2017.01.01

「つなぐ」旭川実と「縦に速い」米子北、真逆のスタイルは決定力で決着

2得点を挙げた米子北の伊藤龍生 [写真]=大澤智子
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取材・文=上岡真里江(提供:ストライカーデラックス編集部)

 試合開始早々から、一方的なゲームとなった。前半4分に米子北の山室昂輝が伊藤龍生の右からのクロスに合わせ早くも先制すると、同8分には伊藤がCKから得意の頭で追加点。さらに前半アディショナルタイムには、再びエース伊藤が自画自賛の右足シュートで3点目を奪い、試合を決定づけた。それでも、逆に、後半は旭川実がスタイルとする「つなぎ」のサッカーを披露し、相手を圧倒。だが、米子北の鉄壁のゴール前を崩しきれず、無念の無得点敗退となった。

「パスサッカーは、前に大きく蹴ってくるサッカーが苦手」。サッカー界でよく言われている“あるある”を、旭川実は覆すことはできなかった。

 試合は、前半と後半とでまるで違うものとなった。前半は、米子北の勢いと決定力が大いに発揮される展開に。立ち上がりから「ボールを持ったら素早く前に運び、攻め切る」という自分たちのスタイルを徹底すると、開始4分にリードを奪った。「1点目をアシストしたことで、気持ちが変わった」と、山室昂輝のゴールをお膳立てしたエース伊藤龍生が、全国大会の緊張感から解き放たれると、さらにエンジンがかかってくる。わずか4分後に「頭では誰にも負けない」と、ヘディングで追加点を奪い、チームを優位に導いた。さらに大きかったのが、前半アディショナルタイムでの3点目だった。「みんなからも、あの3点目があったから勝てたと言ってもらえた」と、伊藤本人も喜んだ決勝弾は、前日に「かわし切らず、抜き切らずのところでシュートを打つ」練習をした賜物だった。それでも、サッカーは90分間のスポーツ。前半だけで3-0と、米子北の圧勝で終わるのかと思われたが、後半は全く違った展開となった。

「甘さが出た」と、伊藤が自ら猛省したが、ハットトリックを狙う気持ちはありながらも、「運動量が明らかに落ちた」のは、チーム全体にも通じる課題だったかもしれない。加えて、旭川実が、米子北の徹底した精度高い「縦に速いサッカー」に慣れてきた部分もあったに違いない。後半からは自分たちのリズムでボールが回せるようになり、相手陣内でのプレー多かった。だが、「つなぐことに意識が行きすぎて、シュートの意識が足りなかった」と松井熙。せっかく押し込んでいながらも、シュート数がわずか3本(後半)では、相手DFに脅威は与えられなかった。一方で、シュート数でいえば、加算されなかったのは、米子北のDF陣が、バイタルエリアに運ばれつつも、「シュート」になる前に体を張り、ブロックしていた部分が少なくなかったのもまた事実だ。

 米子北は、今大会は予選から未だ無失点が続いている。「ボランチから後ろの守備の選手が体を張ってくれてるからこその無失点」と、FW陣が讃えるように、チームの大量得点を支えているのは、何といっても鉄壁の守備であることが、この試合でも改めて証明された。その守備を突破できず敗れた松井は、「いつもどおり、シュートの意識を強く持っていれば、点は奪えたはず。ボールを収めようとしすぎた」と、“つなぐ”サッカーをスタイルとするチームが陥りがちの問題点を猛省した。指揮官も、「この(つなぐ)サッカーを続けて、今後勝っていくためには、やはり今日のような相手と実戦の中で力をつけていくしかない。とはいえ、米子北ほど徹底して“縦に速いサッカー”をするチームが、北海道にはない。どの問題をどうクリアしていくか」と、スタイル貫徹の難しさに直面する。

 数年前に賞賛された「パスサッカー」から、近年は、より勝利を優先させた「堅守速攻」が主流となりつつある。その中で、旭川実が見せた後半のパスサッカーは、非常に魅力的だった。だが、やはり、真に評価されるのは、勝ってからこそだろう。プロの世界を見ても、主流とされるスタイルが年々入れ替わり、日進月歩の中で、パスサッカーが最強とされる日も再び巡ってくるはず。そのときまでスタイルを貫き通し、「堅守速攻」に屈しないチーム作りが成されていることを是非とも期待したい。

(試合後コメント)

米子北
中村真吾監督
最初から走って、後半に点が取れればというゲームをイメージしていたのですが、前半早い時間から点が入りました。ボランチを含めた中盤がセカンドボールをしっかりと拾ってくれたことが大きかったと思います。自分たちがやろうとしていたことが全部できたかといえば、まだまだな部分は少なくありません。

11番 伊藤龍生
1点目でアシストして、そこから僕の気持ちも変わってきて、シュートへの気持ちも高まってきました。やはり、全国大会ということで、緊張した部分は多かったです。自分の1点目は、ごっつぁんゴールですが、2点目は、昨日の練習で「かわし切らず、抜き切らずシュートを打つ」というのを練習した結果。良いタイミングで打てました。みんなからも「あの3点目があったから勝てた」と言ってもらえたのでうれしかったです。それでも、2点を取ったところで、自分のなかで少し甘さが出てしまった。しっかりと3点を奪いに行けるようにならなければいけないと反省しています。

旭川実
富居徹雄監督
完敗でした。前半は、相手にラインを下げられたままでサッカーが終わった印象です。ラインを修正するのに時間がかかっている間に2点目、3点目を入れられてしまいました。相手は、思った以上に縦に速いサッカーに徹しているなと感じました。前半の終わりぐらいから少しずつゾーンもラインも上げていけた部分はあったのですが、その中で3点目の失点をしてしまいました。後半は、チャンスを何度か作れたのですが、もう少し、ゴールに近づく形を前半のうちに作らなければいけなかった。

10番 松井熙
いつものように、顔をしっかり出したりのプレーができなかった。もらう気がなかったのではなく、もらえなかったという感じでした。前半、失点した後にしっかりと点を取れていたりすれば、また違った結果だったと思います。後半、押し込む時間もありましたが、攻撃陣はみんな崩すほうに意識が行ってしまっていました。シュートの意識が少なくて、後半もシュートを打ったのが3本でした。もっと、いつもどおりシュートの意識を持っていれば、点が取れたと思います。3点を失うのはしょうがないこと。それよりも、その後に自分のところでチャンスが3本ぐらいあったので、決めきれなかったことに責任を感じます。この悔しさを次のステップで生かしていきたいと思います。

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