2018.01.03

戻りきらなかった歯車、京都橘はまたも初戦で悔し涙

京都橘は無念の初戦敗退となった [写真]=平山孝志
京都サンガF.C.を中心に取材するサッカーライター

「不完全燃焼ですね。負けたのはもちろん残念だけど、負け方も残念でした」。試合直後に米澤一成監督が口にした一言に全てが集約されていた。

 第96回全国高校サッカー選手権大会2回戦。シードにより大会初戦となった上田西(長野)と京都橘(京都)の一戦は、後半に大久保龍成が決めたPKが決勝点となって上田西が勝利。試合後のTVインタビューでは就任2年目でチームを全国へ導いた白尾秀人監督が感極まって言葉に詰まるなど、12年ぶり2度目の出場で念願の初戦突破を果たした。一方の京都橘はまさかの初戦敗退。市立船橋(千葉)との激戦の末に敗れた昨年度とは違い、今年は持ち味を発揮しきれずに大会を去ることになった。

 敗因は攻撃面にある。PKを与えた場面のボールの失い方や、その後のゴール前の対応も悔やまれるが、守備では長身FWへロングボールを蹴ってくる上田西の攻撃に対して、決して得意ではない空中戦など踏ん張っていた。だが攻撃で、チームの生命線となるべきポゼッションが機能しない。前半途中からハーフタイムまではボールを動かしてサイドを突き、梅津凌岳が好パスでチャンスを演出するなどリズムを作れていたが、後半になると時間の経過とともに沈黙。最終ラインを支えた古川隆輝は「焦りが出た」と振り返る。ロングボールに頼る攻撃が増えていき、5バック気味に守備を固める相手に跳ね返されては攻撃の権利を失っていく。リードを奪われたチームに焦りが生じるのは珍しくないが、ここで注目したいのは0-0の状況でそうなってしまったという点だ。

 話は2カ月前にさかのぼる。京都府予選中にキャプテンの河合航希が大けがで離脱するというアクシデントが様々なものを狂わせた。今年の京都橘は個の力でフィニッシュまで持ち込める岩崎悠人(現京都サンガF.C.)のようなアタッカーがおらず、堅守速攻からポゼッションスタイルへ舵を切った。それは夏の高校総体でベスト8に進出するなど成果をあげており、その中で重要な役割を担っていたのが河合だ。左サイドバックを基本ポジションとしながら、攻撃時には前方中寄りへ移動して“第3のボランチ”として攻撃の組み立てに関与する。その戦術の要が離脱した状況で同じサッカーはできず、チームは軌道修正を迫られた。京都大会は時間がない中で「河合を京都一のキャプテンにする」という旗印の下に奮闘して優勝したが、その後のプレミアリーグ昇格戦では前橋育英に0-5の大敗。「高校総体での試合(ベスト8の前橋育英戦はPK戦の末に敗退)があるので『今度もやれる』と思ってしまった。そんな甘い世界じゃないのはわかっているはずなのに」(古川)と現実を突きつけられてしまう。

 そこから選手権初戦まで約2週間。選手は懸命にサッカーと向き合い、意見をすり合わせて状況は上向いた。だが、1年近くかけて築き上げてきた戦い方から転換するには、時間が足りなかったのかもしれない。0-0で発生した焦りとは「苦しい状況下で自分たちのスタイルを貫き通せる自信や覚悟の不足」と言い換えられるのではないか。運動量や空中戦といった相手の得意分野ではなく、技術と組織で戦おうとしたゲームプランを継続できなかったことが悔やまれる。

 不完全燃焼だけに“たられば”が思わず頭をよぎってしまう。もし河合がいれば、中盤の底からの配給を彼に任せて、梅津はゴールに近いポジションをとって仕事ができたかもしれない。もし河合がいれば、左サイドのコーチングやバランス維持を彼に任せて、古川の負担を減らせたかもしれない。それを最も感じていたのは、他ならぬ河合自身だった。「中盤で梅津が孤立していた。(古川が統率する)最終ラインを含めた距離感も遠くなっていた。ピッチに入って助けたかった……」(河合)。応援席から声援を送り続けた主将は、そうつぶやいて仲間の待つロッカールームへ入っていった。

取材・文=雨堤俊祐

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