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BLUE ENCOUNTが高校時代を回顧し、選手権応援歌に込めた想いを語る「夢を追いかけた先を見てほしい」

2015.12.29

インタビュー=小松春生、写真=野口岳彦

 第94回全国高校サッカー選手権大会が30日から開幕する。今大会では応援リーダーを青森山田高校の一員として大会に出場し、現在は鹿島アントラーズでプレーする日本代表MF柴崎岳、応援マネージャーを永野芽郁さんが務める。

 また応援歌は、11月よりスタートさせた全国ツアーが全会場ソールドアウトになるなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進中のロックバンド、BLUE ENCOUNTが担当する。『サッカーキング』ではBLUE ENCOUNTのメンバーに話をうかがい、高校生時代の思い出や新曲への想いについて聞いた。

曲のイメージがハマらなかった時、自分たちの高校時代を思い出した

―――まず、第94回全国高等学校サッカー選手権大会の応援歌に起用されたことの報告を受けた際、どのようなお気持ちでしたか?

田邊駿一(以下、田邊) 「マジか! 俺らか!」という感じでした。4人とも「マジで俺らなんですか?」「4人組の別のバンドさんではないんですか?」と何度も確認しました。“青天の霹靂”とはまさにこのことか、というくらい予想していなかったことでしたね。これまでそうそうたるアーティストの方々が応援歌に起用されていて、嬉しさを飛び越えた驚きがありました。フェスの会場へ向かう車中で報告を受けたんですけど、4人とも頭が真っ白になって、しばらくボーっとしていました。それと同時に歴史ある高校サッカー選手権という一大イベントに僕らがどんな色を足すことができるのかと冷静になって考えだしました。

 制作スタッフの方から、「こういった曲にしてください」と要望があるかと思っていましたが、ありがたいことに「BLUE ENCOUNTさんとしての新曲を作ってください」とおっしゃっていただいて。僕たちのことを信じてもらえないと言ってもらえないことなので、嬉しかったです。

 逆に、それはとてつもなくキャンバスの広いことなので、制作に入った時にどんな曲を作っていいのか、僕の中でわからなくなってしまって。そこから一週間、時間をいただいたんですが、自分の中で定まらないまま20曲ほど作りました。その曲を持って合宿に臨んだんですが、結局作ってきた曲が全部イメージにハマらない。ハマらなさ過ぎて、制作の進行を一度待ってもらわないといけないとまで考えました。

 その時、自分たちの高校時代を思い出してみようと考えたんです。今回の曲ができた所以になりますが、選手のみんなと同じ気持ちに立つのが一番大事だと思ったんです。僕たちは高校生の時にBLUE ENCOUNTを結成しました。当時は周りに応援してくれる人がいなくて。音楽って趣味のものだと思われていたので、親からも先生からも友達からも「いいから早く辞めろ」とずっと言われていました。

 そう言われる中で、信じられるものや逃げられるものが何もなかった。そう気づいた時、僕は学校にいづらくなって、辞めてしまったんです。だから、その時の自分が「この曲があったらもっと勇気づけられただろうな」、「もっと救われただろうな」と純粋に思える曲を書こうと思ってこの曲を作りました。

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―――作詞・作曲は田邊さんですが、メンバーの皆さんでの話し合いもかなりされましたか?

高村佳秀(以下、高村) 田邊が作ったデモ20曲の中に、もちろんいい曲はたくさんあったんですけど、高校サッカーを背景に考えた時、合わなかったんです。その段階での楽曲は、僕らが高校生だった時の気持ちではなく、今の自分たちでしか考えていなかったので。だからしっくりこなかったんです。でも、選手たちがロッカールームで涙を流すシーンを映像で見たりして、当時を思い出していくうちに、田邊が改めて作った曲が一発で僕らの中にも入ってきたんです。「この曲、さっき見た映像にめちゃくちゃ合うな」と直感的に感じて、そこから一気に仕上げていきました。高校時代に帰る気持ちがとても大事でした。

―――制作されてから大会の開幕が近づいてきました。心境の変化はありますか?

