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早慶戦で復帰を果たした来季岡山加入内定の慶應義塾大DF久保飛翔「チームのために何か残したい」/関東大学リーグ

2015.05.10

今季初出場を果たした慶應大DF久保飛翔 [写真]=平柳麻衣

文=平柳麻衣

 9日、JR東日本カップ2015第89回関東大学サッカーリーグ戦1部リーグ第8節、味の素フィールド西が丘での第1試合で早稲田大学と慶應義塾大学が対戦。今季初めての早慶戦で慶應義塾大の主将、DF久保飛翔が今季初出場を果たしたが、試合は14分に先制点を許した慶應義塾大が0-1で敗れた。

「リーグ戦の1試合ですけど、僕としては早慶戦という特別な試合を落としたという気持ちのほうが強い。僕は今まで早稲田に1回しか勝ったことがなくて、やっぱり今年こそは3勝したいという気持ちが強かったし、この早慶戦には絶対出たくて(復帰するために)照準を合わせてきたので」。久保は悔しい気持ちを素直に表した。

 久保は今季、開幕直前の練習試合で左足首を捻挫し、やむなく戦列を離れた。不在の間に、チームは7節までで3勝3分け1敗と好調をキープ。久保はプレーでチームに貢献できないもどかしさを抱えながらも、スタッフとして試合に帯同し、献身的なサポートで主将としての任務を全うしてきた。「サッカー以外のところでもみんなの模範となって、試合に出られなくてもチームのために行動するということはずっと続けてきている。(試合に出られない)焦りはあまりないけど、やっぱり悔しい気持ちはある。主将なのでより一層、不甲斐なさも感じている」

 当初、久保は第6節での復帰に向け調整を進めていたが、試合2日前の練習中にボールが顎に当たるアクシデントにより、軽い脳震とうを起こしてしまった。第6節の勝利をピッチ脇から見届けた後、久保は「なんで(ボールが)当たっちゃうかなと。お祓いに行こうかと思った」と苦笑いしたが、「僕は週末の試合(第8節)に合わせて準備をします。ほんとに楽しみですね。わくわくしています」と期待に胸を膨らませ、満を持して早慶戦を迎えた。

 ところが、待ちわびていた復帰戦は、思わぬ展開へと進む。立ち上がりから前に圧力を掛ける早稲田大の勢いを止めることができず、早々に失点。14分、最終ラインの裏に出されたボールへの対応が遅れると、飛び出した早稲田大MF堀田稜に決められた。「立ち上がりから後手を踏んでしまい、前半のうちに自分たちで修正することができなかった」と久保は振り返る。ハーフタイムに修正を図った慶應義塾大は、後半開始直後から積極的なプレーで相手ゴールに迫ったが、1点が遠く、敗北を喫した。

 慶應義塾大の須田芳正監督は「試合の入り方が悪く、前半で全てが決まってしまった」と厳しい表情で話した。久保は、チームの心理的な状況も課題に挙げている。「試合に臨むに当たって、早稲田のほうが気持ちが入っていたかなと。何が悪いのかはわかっていたけど、流れを変えることができなかったのは僕の責任だと思う。やっぱり前(昨季の対戦)に勝っていたし、相手は最下位ということで、僕たちの中で驕りがあったのだと思う」

 久保が早期復帰を待ち望んでいた大きな理由がもう一つある。リーグ開幕前、久保は来季のファジアーノ岡山加入を決断した。「岡山はJ1を狙えるチーム。自分もチームと一緒にステップアップしていきたいと思ったし、たとえJ3に落ちるようなことがあってもこのチームでやりたいと思った。そういう気持ちがないと自分自身伸びないと思うし、サッカーをやっていて充実感もない」

 シーズン前という早い時期で進路を固めたのは、最後の大学リーグに集中したいという意志があった。「岡山のサッカーに触れたことで大きな刺激を得られて、今のままじゃ足りないと思ったし、自分がもっともっと成長できると実感できた。自分の役割は無限大にあると思うので、チームのために何か残せたらいいなと思う」

 早慶戦を終え、久保は「主将として何かチームに貢献できたかというと何もできなくて、不甲斐ない気持ちでいっぱい」と落胆の表情を浮かべながらも、前を向いた。「優勝を目指す上でこの1敗は痛いけど、チャンスはまだある。まずは連敗しないことが大事。初心を思い出して一からまたやっていきたい」。長いリーグ戦はまだまだ続く。チームに悲願のタイトルをもたらすため、そして来季プロの世界で飛翔するため。常に周囲を気遣い、努力を惜しまない久保は、全力で突き進んでいく。

By 平柳麻衣

静岡を拠点に活動するフリーライター。清水エスパルスを中心に、高校・大学サッカーまで幅広く取材。

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