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國學院久我山の小柄な2年生コンビ、強力ツインタワーを攻略/選手権準決勝

2016.01.10

文=鈴木智之(フットボールエッジ編集長)(提供:ストライカーデラックス)

 サッカーに体の大きさは関係ない。それを証明したのが、國學院久我山高校の2年生コンビだった。1トップを務める澁谷雅也は163センチ、トップ下で攻撃をリードする名倉巧は167センチと小柄な部類に入る。対する青森山田高校のセンターバック、ベガルタ仙台加入内定の常田克人は189センチ、近藤瑛佑は190センチあり、大会屈指の大型コンビである。

 青森山田の“ツインタワー”をどう攻略するか。トップ下の名倉は「相手はプロ内定選手(常田)もいて、身長も高い。自分と(澁谷)雅也は背が高くないので、足元の技術で相手を翻ろうしようと思っていた」と語る。そのイメージの源はバルセロナだ。「メッシも背が高くないけど、大きい選手に負けていない。そういうイメージで、デカイ相手を技術で上回れれば、必ず抜けると思っていた」(名倉)

 國學院久我山の同点ゴールは名倉のひらめきから生まれる。1点ビハインドで迎えた、25分。名倉が左サイドをドリブルで突破し、ゴール前にシュート性のクロスを送る。そこにいたのはDF野村京平。強烈な弾道のボールを頭で合わせ、久我山が同点に追いついた。ボディバランスに優れ、正確で強いキックでチャンスを作る姿は、名倉が「あこがれ」と語るイニエスタのようだった。

 1-1で迎えた85分、名倉、澁谷のホットラインがつながり、決定機が生まれる。名倉がドリブルで前方へボールを運ぶと、ディフェンスラインの背後に走りこんだ澁谷へスルーパスが通る。「ボールの受け方、GKをかわしてシュートを打つところまではイメージどおり」(澁谷)の動きをしながら、無人のゴールをめがけて放ったシュートはゴール左に外れてしまった。久我山を率いる、清水恭孝監督も思わず頭を抱えた決定機失敗。澁谷が「勝ったのはうれしいけど、個人的には悔しい」と話すとおり、背番号10を背負うエースとしては、決めておきたい場面だった。

 とはいえ、この試合で攻撃をけん引したのは小柄な2人のアタッカーであり、徹底した地上戦を挑み、青森山田の“ツインタワー”に仕事させなかった。名倉はこの日のできに手応えを感じており、「2人にゴールがなかったのは残念ですけど」と前置きをした上で「一対一の対人、フィジカル、球際では負けていなかった」と自信をのぞかせる。

 決勝戦に向けて、澁谷は「東福岡高校はインターハイのチャンピオン。自分たちはチャレンジャー。失うものはなにもないので、自分たちのサッカーをして勝ちたい」と話せば、名倉は「選手権で試合を勝ち抜く中で成長して、強くなっている。東福岡を恐れずに、自分たちのサッカーで勝ちたい」と語気を強める。

 久我山が初のチャンピオンに輝くためには、ふたりの活躍は欠かすことができないものになる。果たして、この2年生コンビが久我山を王者に導くのか。決勝戦では、ピッチ上で絶大な存在感を放つ小柄な二人から、ひとときも目を離さないほうがいいだろう。

(コメント)
國學院久我山
清水恭孝監督
 苦しい戦いでしたが、選手たちは最後まで粘り強く、したたかに戦ってくれました。久我山らしさがでた試合だったと思います。どちらが勝ってもおかしくない試合でした。少し、我々に運があったと思います。(名倉について)かなりいい選手だと思います。あのサイズなのでプロになるためのハードルは高いとは思いますが、点数が取れる選手になれば、そこも見えてくるのではないかと思います。(選手には)何があっても動じないでやろうと伝えました。先制されたあとも、落ち着いてゲームができました。点が入って試合が動きだしたところで、自分たちのリズムを作ることができたかなと思います。

宮原直央
 先に失点しましたが、その後の戦い方がよくて、それが逆転ゴールにつながったと思います。ロングスローは準備してきたのですが、失点してしまいました。その後、立て直すことができた理由としては、同点ゴールが大きかったです。決勝戦の相手は強いチームですが、最高の舞台で戦うために、最高の準備をしたいです。

名倉巧
 自分たちの力以上のパフォーマンスが出せて、ここまで来ることができたと思います。(1点目のアシストは)弱いボールだと相手も対応しやすいと思い、強いボールを蹴りました。あこがれの選手はイニエスタです。ボールコントロール、シュート、パス、ドリブルがうまくて、メッシやスアレスが輝くのも、イニエスタの存在があるからだと思います。(自分も)小さくても技術が高くて、ゴールを狙える選手になりたいです。

澁谷雅也
 自分が決めきれなかったのが、決勝に向けた課題です。この試合ではセンターバックの間にポジションをとり、相手の死角に入ってスルーパスを受けることを意識しました。前半はポゼッションでも勝てていましたが、後半は押される場面が多かったと思います。自分がもっとボールを受けて、リズムを作ることができたら、違った展開になったと思います。手本にしているのはスアレスとアグエロです。スアレスは普通のFWと動きの質が違って、ゴール前でフリーでボールを受けることができますし、アグエロのどこからでもシュートを打つ姿勢は見習いたいです。

青森山田
黒田剛監督
 ロスタイムで2試合拾い、ロスタイムでやられる。高校サッカーの勝負の厳しさを痛感しました。このチームはキャプテンの北城俊幸を中心に、まとまりのある、前向きでどんなときも一生懸命やるチームとして、1年間よくがんばってくれました。東福岡と高円宮杯Uー18プレミアリーグの2位同士で決勝戦をやりたいという気持ちがありましたが、まだまだ我々に力がなかったと評価するしかないと思います。ロスタイムで得点を取れて、勝ちきれる。そんなチームを作って、また出直してきたいと思います。

常田克人
 いままでロスタイムで勝ってきましたが、それを相手にやられてしまいました。相手のほうが一枚上だったと思います。この悔しさをバネに、プロの世界でがむしゃらにやって、開幕スタメンを狙っていきたいです。

神谷優太
 前半はうまくいきませんでしたが、後半は立て直すことができました。自分たちのサッカーはできたと思いますが、ゴールを決めることができませんでした。プロになって、決めるべきところで、しっかりとゴールを決められる選手になりたいです。

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ストライカーデラックス高校サッカー特集ページ(http://www.soccerstriker.net/html/matchreport/sensyuken94th/sensyuken94th_index.html

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