2014.12.27

選手権で見つけるオンリーワン…“ドリブラー王国”聖和学園、個性の強い日大藤沢

佐々木澪
1回戦で対戦する聖和学園の佐々木澪主将(左)と秀岳館の大岩亮太主将(右) [写真]=瀬藤尚美

 強いチームが見たいのならば、J1を観に行けばいい。何ならばカンプ・ノウやサンチャゴ・ベルナベウまで飛べばいい。しかし高校サッカーには“ナンバーワン”でなく“オンリーワン”の楽しみがある。キャラの立った…、いや立ちすぎたチームとプレイヤーを楽しめるのが選手権の魅力だ。

 この1年間取材した中で、小学生から大人までを含めて、一番“キャラが立っていた”チームは聖和学園(宮城県代表)だ。聖和はピッチ内の11人のうち、GKを除く10名がドリブラーという典型的な“ドリブラー王国”。ドリブルと言えば野洲(滋賀)を思い浮かべる方が多いと思うけれど、聖和は一時の野洲以上にドリブルの活用度が高いかもしれない。

 聖和のサッカーはドリブル以外にも特徴があって、その一つはパススピードの“遅さ”だ。しかもパスの狙いが足元に偏っている。サッカーの“常識”と照らし合わせれば、これはあまり褒められた現象でない。守備側のアプローチを真っ向から受けてしまうからである。

 パスで相手を崩そうとするならば、ずらして受けてパスを出すという連動が必要になる。しかし聖和はパス&ムーブでなく、ドリブルに強みがある。実は相手と1対1の形になり、DFがドリブラーに寄ってくれている状態こそが“チャンス”だ。これは聖和のサッカーを見て初めて気付いた。

 ドリブルが上手いということは、ボールキープも上手いということ。聖和は細身の選手が多く、身体の強さで相手を押し返すようなタイプはいない。でも彼らは重心移動やボールコントロールを駆使して“相手の届かないところにボールを置く”作業が上手い。相手と1対1になっても、ボールを奪われない確信があるし、上手くやれば抜けるという自信もある。パスは相手を引きはがすためのモノでなく、相手を食いつかせる“撒き餌”のようなモノ…。それこそが世間の“非常識”にして、聖和スタイルの“常識”だ。

 もちろんパスが遅ければ、ゆっくり丁寧にやれるわけだから、プレー精度も上げやすい。置きたいところにピタッとおいて、相手を観察しながら仕掛けに移れる。そこを上回るプレッシングとボール奪取力があれば、聖和を潰せるだろう。しかし並みの高校生チームでは寄せても取り切れないのが聖和で、そうすると自陣に引いてスペースを消すしか手がなくなる。実際に今年の聖和は、なかなかのレベルにある。プリンスリーグ東北では4位に入り、宮城県大会も危なげなく突破した。直接対決こそなかったが、高校総体8強の仙台育英を上回った。

 そんな聖和の中で、少し異質の要素を持つのがFW坂本和雅(3年生)。プリンスリーグ東北では18試合で25得点を挙げ、得点王に輝いた左利きのストライカーだ。坂本はドリブルの上手さだけを見ればチームの中でも平均レベルだろう。しかし彼はラストパスに反応して裏を取れるタイプで、相手が引いていれば遠目からミドルを打ち込める。もう一つの強みはキックフェイントの鋭さで、「打つ→打たない→打つ」という加減速からズドンと打ち込んでくる。CBとSBの間を取って、ゴールの右から中に流れてくるのが彼の形だ。

 坂本はFC浦和時代に、全日本少年サッカーの優勝メンバーに入っていながら、スタメンに絡む選手ではなかった。尾間木中時代にも全国中学生大会へ出場しているようだが、少なくとも私の耳に入ってくる選手ではなかった。しかし聖和学園で彼の天性が花開いた。

 キャラの立った“選手”にスポットを当てるなら、日大藤沢(神奈川県代表)のヘディング王・小野寺健也(2年生)だろう。CBを務めつつ、神奈川県大会は5試合で6得点を挙げ、チームの“稼ぎ頭”になった。得点はすべてがセットプレーで、6点中5点が頭(もう1点は肩)というから、そのヘディングの威力がよく分かる。セットプレーのキッカーを務めるMF西尾隼秀(2年)のキック精度と、二人の連係もずば抜けていた。

 小野寺には185センチという高さこそあるが、「立ち幅跳びは結構苦手。垂直跳びも普通」(本人談)というから、身体のバネで圧倒するタイプではない。しかし彼は「人がいて、ボールがあるとタイミングがつかみやすい」という“合わせる感覚”を持っている。加えて自陣からのクリアを見ると、ヘディングの速さと飛距離が抜群。肩の高さと胸の厚さ、首の太さといったフィジカル的な要素もあり、小野寺は空中姿勢が安定し、ヘディングが上方向というより前方向に強い。その帰結が無敵のクリアであり、セットプレーでの決定力だろう。

 日大藤沢は選手層が厚く、「県大会の初戦と決勝のメンバーが4、5人違う」(佐藤輝勝監督)というチームだから、なかなかスタメン11名が読めない。とはいえ小野寺や西尾の他にも運動量豊富な今井裕太、ターゲットマン前田マイケル純、ドリブラー田場ディエゴなど“キャラが立った”才能が豊富に揃っている。そして個性の持ち味を消さずに生かしているチームだ。3年連続で県代表だった桐光学園、総体出場校・向上を破って激戦区・神奈川を勝ち抜いたのだから実力的にも間違いない。となれば日大藤沢は東福岡、流通経済大柏、京都橘などに次ぐ“隠れ優勝候補”ではないだろうか?

文=大島和人

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