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「今夏で結果を出したかった」、旭川実業に立ちはだかったベスト16の壁

2015.08.05

文・写真=安藤隆人

 あと一歩届かなかった。北海道第1代表の旭川実業のインターハイは3試合で幕を閉じた。

「◯◯の夏の暑さは北海道のチームとって不利」

 インターハイにおいて、北海道のチームは長くこのフレーズを言われてきた。これに対し、旭川実業の富居徹雄監督はこう口にする。

「いつまでもそんなことを言われていては、北海道のレベルは上がらない」

 以前、北海道は室蘭大谷(現・北海道大谷室蘭)が選手権準優勝1回(1978年度)、インターハイ準優勝2回(1981年、1985年)を果たすなど、全国トップレベルの実力を有していた。しかし、ここ数年はなかなか上位に行けず、北海道勢は低迷期を迎えていた。

「北海道のチームは夏に弱い」

 この言葉も当時、当然言われる事はなかっただけに、富居監督はこの状況を「何とかしたい」と考える北海道の指導者の一人であった。

「気候の問題だけでなく、北海道の中では崩せても、全国では崩せなかったり、ミスにならなかったものがミスになったりする。春先から夏までに、積極的に関東や東海などに遠征に出て、暑い中や全国レベルのチームと戦って、成長をしていかないといけない」

 こうした富居監督の情熱が、積極的な道外遠征と全国を意識した普段のトレーニングで浸透して行き、2012年度には北海道の高校勢で唯一、高円宮杯プレミアリーグイーストに参戦。同年度の選手権ではベスト16に進出。そこから2年は全国から遠ざかっていたが、3年ぶりのインターハイとなった今回、初戦で奈良育英を4-0で圧倒すると、2回戦では大阪桐蔭を0-0からのPK勝利。ベスト16に駒を進めた。

 広島皆実との3回戦でも、前半は182センチの大型ボランチ・樋口岳志、DF田村匠海とDF松井煕のセンターバックコンビが軸となり、スムーズなスライドとチャレンジアンドカバーを駆使して、連動した守備を披露。チャンスらしいチャンスを与えなかった。

「前半は狙い通りだった。リズムも良かったし、後半仕掛けようと思ったが…」と富居監督が唇をかんだように、56分に一瞬の隙を突かれてしまった。右サイドを突破したFW藤井敦仁のセンタリングを、途中出場のMF片岡永典が左足で合わせ、広島皆実が先制点を叩き出した。

 その後、旭川実業が猛攻を見せる。59分にMF伊川拓の左からのクロスに、ファーサイドで184センチのFW荒川勇気がスライディングで合わせるが、僅かに外。69分にはDF河邊拓己のロングスローからのこぼれ球を、樋口が右足でシュートを放つも右ポストを直撃。後半アディショナルタイムにはFKから途中出場のMF小田匠がコースを突いたヘッドを放つが、これはGKのファインセーブに阻まれ、タイムアップ。後半で相手に許した唯一のシュートを決められ、0-1の敗戦。ベスト16の壁を破る事はできなかった。

「全国で勝てるチームを作ってきた自負がある。でも、やっぱりあそこで決めてくる広島皆実はさすがでした。正直、この夏で結果を出したかった…」

 富居監督は無念の表情を浮かべたが、70分間全体を見ると、旭川実業の意図がはまり、リズムを作る事ができていた。富居監督自身もその手応えがあったからこその表情だった。

 ベスト16で終わってしまったが、「夏でも戦える」を印象づけたことはできた。だからこそ、これからが重要になる。夏でも戦えるチームだからこそ、冬にもっと強くなる。これを実証する彼らの戦いが、今幕を開けたと言って良い。

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