田邊 演奏すればするほど、今回の曲を作ってよかったと思えて。自分たちの曲への思いを話したり、今行っている全国ツアーで歌うほど、あの頃の自分が浄化されていくんです。高校時代は負い目というか、嫌なことしかなかったので。辛かった頃の自分としっかりと向き合えて作れたので、歌うほどに「あの頃の自分がいたから今があるんだ」と思えるようになって、一回一回噛みしめながら歌えています。

メンバーの高校時代を振り返る

―――皆さんがどのような高校生だったか、お聞かせください。田邊さんは先ほど、高校を辞めたとおっしゃいました。また、田邊さんと江口さんと高村さんは同じ高校の同級生だったんですよね。

田邊 途中で高校を辞めたというのは一見アウトローな感じがしますけど、いたって普通の高校生でした。友達の輪に入っていないと嫌だったりしましたし。

高村 高校生らしい高校生だったよね。

田邊 本当、普通の高校生でしたね。でも音楽に出会って、「音楽って単純にすごく楽しいな」って思ったことは周りとは違った感情だったと思います。音楽だけを信じられたというか、追いかけるものが音楽しかなくて。高校生の時、僕は周りから嫌われたくないと気を遣うような人間だったんですが、自分の夢を追いかけているうちに、周りの人がどんどん離れていってしまっていることに気付いて。そうすると今度は自分で勝手に「どうせみんな俺のこと嫌いなんだろう」と決めつけて、考え込んじゃっていました。それで結局、高校を辞めることになってしまって。当時はすごく自分のことを信じているのに、相手のことを信じていませんでした。

―――周りに伝わらない思いを音楽で表現できたということですね。

田邊 音楽だったら自分が歌っている、センターにいるので、落ち着いていました。普通の高校生で、人の目線を気にする人間でしたけど、結局は目立ちたがり屋でしたね。

高村 メンバーから見ても、田邊はステージに立っている時が、いいところも悪いところも一番出ている感じがします。「ここにいるぞ」と歌っている雰囲気が当時からしました。

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―――高村さんはどのような高校生でしたか?

高村 僕は音楽をやる家庭で育ったので、小さい頃から音に触れる機会がすごく多かったんです。だから、高校に入学して軽音楽部に入ろうと思ったのは自然な流れでした。ただ、プロを目指していたわけではなく、単純に音楽がめちゃくちゃ好きだったんです。学校で勉強が終わったら音楽をやりたいくらいの気持ちで。「バンドを組みたい」とか「プロを目指したい」よりは単純に音楽が大好きでしたね。

―――ちなみに音楽以外に熱中されたことはありますか?

高村 ネットゲームです(笑)。

メンバー一同 それだけでどんな高校生活だったかわかるよね(笑)。

高村 僕の高校生活は本当にシンプルで、学校に行って、部活して。部活がない時は家に帰ってドラムを叩いてネットゲームをして寝る。

田邊 “部屋”か“部屋”ですよね。

高村 でもそれでつながった友達も多かったですね(笑)。

田邊 俺とは別の闇を感じるよね(笑)。

高村 俺の中では光ですよ! そんな高校時代でした。

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―――江口さんはいかがでしょう?

江口雄也(以下、江口) 意見がビシッとあって、芯があるような人間に見られたいという思いはありつつも、実はそんなに芯がなくて、ブレブレで人に流されて、流行りものにすぐ乗ってしまうような高校生活でした。でも、音楽に出会ってからは自分がやりたいことが見つかって、「これがやりたい」としっかり言えるようになったと思います。

 最初は何がやりたいかを聞かれても、答えられない自分がいました。でも、何かやっている“風”には見せたかったんです。中学の頃からテニス部に所属していたんですけど、やるからには真剣にやりたいと思う自分がいました。部活だけではなく、地域のクラブに通ったり、ちゃんとやっているようには見せていた。でも、本当にやりたいことなのか、自分ではわかっていませんでした。そんな周り流されてしまう自分から、ちょっとずつ変わっていく高校時代でした。

 割とスポーツは何でもやっていました。サッカーも部活には入りませんでしたけど、昼休みや授業ではスパイクを買ってみたり、形からでもやっていましたね。意外とスポーツ少年でした。

―――そこから音楽への道に進むと。

江口 高校時代、読んでいた漫画が『BECK』だったんです。そこから「ギターをやりたい!」と思って。たまたまクラスで近くの席になった高村がドラムをやっていたのは知っていたので、「ギターやりたいから弾けるようになったら一緒にやろう」と言い始めたことがきっかけでした。そこから始めて、一緒に音を鳴らしていくうちに音楽をやりたいと思うようになりました。

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―――辻村さんはどのような高校生でしたか?

