになりました。大学サッカーも10年後や20年後、超満員の観客の中で大学リーグやインカレを開催できるようになったら、選手はもっと伸びます。やはり閑散とした中でプレーするのとは全然違いますから。そういう環境を次の世代のために本気で作りたいし、いつか大学サッカーのチケットがプレミア化することを思い描きながら、一つひとつ仕掛けていきたい。僕一人の力ではどうにもできないので、多くの人を巻きこんで続けていきたいですね。

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