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インハイ予選敗退から意識改革…前橋育英が“前年度準優勝校”として選手権の舞台へ

2015.11.09

文・写真=安藤隆人

 雨中のライバル決戦は、最後の最後までもつれこんだ。

 前橋育英高校と桐生第一高校。この両者は今夏の全国高等学校総合体育大会(インターハイ)予選決勝でも顔を合わせ、その時は桐生第一が3-0の完勝を収めていた。この敗戦に奮起した前橋育英は、インターハイのない夏に徹底して自分たちの足下を見つめ直した。
「徹底してキックやトラップなどの基本技術を反復して取り組んだ」と名将、山田耕介監督が語ったように、技術レベルが高い選手がそろう中、基本を徹底したことで、よりチームとしての土台が強固になり、持ち前のパスとドリブルを組み合わせた質の高いサッカーを、ワンランク上に引き上げた。

 この成果が出たのが前半だった。ボランチの尾ノ上幸生、金子拓郎と佐藤誠司の両サイド、野口竜彦と横澤航平のツートップが、相手守備陣のギャップに巧みに顔を出し、バイタルエリアを活性化。14分には右CKを得ると、ニアで金子がヘッド。これを横澤が体で押しこんで、先制する。27分には右サイドを突破した佐藤のクロスを、相手GKが弾くと、これを拾った横澤がドリブルシュートを決め、一気にリードを2点に広げた。

 相手のシュートをゼロに抑えるなど、盤石の試合運びを見せた前半。しかし、後半になると桐生第一の猛攻に遭う。中盤での高さを武器に、縦に速いサッカーを仕掛けてきた桐生第一に押しこまれると、64分にエースストライカーの滝沢昴司に鮮やかなミドルシュートを決められる。さらに75分にはGK休石陸のロングキックに抜けだしたMF今泉祐哉に、綺麗なループシュートを沈められ、同点に追いつかれた。

 その後、一気に試合をひっくり返されそうな勢いだったが、「同点は仕方がない。ここで慌ててしまったら、夏の繰り返しになってしまう。集中して全員でリスク管理をしっかりとした」と尾ノ上が語ったように、浮き足立つことなく、集中を切らさなかった。

 延長戦でも勝負はつかず、PK戦にもつれこむと、「ここまで来たら、覚悟を決めろ!」という山田監督の檄に答え、10人目まで勝負は決しなかったが、10人全員が成功。桐生第一の10人目が枠を外した瞬間、前橋育英の2連覇が決まった。

「桐生第一に負けてから、選手たちの意識が大きく変わった。このチームは間違いなく力がある。もっとお互いのストロングポイントを理解し合えれば、もっと強くなる」

 山田監督はこのチームのポテンシャルの高さに手応えを感じている。だからこそ、選手たちの意識の変化を夏以降徹底して促した。その成果がまず選手権予選2連覇となって現れた。2カ月後には選手権が待っている。彼らは“前年度準優勝校”として出場をする。

「去年のチームのように、全員で一丸となったチームにしたい」(尾ノ上)

 まだまだ意識レベルを高めていかないと、全国では勝てない。さらなる意識改革を全員で取り組み、さらにパワーアップして、選手権の舞台に立つことを誓う。

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