2015.12.13

積み上げてきたものが生んだ成功…鹿島がチャンピオンシップを制覇

文=川端暁彦、写真=酒井伸

 積み上げてきたものが生んだ成功だった。12月12日、高円宮杯U-18チャンピオンシップに臨んだ鹿島アントラーズユースは、1-0のスコアでガンバ大阪ユースを撃破し、初優勝。ほとんど相手に持ち味を出させない戦いぶりを含めて、鹿島のアカデミーチームが大きな力をつけつつあることを実感させた。昨冬のJユースカップ(2014Jユースカップ第22回Jリーグユース選手権大会)制覇に続く、チャンピオンシップ制覇。年度をまたいで二つのタイトルを制した鹿島だが、たまたまタレントがそろった世代がきたというわけではなさそうだ。地道な基盤の整備があっての成功と見るべきだろう。

 要因はいくつかあるが、鈴木満常務取締役強化部長が真っ先に挙げるのは「鹿島アントラーズつくばジュニアユース」の創設だ。普通のサッカーファンは余り意識することがないと思うが、ジュニア・ジュニアユース年代の人材分布は「路線」に大きく左右される面がある。毎日父母が送り迎えをするという家も中にはあるし、こちらが驚くような「遠距離通勤」を繰り返している選手もいるが、基本的に選手は電車で通う範囲内でチームを選ぶ。つまり、そのラインがあるかが重要なのだ。柏のアカデミーにはJR常磐線に加えて東武野田線沿いのタレントが集まるし(必然、埼玉の選手も多い)、小田急線のタレントはかつて新宿から藤沢まで東京ヴェルディに集まっていた。

 鹿島が目をつけたのは、つくば市だ。2005年につくばエクスプレスが開業したことを受け、この地に拠点を設けた。かつての町田市がそうだったように、新規流入してくる人口がグッと増える地域では自然と子供の活動が盛んになり、タレントが出てくるという読みもあったのだろう。2011年には本格的な人工芝グラウンドとクラブハウスも完成。つくば駅から8分、秋葉原駅から42分の位置に拠点ができた意味は小さくなかった。元々、つくば市の人材は柏に行くことが多かった(たとえば、柏レイソルDF近藤直也はつくば出身選手だ)。その流れが大きく変わったのだ。今回の優勝チームに昇格内定のU-18日本代表DF町田浩樹を筆頭に、大里優斗、FW色摩雄貴といった、鹿島つくばジュニアユース出身の選手たちが含まれているのは決して偶然ではない。

「全国にJクラブが整備される中で高校サッカーの人材が少なくなっている」(鈴木強化部長)という現状は、その人材をスカウトしてくることで強固なチームを作ってきた鹿島にとって死活問題でもある。ユースへの投資は必然で、高校年代より一つ下がった中学年代のスカウト活動にもより大きな力を傾けつつある。決勝のスターティングイレブンのうち、4名はジュニアユース出身ではなく、それぞれ群馬県、兵庫県、そして熊本県からやってきた選手たちだ。そのうちの一人、群馬県のFC KRILO出身のMF田中稔也は来シーズントップチームへ昇格する。

 町田、田中に加えて鹿島ジュニアユース出身のMF平戸太貴、FW垣田裕暉が昇格となったが、鈴木強化部長は「結構やると思うよ」と涼しげに言ってのけた。熊谷浩二監督誕生後から積極的にトップチームの練習へ選手が参加するようになり、定期的に(「多いときは毎週ペース」(MF千葉健太))トップチームとユースの練習試合が行われるようになったことで、選手の地力が増すと同時に見極めも進んだ。そういう手応えがあるのだろう。

 育成年代の施策は5年後、10年後を見据えて打っていくもの。その意味で鹿島は育成部門が単独で動くのではなく、クラブとして育成の先を見据えて戦略を練り、投資を行っていく形ができていた。チャンピオンシップ優勝は、そうして積み上げていったものが生み出した一つの成果に過ぎない。

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