2016.05.26

明治大の守護神、服部一輝がFC東京アカデミーと札幌大谷高時代を回顧「僕の人生は成長と挫折の繰り返し」

サッカーキング編集部

 ドイツの英雄オリバー・カーンに憧れて、服部一輝はサッカーの道を歩み始めた。生まれ持った身体能力の高さを見いだされ、中学時代はJクラブの育成組織でプレー。しかし、ユースへの昇格は叶わず、高校時代は親元を遠く離れた北の大地で心身を鍛えた。進路に選んだ関東の名門、明治大学では挫折を経験しながらも3年時から定位置を奪取。主将として、守護神として、闘争心溢れるプレーでチームを最後方から支える。

インタビュー=平柳麻衣 写真=峯嵜俊太郎、平柳麻衣

目立とうと思って髪を金髪に染めて臨みました(笑)

――まず、サッカーを始めたきっかけを聞かせてください。
服部 小学2年生の時に日韓ワールドカップをテレビで見て、オリバー・カーン(元ドイツ代表)がすごくカッコ良くて、「カーンみたいになりたい」と思ったのがきっかけです。でも、チームに入ったのはカーンを見てから2年後で、それまでは学校の休み時間に友達とボールを蹴っていた程度でした。当時は空手、水泳、ピアノ、英会話、塾に通っていたのですごく忙しくて。2年くらい経った頃に水泳は最終試験までいって、空手は黒帯を取れて、と一区切りついたので、全部やめて小学校のサッカーチームに入りました。

――当時はどんなプレーヤーだったのですか?
服部 GKを志願していたのですが、足がとにかく速かったのでやらせてもらえず、サイドバックやセンターバックをやっていました。足元がうまくなかったので、シュートを打つよりもボールを追いかけて前に蹴る役に徹していました。

――中学からはFC東京U-15むさしに入りました。セレクションはGKとして受けたのですか?
服部 はい。複数のチームのセレクションを受けたのですが、当時は地域選抜にも選ばれたことがなく、全くの無名だったので、目立とうと思って髪を金髪に染めて臨みました(笑)。しかも、当時はロン毛だったので相当目立っていたと思います。FC東京は「今うまい選手よりも、運動神経がいい選手を取って3年かけて育てる」という方針だったので、僕の場合も「50メートル走が速かったから取った」と言われました。

――FC東京ではどれくらい試合に出られましたか?
服部 中1、中2の時は練習試合でもあまり使ってもらえず、3年生の最後の方でやっと少し出られました。中学時代は挫折の連続だったので、悔しい思い出しかないです。入った瞬間からレベルの高さを痛感して、「もう行きたくない」と親に言ったんですけど、「とりあえず1年間続けてみて、それでも無理だったら辞めてもいい」と言われました。でも、負けず嫌いだったので、辛くても「コンチクショー」と思いながら何とか3年間続けられました。

――当時の監督やコーチの言葉で、印象に残っているものはありますか?
服部 中学生ながらに挫折していた中、コーチやGKコーチが「お前は将来性を見こんで取ったのだから、今がダメでも徐々に成長して将来プロになればいいだけだよ」と言い続けてくれました。そのおかげで、「大事なのは今じゃない」と自分に言い聞かせて、辛い時期を乗り越えることができました。

――FC東京のアカデミーは技術の高いGKを何人も輩出しています。
服部 僕の1学年上のGKは谷(俊勲/現アルビレックス新潟シンガポール)君と下川(照平)君で、2人とも年代別の日本代表経験者でした。その2人は本当にレベルが高かったです。

――GKの練習に特徴はありましたか?
服部 浅野(寛文)GKコーチは、「中学で基礎が身につけば、高校や大学で違うスタッフに教わっても伸びていく」と言って、3年間とにかく基礎を徹底的に叩きこまれました。

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「明治だけは行かない」と思っていた

――その後、高校は札幌大谷高校へ進学しました。どういう経緯で行ったのですか?
服部 僕が中学1、2年の時にFC東京むさしのコーチをやっていた田部学さんが、札幌大谷でサッカー部を作りました。その1年後、僕がユースに昇格できなくて高校を選んでいた時に、田部監督が「1年目からお前を使うし、ここの方が成長できると思う」と熱心に誘ってくれたので、札幌に行こうと決めました。

――地元の東京から遠く離れることに不安や抵抗はなかったのですか?
服部 中学生の時は、ただプロになりたい一心だったので、全くなかったです。親も「やりたいことは何でもやれ」というタイプでしたし、小学生の頃にたくさんやっていた習い事も親に促されたのではなく、全部僕がやりたいと言ってやらせてもらったんです。だから、「札幌に行きたい」と言った時も「行っておいで」という感じでした。

