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優勝経験校・富山第一に完封勝利 東海大仰星がベスト8進出で見せた“したたかさ”

2017.01.04

東海大仰星は富山第一に勝利し、ベスト8進出を果たした [写真]=小林浩一

取材・文=篠幸彦(提供:ストライカーデラックス編集部)

 開始9分という早い時間帯からゲームは動いた。右サイドから東海大仰星の松井修二がクロスボールを入れると、見野龍太郎がペナルティーエリア中央でシュート。ポストに当たったこぼれ球に新保隼人が素早く反応してゴールに叩き込んだ。そこからは互いにセカンドボールを狙った蹴り合いになり、一進一退の展開となった。そして後半26分、松山樹生が得たPKで松井が追加点を奪い、東海大仰星が2-0でベスト8進出を果たした。

「何ですかね。なかなか難しい」

 優勝経験校の富山第一を2-0というスコアで下した東海大仰星の中務雅之監督は、勝因を聞かれると思わずそうこぼすほど厳しい戦いだった。80分間、ほとんどの時間帯で互いにロングボールを蹴り合い、バトルし続けた。タイトなスケジュールで行われる3回戦では、終盤で足が止まるチームも珍しくない中で、両校は足を止めることなくハードにぶつかり合った。

「真っ向勝負で挑戦する姿勢を崩さなかったことが勝因だったと思う」(東海大仰星・中務監督)。その気持ちの入った姿勢はハイプレスという形で相手に襲いかかり、「こぼれ球を拾ってこっちが優位な展開というのを考えていたが、なかなか拾えなかった」(富山第一・大塚一朗監督)と、富山第一に最後まで思うようなリズムでプレーさせなかった。

 そうした激しい展開の中で目立ったのはロングスローの多用だ。近年は多くのチームがロングスローから決定機、あるいはあわよくばという事故を狙うが、両校のペナルティーエリアの危険なゾーンにボールを供給し続ける姿はまるで映し鏡のようだった。ただ、そこは互いに警戒しているところで、ロングスローに対する集中力を欠くことはなかった。

 しかし、先制点は違った形から訪れる。「ロングスローという武器をチラつかせながらゴールを奪いにいけるか。ストロングの部分を出し続けても難しくなる」(東海大仰星・中務監督)。相手が当然のように警戒してくるならば、選手は状況を見ながら二の矢、三の矢を打つ必要がある。これまでほとんどの場面でロングスローを選択してきたが、先制の場面では手前に素早く投げ、松井がグラウンダーのクロスを見野龍太郎に送り込んだ。その流れで放ったシュートのこぼれ球が先制点に繋がった。

「ロングスローは相手への脅威になると思う。ロングスローを使うふりをして手前の選手を使ったり、バリエーションを増やせばその脅威はもっと増えるはず」と、右サイドバックの大東史明は試合後に語った。武器を時としておとりに使うしたたかさも東海大仰星がベスト8に進出できた要因の一つだろう。

(試合後コメント)

東海大仰星
中務雅之監督
全国大会を熟知している富山第一に対して、選手たちは真っ向勝負で挑戦できた。その姿勢を崩さなかったことが勝因だと思う。早い時間に先制点が取れることにこしたことはない。いい形でゴールを奪えたと思う。(準々決勝で対戦する)東福岡は高校サッカー界においてトップを走るチーム。個人の力、組織の力共に群を抜いている。その相手にいい戦いができるように、いい準備をしたい。

2番 大東史明
富山第一は色んなことが徹底されていて抜け目のないチームだったので難しい試合だった。次はタレントが多い東福岡。プロに行く選手が何人もいるので難しい試合にはなると思うが、全員が一つになってそれぞれの役割を徹底すればどこが相手でも勝てると思う。

6番 面矢行斗
東福岡は前回王者でかなり力のあるチーム。でもそこで引かずに前からいきたい。

9番 新保隼人
優勝経験校に勝てたことは自信になる。次の試合にも繋げていきたい。セカンドボールは自分でも意識していた。チームのみんなが体を張ってくれてボールがこぼれてきたので、押し込んでやろうと思っていた。

1番 宮本一郎
(久保佳哉のシュートを止めたシーンは)結構よかったですね。どこに来ても反応できるように準備していました。先輩はめっちゃやさしいので、同期くらいのノリでやっています。

10番 松井修二
前半は1-0で終わりましたけど、富山第一もすごく力のあるチームなので後半は前に前に来ると思っていました。そこで引いてしまうと失点してしまうので、引かずに得点を狙いにいこうと心がけて挑みました。そこは僕らも自信があるので引かずにドンドン前に行った結果が2点目につながったのかなと思います。やっぱり松山樹生が出てくることによって攻撃の形は変わりますし、さらに前に対する意識も変わるので、それが得点につながったと思います。

富山第一
大塚一朗監督
2年生を入れてもっと足元へのボールを入れたり、ドリブルで仕掛けたりとやったがシュートまでの精度が足りなかった。先制点が取れていればもっとボールを繋いだりという余裕も生まれたと思うが、先手を取られてしまったので焦りがあった。ただ、長いボールを入れろといったのは僕の指示。技術のない3年生が一生懸命走り回ってやってくれた姿を技術のある2年生がしっかりと後を受け継いで、もっと見習って走れるようになってもらいたい。3年生にはよくやったと言ってやりたい。2年生にはさらに上を目指して欲しいと思う。

10番 久保佳哉
長いボールを蹴ってきて、体も強くて、自分たちが苦手としているチームでやりづらかった。チャンスもあまりなく、いいように試合を運べなかった。修正できず、うまくいかないまま時間が過ぎていってしまった。こういうチームも全国にはいるんだということを2年生には繋げてもらいたい。

9番 本村比呂
相手は荒いと聞いていたので、先に体を入れてファウルをもらえればいいなと思っていたんですけど、あまりうまくいかなかった。とりあえず先に相手に体をぶつけて自分のスペースを作ろうと思いました。サイドでは作れていましたが、中央ではあまりタメを作ることができなくて自分たちのリズムにできなくて、自分の責任だなと思っています。相手は結構後ろから来ていましたが、審判もしっかりと見ていたと思うので、自分の体の弱さ(が原因)かなと思います。昨日は相手が(ボールを)回してくれて奪った後にスキがあったので、うまく(ディフェンス)ラインを抜け出せることができたんですが、今日は(ロングボールの)蹴り合いで警戒したサイドバックは高い位置を取ってこなかったので、自分の(狙う)裏のスペースがあまりありませんでした。自分はしたたかに戦おうとずっと思っていましたが、試合中にアイデアがあまり浮かばなくて80分間ずっと一定になってしまい、課題が残った試合になったと思っています。

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