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後半アディショナルタイムの劇弾…謙虚さ貫くヒーロー、名古屋U18FW深堀隼平「みんなが守ってくれたおかげ」

2015.11.02

文・写真=平柳麻衣

 スコアレスで迎えた2015Jユースカップ第23回Jリーグユース選手権大会、名古屋グランパスU18対東京ヴェルディユース戦の後半アディショナルタイム。名古屋MF杉田将宏が強烈なシュートを放つと、「必ず跳ね返ってくると思った」と深堀隼平が瞬時にゴール前に詰める。その読みどおり、ボールはクロスバーに当たって跳ね返り、深堀の元へこぼれて来た。

 試合は嫌な流れに傾きかけていた。好機をものにできずに前半を折り返すと、後半立ちあがりから立て続けに迎えた決定機も仕留めることができなかった。60分にゴール中央のやや遠い位置から深堀が放ったシュートも、枠を捉えられず。「1点決められれば楽になったのに、自分たちで苦しくしてしまった」(深堀)。

 その後は時間が進むに連れ、両チームがカウンターからチャンスを演出する一方で、深堀は影を潜めていた。「あの時間帯は消えていたので、何とかしたかった。もう一度、必ずチャンスは来ると思っていた」。信じて走った先に、歓喜の瞬間は訪れた。

 ドラマのような展開のヒーローとなった背番号12は、「あの形はいつも狙っている。自分の得点だけど、それまでDFの選手中心にみんなが守ってくれたおかげ」と振り返る。 高円宮杯U-18サッカーリーグ2015プレミアリーグWESTでは15試合で45失点と不調に陥っている守備陣が、Jユースカップでは粘り強さを見せ、準々決勝まですべて完封で勝ちあがってきた。守備陣のがんばりに応えたい気持ちが、深堀の元にボールを引き寄せたのだろう。

 しかし、名古屋の高田哲也監督は深堀について聞かれると、「スピードやシュート能力は高いけど、まだ若いので技術に関しては荒削りな部分もある。今日はおいしいところを持っていっただけ」とコメント。少し厳しい言葉で、今後のさらなる成長への期待を込めた。

 その課題は、深堀自身も自覚している。「理想はティエリ・アンリ(元フランス代表)のように、ドリブルもミドルシュートもヘディングも強くて、パスもできる選手。自分で点が取れるだけじゃなくて、周りに取らせることもできるFWになることを目指している」。ゴールの嗅覚や高いシュート意識は、すでに備え持っている。ここから、自身が挙げる「プレーに緩急をつける判断力や、スピードに頼らないテクニック」を身につけることができれば、対戦相手にさらに恐れられる選手となっていくはずだ。

 この日と同じく味の素スタジアム西競技場で行われる準決勝の相手は、FC東京に決まった。再び“完全アウェイ”状態となることが予想される中でも、「今日以上にみんなでまとまってやれば絶対に勝てる。自分で点を取りたい」と深堀。4年ぶりのJユースカップの頂点へ、深堀が強い気持ちでチームを導く。

By 平柳麻衣

静岡を拠点に活動するフリーライター。清水エスパルスを中心に、高校・大学サッカーまで幅広く取材。

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