――札幌大谷では寮生活だったのですか?
服部 札幌大谷は元々女子校で、僕が入る1年前から共学になったばかりで男子寮がなかったので、北海道大学の寮に入れてもらっていました。

――入学後、すぐに試合に出られたのですか?
服部 はい。Jクラブの育成組織にいたとはいえ、やっぱり高校生の方がうまいだろうと思って札幌大谷に行ったんですけど、1学年上の先輩は11人しかいないし、野球部からサッカー部に来たという選手もいたりして初心者が多く、レベルの低さに衝撃を受けました。僕らの代からは1学年に30人くらい入るようになったんですけど、中学でサブだった選手も結構多くて、正直、僕がフィールドプレーヤーをやった方がうまいんじゃないかと思うほどでした(苦笑)。

――それでも、3年時にはインターハイに出場しました。どのようにチームは急成長を遂げたのでしょうか?
服部 田部監督はすごく熱心で厳しくて、1、2年の時は基礎的な体力作りやメンタルの指導ばかりでした。まず、学校からグラウンドまで6キロくらい離れていたのですが、毎日往復走って移動していたので、最低でも毎日12キロは走るんです。それに加えて2部練習で走りこみをやったりしたので、メンタルは相当鍛えられました。少しずつレベルアップして、ボールを使ったトレーニングも採り入れるようになって、3年の時に初めて北海道大会に出場できました。

――それがインターハイ予選ですか?
服部 はい。それまでは札幌地区大会で敗退していたのですが、3年のインターハイ予選で初めて北海道大会に出て、その勢いのまま全国大会に進むことができました。北海道は2チームが全国大会に出られるのですが、準決勝で対戦した帯広北高校は、過去にベスト4止まりが多いチームだったので、初めて北海道大会に出た僕たちのことをナメていて、「やっと勝てる相手が(準決勝に)来た」と言っていました。でも、試合は延長戦まで戦って2-2。PK戦で自分が止めて勝てたので、すごく記憶に残っていますし、周りの人も「北海道に行って良かったね」と言ってくれたので、札幌大谷に入って良かったなと思えました。

――初めての全国大会はいかがでしたか?
服部 西武台高校と対戦して、終盤に立て続けに3点決められて負けました。途中までは五分五分だったと思うのですが、やっぱり伝統校は最後の最後に力が出るんだなと感じました。

――高校時代は、国体の北海道選抜に選出されています。
服部 早生まれだったので、高2の時に1学年下の代の大会に出ました。それまで選抜に入ったことが一度もなかったので、すごくうれしかったです。でも、1回戦で広島に0-4で負けて終わってしまい、僕自身は試合に出られませんでした。まだ21年しか生きていないですけど、僕の人生を振り返ると、成長と挫折の繰り返しなんです。インターハイに出たけど1回戦で敗退、選抜に選ばれたけど試合に出られないまま終了。だから、一歩ずつ進んでいくことが大事だなと思います。

――高校時代に一番成長したと思う部分は?
服部 中3の時はFC東京のアカデミーに入っていたとはいえ全然うまくなかったので、サッカーにおいてはシュートストップやコーチングなど、全部が伸びたと思います。身長も中学卒業の時は167センチしかなかったですけど、高校で大きくなりました。あと、親元を離れたことで人間的に成長できたことは大きな収穫だったと思います。

――高校時代にコンサドーレ札幌の練習に参加したことがあるそうですね。
服部 はい。経緯などの詳しい話は聞いていないですが、1週間だけ参加しました。

――プロのレベルはどのように感じましたか?
服部 正直なことを言うと、僕は良いアピールができたと思いました。もちろんプロの選手はみんなうまかったですけど、高校生らしい“泥臭さ”の部分では勝てたなと。でも、やっぱり泥臭いプレーだけではプロにはなれません。もちろん高卒でプロになれたら良かったですけど、元々大学志望も強かったので、最後にクラブの方から「大学を卒業する時に縁があれば」という言葉をいただいて終わりました。

――高校卒業後は東京に戻り、明治大に進学しました。
服部 インターハイが終わった後にいくつかの大学の練習に参加したのですが、実は「明治だけは行かない」と思っていたんです。練習がすごく厳しくて、選手間でお互いのプレーを指摘しあっている雰囲気が僕には合わないなと感じたので。それに、教員免許を取りたくて高校時代は勉強もがんばっていたので、他の大学が第一志望で、明治は一般入試を受けるとしても併願だなと考えていました。だから、明治のセレクションには申しこまなかったのですが、スタッフから電話がかかってきて、「何で受けないの?」と言われて受けに行ったら、合格したので入学を決めました。