辻村勇太(以下、辻村) 結構荒れていましたね(笑)。やりたいことをやっていた感じです。それは今考えると、誰かに認められたい、見てほしいから人の気に障るようなことをあえてやっていたのかなと。周りの大人が大嫌いだったんです。信用できなくて。相手は特に嫌なことをしていないのに反発してみたり。不器用でしたね。自分に都合の悪いことがあると「うるさい」の一点張りで。

 バンドは中学からやっていたんですけど、決まったバンドはなくて、ひたすら無我夢中でいろんなバンドでやり続けて。高校に入ってからは周りに認められたいとしか思っていなかったです。その一つの武器であったのがベースであり、音楽でした。

―――高校時代はひたすら音楽を?

辻村 学校にほとんど行かず、みんなが学校で授業を受けている間、家でひたすらベースを弾いて、学校が終わってから友達と遊んでいました。みんが勉強している分、自分はベースを弾いて。それしかないと思っていました。それしか興味がなくて、好きなことをひたすらやっていました。

ライブとサッカー、通じている部分がある

―――田邊さんと江口さん、高村さんは高校時代の軽音楽部でバンドを結成されたとのことですが、男子高校生にとって軽音楽部とサッカー部は部活動の二大派閥と言える存在です。

田邊 4人で練習を部室でしていたら、急に「ドン」って音がして。「なんだ!?」と思って外に出たら「うるせー!!」っていう張り紙を運動部にされたことがありますね(笑)。

―――サッカー部についての印象はありますか?

江口 憧れはありました。運動部の中でも花形で、やっている人はみんなかっこよく見えました。できることなら自分もサッカーをやっておけばよかったと思うくらい、ヒーローたちばかりでしたね。やっている人もクラスの中で引っ張っていく、リーダー的な存在で。うらやましかったよね?

高村 小学生の頃、地域のサッカークラブに通っている同級生がみんなかっこよくて、憧れて入部したんですけど、あまりにも「サッカーに向いていない」と思って、1年で辞めちゃった過去があります(笑)。自分がもっと運動ができたらサッカーをやりたかったですね。

―――実は以前、ライブを拝見した時、グッズでサッカーシャツを扱っていたことが気になっていたんです。

高村 お客さんからの反応もいいんです。

田邊 みんなが「一つになる」ということを考えた時、「サッカー」というイメージがあったんです。

高村 日本代表の試合を見ると、お客さんが皆さんユニフォームを着て応援しています。統一感があるし、団結感がありますよね。

―――“一体感”はライブでも共通する部分ですね。

田邊 そうですね。ライブは自分たちだけではできない部分があるので。そういう意味ではライブもチームプレーなんですね。サッカーを見て「すごいな」と思うことはあります。ライブでもオーディエンスとつながることや、チームの力を感じること、1つにならないとアウェーになるし、ホームになれば力をすごく感じる…。通じている部分があると感じます。

江口 メンバーだけじゃなく、会場にいるみんなとも一つになりたいという思いがライブにはあって。サッカーシャツを着てもらって、みんなで一体感を出したいという思いはありますね。

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『はじまり』はこれまでの応援歌界の中で、一番ネガティブな曲

―――では、ここからは新曲についておうかがいします。『はじまり』に特に込めた思いは何でしょうか?

