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駒澤大高が松山工業との接戦を制す…ベスト8進出を後押ししたマルチポジションシステム/選手権3回戦

2016.01.04

文=川端暁彦(提供:ストライカーデラックス編集部)

 後半開始早々の3分に松山工業高校はFW野川稀生が左サイドから入れたFKに、ニアサイドで1年生DF志摩奎人が合わせて先制点を奪う。だが、その後11分に駒澤大学高校も、同じ左サイドからのFKをファーサイドでDF佐藤瑶大がヘディングで完璧に競り勝ち、同点ゴール。試合を振り出しに戻した。そして28分、交代出場のMF菊地雄介が左足でシュートを蹴りこんで、勝ち越し。終盤、松山工業も激しい攻勢を見せたが及ばず、駒澤大高が初の8強進出を決めた。

 松山工業と駒澤大高。初めての8強を目指す両雄の激突で、序盤の主導権を握っていたのは間違いなく松山工業だった。負傷者の影響で右サイドのメンバーが入れ替わっていることを見て取った松山工業・坂本哲也監督は「ウイークポイントになるのならば徹底していこう」と、相手の右翼にターゲッティング。立ち上がりから激しくプレッシャーを掛けつつ、左サイドに攻め寄せて相手を押しこんだ。

 駒澤大高MF春川龍哉は「相手はガンガン来るし、しかもうまい。ボールが取れないし、本当に自分たちのサッカーができなかった。あの時間帯は本当にキツかった」と振り返る。ただ、逆にいえば、ここが勝負どころだった。この大会、予選から勝負師としてのすごみを見せている駒澤大高・大野祥司監督は、すかさず右サイドバックで初先発となっていた安元奨とボランチの春川を入れ替えるように指示。「ビビってしまっていた」と大野監督。安元に代わって、センターバックもこなしてタフに戦うことに定評のある春川を右に置くことで見事に安定を図った。窮余の策だが、しかしこれも選手全員にさまざまなポジションを経験させてきたからこそ打てる手。「あらゆることを想定して、選手にはいろいろやらせてきた」(大野監督)成果である。

 駒澤大高のマルチポジションシステムは10番のキャプテン深見侑生にも色濃く適用されている。今大会はすべてFWとして先発し、試合中に右サイドバックに移るという流れだ。そもそも「GK以外は全ポジションやったことがある」(深見)というスーパーマルチプレーヤーなのだが、この日も同点ゴールを奪うと、すかさず深見を右サイドバックに。「センスがあって、攻守で落ち着く」(大野監督)彼をDFラインに入れることで、DF高橋勇夢の負傷欠場に伴う「右の穴」は完全にふさがった。

 そもそも今年のダブルボランチは、今季の上半期はセンターバックコンビだった2人。「最初は『えっ? 片方ならともかく、両方?』と思った」(春川)という奇策だったが、「うまさを期待されていないのは2人ともわかった」(春川)と走って守るボランチコンビとしてすっかり定着。その2人に代わるセンターバックとして奮闘し、セットプレーのスコアラーにもなっているDF佐藤瑶大も、今シーズン始めはFWとして起用されていた選手である。

 マルチポジションシステムは中途半端にやると、中途半端なチームが仕上がるだけなのだが、駒澤大高はまさにそれが徹底されており、誰もが別のポジションで出る準備と覚悟をしているし、それをやり切る戦術的な能力も備えている。選手の適性や特性を見抜いて、巧みに配置替えを行う大野監督の手腕と合わさって、駒澤大高8強進出の原動力の一つとなった。

(コメント)
駒澤大高
大野祥司監督
「(決勝点の)菊地は技術の高いドリブラーで、ウチでは異色のタイプ。何かやってくれるかなと思って出したが、あまり根拠はなかった(笑)。今日の試合前は、ゆるゆるになっていたのでカツを入れました」

春川龍哉
「今年はホントにキツかった。夏はホントに走ったし、死にものぐるいでやる中で、1、2年生もしっかり付いてきてくれています。体力には自信があります。校内マラソンも1位でした」

松山工業
坂本哲也監督
「最後までボールを動かして戦うことはこだわってやった。(駒澤大高のロングボールで)前後に走らされて、それがストレスになっていた。ミスが失点につながった。足りなかったのは技術。1、2年生には、あのプレスをかいくぐるだけの技術を身につけさせたい」

野川稀生
「(アシストとなったFKは)誰が触って決めてもいいし、そのまま入ってもいいという感覚で蹴った。内容が良かっただけに、結果は残念。リードされてから慌てて蹴ってしまった。本当はあの状態でもつなぐことをしたかった。卒業後は大学に行くので、そこで力をつけてプロになるという目標を持っています」

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ストライカーデラックス高校サッカー特集ページ(http://www.soccerstriker.net/html/matchreport/sensyuken94th/sensyuken94th_index.html

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