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桐光学園FW小川航基、キャプテンの自覚芽生えたエース…貫禄の2得点で自身2度目の選手権へ

2015.11.09

文・写真=平柳麻衣

 小川航基の存在感は圧倒的だった。平成27年度第94回全国高等学校サッカー選手権大会神奈川県2次予選決勝戦、桐光学園高校は小川の2得点で市立東高校に勝利し、2年ぶり9度目となる全国への切符を勝ち取った。

 試合終了の笛が鳴ると、小川は喜びより安堵の表情を見せ、「日本一しか目指していない中で、今日やっとスタートラインに立つことができた」と胸をなでおろした。

“あの日”のことを忘れたことはなかった。桐光学園は連覇を目指した昨年の同大会で、のちに全国ベスト4進出を果たすこととなる日大藤沢高校に敗れ、3回戦で姿を消した。小川は言う。「あの敗戦は、チームにとっても自分にとっても、2度とやってはいけないこと。苦しい時にはあの試合を思い出して、ここまでやってくることができた」

 しかし、準々決勝の桐蔭学園高校戦こそ1得点を決めたものの、チームも個人も今一つ本調子が出ず、準決勝の湘南工科大学附属高校戦に至っては、鈴木勝大監督から「出ていなかったのか、寝ていたのか、立っていただけなのか、というぐらい良くなかった」と厳しい評価を下された。小川自身もふがいなさを痛感していた中で迎えた決勝戦。「準決勝から1週間しかなかったので、次の日からしっかり切り替えて準備ができた」と、これまでの2試合が嘘のように、キレのあるプレーを連発した。

「ここ6カ月くらいで代表も経験してきた中で、どうやったら得点が取れるか、ペナルティーエリア内でどういう動きをすればボールが出てくるか、すごく考えるようになった。Jリーグのゴール集を参考に見ているけど、点を取る選手は常にゴール前にいる」。小川の2得点はいずれも、瞬時の判断とスピードで相手DFの間を突き、ワンタッチで決めたもの。小川の持ち前の特長と、ここ半年で得た収穫が表れた場面だった。

 自身2度目の選手権への出場権を獲得したが、前回と異なるのは、左腕に巻かれたキャプテンマークの重みだ。「1年生の時はまだ人間的に未熟で、自分さえ良ければいいと考えている部分も少しはあった。2年の夏に監督からキャプテンをやれと言われた時も、最初は正直やりたくないと思った」と小川。しかし、「いざキャプテンマークを巻いてみたら、気持ちがスッと変わって、チームのことを考えられるようになった」

 時間と経験を重ねるごとに、キャプテンとしての自覚は増していった。「キャプテンをやったことで、人間としてもサッカー選手としても成長できた」。“背負うべきもの”を力に変え、精神面での大きな成長を遂げた小川は、全国の舞台でも圧倒的な存在感を放つはずだ。

By 平柳麻衣

静岡を拠点に活動するフリーライター。清水エスパルスを中心に、高校・大学サッカーまで幅広く取材。

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