田邊 夢を追いかけた先を見てほしいと思いました。勝ち負けの先を今回は思い描いたんです。勝負事の世界はどちらかが勝つ、もう一方が負けるという、わかりやすい白と黒の世界があって。勝ったチームの中でも、そこで一緒に戦えなかった人もいます。悔しい思いをしている人がたくさんいる中で、ほんの一握りしかいないかもしれませんけど、勝利という夢を掴んでほしいと。

 僕らも何度も挫折を経験しました。でもその先に何を見出すかがすごく大事で。今回の曲には、その先に見えたものとして「ちゃんと支えてくれる人に出会えることが大事」というメッセージを込めています。人間って「自分だけが苦しい」とか「自分だけが頑張っている」と思いがちになって、その先に仲間がいるということを忘れてしまいやすいんです。僕たちも一番近くにいるメンバーのことですら疑った時期もありました。でも、ちゃんと一緒にやれているからこそ、「夢って掴めるんだよ」と伝えたかったんです。僕らなりに、負け続けたバンドとして言えることでもあるので。

『はじまり』はこれまでの応援歌界の中で、一番ネガティブな曲だと思っています。「頑張れ」っていう言葉をすごくネガティブに使っているので。「今は泣けばいい」とまで言っていて。こんなにネガティブな歌詞はなかなかないだろうなと。よくこの曲を応援歌にしていただいたな、とすら思っています。

 でも、泣いた先、周りに迷惑をかけてしまった先に何かがあると伝えたかったんです。若い頃、夢を必死に追いかけている時は、必死に迷惑をかけるべきだと思います。思い切り迷惑をかけて、夢が叶った時にその人たちをしっかりと一緒の景色に連れて行くことが大事だと思うので。ネガティブなことも含めて、この曲では全部を書けました。嫌なことに目をつぶらずにしっかり出し切るということがこの応援歌の大事なポイントだと思います。

BLUE ENCOUNTから高校生へメッセージ

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―――最後に現役の高校生に向け、メッセージをお願い致します。

辻村 辛いときに辛いと言ってほしいです。今、大人になってわかるんですけど、辛いときに辛いと言えないことが多かったので。そういう時こそ自分が周りを必要とする時だし、自分を見せることができたら、相手ももっと自分のことを好きになってくれる。それがチームプレーにつながることもあるし、本音で話すことが本当に大事だと思います。落ち込んでいる時はとことん落ち込んで、逆にイケイケの時はどんどんイケイケになって。自分の本能のままで進んでほしいと思います。

田邊 思い切り“KY”になってほしいです。僕は高校の時、空気を読み過ぎた結果、僕自身が空気になって、いないも同然みたいなってしまったので。いかに波風を立てないように生きるかと考えてしまう人も多いかもしれませんが、結果的に僕はそれで高校をいづらい場所にしてしまったんです。今のうちにやりたい事があるなら、言いたい事を言って、行動して。それを嫌う人もいっぱいいると思います。でもその先で、「いい」と言ってくれた人が本当の仲間だと思うので、その人と一緒にしっかりと夢を追いかけてほしいですね。だから思い切り“KY”になってください!

江口 高校時代は大学、専門学校、そこへ行かずに夢を追いかける…。将来へのいろいろな選択肢があって悩む時期だと思います。先生や親御さんから助言もあると思いますが、本当に悩んだ時は自分の心に聞いて、一番ワクワクする道を選ぶのが、自分にとって一番いい未来になると思っているので、ワクワクすることをやってほしいです。

高村 高校時代にできた人間関係や出会いが人生にとって一番重要なんじゃないかと、今の自分が実感しています。高校で出会ったメンバーと今でも一緒にバンドをやっていたり、あの時出会った友達が今でも本当の友達だったりするので。今、自分の周りにいる人たちや自分が関わっている物事を、すごく大事にしてほしいと思います。今は普通の生活と感じていることも、将来はすごく大事なものになると思います。だから思う存分、自分の思うように生きてほしいですね。

【新譜情報】
BLUE ENCOUNT / ブルーエンカウント
『はじまり』(第94回全国高校サッカー選手権大会 応援歌)
2016.1.13 in stores !!
●初回生産限定盤(CD2枚組)¥1800 KSCL-2642~2643
●通常盤¥1,000 KSCL-2644
●完全生産限定盤¥400 KSCL-2645

http://blueencount.jp/

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