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元日本代表の金田喜稔氏が高校生に熱く語る「本気でサッカーをやるなら、命懸かけてみろよ」

2015.08.20

文・写真=森田将義

 8月16日から3日間にわたって、大阪のJ-GREEN堺で開催されたのが、躍進が期待される16チームが会する「第8回アンダーアーマーチャレンジカップ2015 SUMMER」。2日目の試合を終えた後は、大会に参加する全選手が集まり、元日本代表FWで現在は解説者として活躍する金田喜稔氏らによるサッカークリニックが行われた。今回は、クリニックを通じて金田氏が高校生に伝えたかったことをインタビュー形式で尋ねた。

理想は「止める、蹴る、運ぶ」の3つを完璧にこなせる選手

――クリニックの前に大会のチェックもされていましたが、気づいた点を教えてください。
金田 日本代表やJリーグを見ていても思うんですが、日本はパスの概念を変えないといけません。何となくスペースにパスを出すことが多いんですね。ボールが体から離れると相手に奪われる確率が上がるので、ボールをなるべく離さないことが大事なのに、安易にスペースにパスを出し、自分と味方からボールが離れてしまうことが多かったです。こうしたプレーをしていては世界で通用しません。パスを出す際は足元に出すのが基本で、走っている選手に出す際もスペースではなく、走る選手の足元に強いパスを出すことが重要なんです。

――クリニックでは、そのためにも基礎技術が重要だと選手たちに伝えていました。
金田 ボールを扱う技術が高くならないと、いくら戦術を練ってもレベルが上がりません。技術を高めるためには、神経系統が発達する小学生、中学生、高校生のうちにどれだけ身につけられるかがカギになります。理想はサッカーの基本となる「止める、蹴る、運ぶ」の3つを完璧にこなせる選手。高校生たちには、これらを身につけるためには、どうすれば良いのかということを真剣に考えてほしいですね。ボールを止めるにはどこに止めるのが一番良いのか。ボールを運ぶ場合は、蹴る足だけでなく軸足をどこに置けばどんなコースが生まれるのかを考えてほしい。蹴ることに関しても、軸足の置き場所、体の向き、ボールのどの部分を蹴るかなどパターンは無限大にあり、何万回もボールを蹴らなければ、自分のモノになりません。誰よりも死ぬ気になって、反復練習をしてほしいですね。

――Jリーグが誕生して、20年以上が経過して技術レベルが上がったと言われますが、金田さんの目から見れば、まだ足りていないということでしょうか?
金田 だって、ワールドカップで勝てていないでしょ? ということは、世界に比べて技術が足りていないんです。そこを戦術やフィジカルのせいにしがちですが、相手がボールを奪いにきても絶対に奪われないボールの持ち方やミスをしない蹴り方を身につければ問題ありません。そうした技術がないから、W杯で負けているのだと僕は思っています。強い当たりやプレッシャーの中でも、簡単にボールを失わないようにするにはどうすれば良いか、若い選手たちが真剣に考えてくれないと、日本のサッカーに未来はありません。

野心と習慣が本当に大事なんです

――クリニックでは、反復練習を繰り返し、2020年の東京オリンピックを目指してほしいとエールを贈られていました。
金田 この大会に参加している高校3年生は、東京オリンピックが開催されるタイミングで23歳を迎えます。本気になれば、メンバー入りすることができるのです。予選なしでオリンピックの舞台に立てるなんて、ラッキーなことですよ(笑)。彼らは気づいているのかな? 最近、夢を持ってトレーニングをしている子が少ないから、心配になってハッパをかけちゃうんです。昔の子供の方が、目をギラギラさせていましたね。今の子供たちは環境がそろい過ぎて、やらされている感じが強いのかもしれません。でも、オリンピックに出られれば僕らの時代と違って、サッカーで飯が食えるし、海外で活躍できるかもしれない。チャンスが目の前にあるのに、なぜ野心がないのか気になりますね。僕が中学高校生の頃は「日本代表選手よりもうまい」とか「いつか追い越してやる」って思っていましたし、そうした気持ちがあったから成長できたんだと思います。

――金田さんの時代と今の子供たちの差はそこにあると。
金田 今の子供たちからは覚悟を感じられないんです。本気でサッカーをやるなら、命懸けてみろよって思いますね。友達が遊んでいる時も、流されずに「自分は、好きなサッカーを誰よりもうまくなりたい」と思って、練習できる選手になってほしいし、それを習慣にしてほしい。この年代で、コツコツがんばれない選手は大人になってからもできません。野心と習慣が本当に大事なんです。プロになって、日本代表まで登りつめることができるのは1パーセント以下のエリート。でも、覚悟を持って、サッカーに向き合っている選手は将来、サラリーマンなど違う世界に行っても覚悟を持ってがんばれる。今、サッカーで覚悟できない人は、この先、何事に対しても覚悟を持ってがんばれません。僕がクリニックで伝えたいことはそこ。サッカーと真剣に向き合うためのヒントを発信していくことが役目だと思っています。

――金田さんが高校生の頃は、どれくらいの練習をされていましたか?
金田 僕はサッカーを中学から始めたので、遅れを取り戻そうという気持ちもあったけど、一番は「サッカーがうまくなりたい」という気持ちが強かった。嫌々やらされたり、指導者に言われたことをこなすだけでは、うまくなりません。良いプレーができた時の達成感や新しいアイデアは、覚悟を持ちながらも楽しんでいるから、生まれるモノ。真剣にやっている選手だけに神様がプレーのヒントをくれると僕は思っています。だからこそ、止める、蹴る、運ぶという練習を真剣に繰り返してほしいんです。

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