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“一体感”を持つことに重きを置いて取り組んでいきたい

――大学でレギュラーに定着したのは、3年生になってからでした。それまではどのように過ごしていたのですか?
服部 僕が1、2年生の時は(三浦)龍輝(現AC長野パルセイロ)さんが絶対的な守護神の地位を築いていたので、絶対に試合に出られないと思っていました。もちろん練習は真面目に取り組んでいましたけど、今振り返ると、やっぱり体への気遣いは全然できていなかったし、努力も足りなかったと思います。龍輝さんが卒業してから僕と同学年の八谷(惇希)でポジションを争うようになり、「これじゃダメだ。プロになるためには絶対に試合に出なきゃいけない」と思って心を入れ替えました。気づくのが遅すぎたかもしれませんが、今では練習以外の時間もサッカーや筋トレに当てています。

――試合に出始めたのは、昨シーズンのリーグ戦が開幕してしばらく経ってからでしたね。
服部 3月の終わり頃から5月くらいまではけがで離脱していたのですが、チームの練習に復帰した1週間後に試合に使ってもらいました。ちょうどチームの調子が良くなかった時で、自分としては久々にサッカーができることで気分も上がっていた中、アミノバイタルカップ(「アミノバイタル」カップ2015 第4回関東大学サッカートーナメント大会兼総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント関東予選)で優勝できたりと結果もついてきたので、すごくタイミングが良かったなと思います。

――今シーズンは開幕スタメンの座をつかみましたが、正GKとしての自信と危機感、どちらの方が強いですか?
服部 他の選手もレベルが高いのでもちろん危機感はありますが、自信も持っていますし、今シーズンは主将に就任したので、試合に出ていないと威厳が保てないと思っています。ずっと出続けられるようにがんばりたいです。

――ご自身のプレーの強みはどこだと思いますか?
服部 シュートストップには自信がありますし、コーチングで周りの選手を動かすことに関しては秀でていると思います。

――昨シーズンは公式戦でPKを止めていますが、PK戦は得意なのですか?
服部 試合の中でのシュートストップとPKを止めることはイコールではないのですが、PK戦は結構場数を踏んでいるので得意な方だと思います。大学に入ってからは4回PK戦があって3勝1敗なので、悪くない成績かなと。

――シュートストップが強みになった要因は何だと思いますか?
服部 中学時代に叩きこまれた基礎と、その後の応用があったからだと思っているんですけど、周りの人には「身体能力でやっている」と言われることがあります。実際、身体能力に助けられている部分もありますし、まだまだ努力が必要だなと思います。

――今シーズン、キャプテンに就任した経緯を教えてください。
服部 昨年の夏頃から来季に向けての話し合いをしていて、10月頃にキャプテンを決める投票をしたところ、僕と(小出)悠太が半々くらい票を集めました。僕は下級生にガツッと言えるタイプだけど試合の経験値が少ない、悠太は1年生の時から試合に出ているから経験値は高いけど性格がめちゃめちゃ優しいから下級生との距離が近すぎてしまう、という意見が挙がったのですが、2人で話し合ったり、周りの選手に意見を求めたりしながら、最終的に「自分がやります」と言いました。

――和泉竜司(現名古屋グランパス)選手から主将を引き継ぎましたが、何かアドバイスはもらいましたか?
服部 「気負いすぎるな」とは言われましたけど、竜司君はプレーでチームを引っ張るタイプで、僕はどちらかというと積極的にコミュニケーションを取るタイプなので、主将としてのタイプが違うかなと思います。

――名門校のキャプテンを務めることに対して、プレッシャーは感じますか?
服部 ないと言ったら嘘になりますけど、あまり意識しないようにしています。過去の代はキャプテンに頼りがちなところがあったんですけど、僕たちの代はみんなすごく仲が良くて、サポートしてくれているので、自分一人で背負いこむことはないです。

――どんなふうにチームを引っ張っていきたいですか?
服部 これまでの大学3年間を振り返った時に、どういう時が一番チームが強かったかと考えると、サブやバックアップの選手、マネージャー、応援が一つになっている時でした。だから、今年は“一体感”を持つことに重きを置いて取り組んでいきたいです。また、僕自身がサブもバックアップも応援も経験しているので、それぞれの立場を理解できているつもりです。その経験を活かして、みんなに声をかけるようにしています。

――最後に、今年の目標を聞かせてください。
服部 もちろん3冠です。そして自分がプロに行くこと。でも、自分のことは置いておいて、まずはチームのことだけを考えてやっていきます。

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