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【インハイ・ピックアップ選手】鹿実のちょっとだけ持ってる男、MF井上黎生人

同点ゴールを挙げた鹿児島実業のMF井上黎生人(右から4人目) [写真]=川端暁彦

「緊張していました。周りも、僕自身も」

 試合後、ボランチとして攻守に奮戦した鹿児島実業の3年生MF井上黎生人(りきと)はそう言って苦笑いを浮かべていた。

 伝統ある鹿児島実業高校サッカー部だが、近年は鹿児島城西高校、神村学園高校といったライバル校に代表校の座を奪われてばかりで、「全国」という言葉から縁遠くなっていた。そうした影響はあったのだろう。「みんな全国は初めてだったので」とFW前田翔吾が首をひねったように、井上いわく「気負いすぎた」イレブンは序盤から空回り。盛岡商業高校を相手にいきなり2失点を食らう最悪のスタートを切ってしまった。

 1点を返して迎えた66分、そんなチームを救ったのは「誰よりも努力して積み上げている」と森下和哉監督が評するボランチ、井上だった。ハイボールに191cmの長身FW前田が競り勝つと、そこに飛び込んで行く。ダイレクトで思い切り良く放ったシュートは見事にゴールネットを揺らし、試合は振り出しに戻った。優勝した九州高校サッカー新人大会でも決勝点を奪っている「ちょっとだけ持ってる」男、井上がチームを救うこととなった。

 前田の派手さに目を奪われがちだが、今年の鹿児島実を語る上でこの選手は外せない。スペイン人の祖母を持つクオーターで、森下監督は井上について「筋肉の質がまるで違う」と語る。天性の当たりの強さは特筆モノで、中盤のフィルター役として機能。井上が、「自信がある」と語る持久性の高さを活かして最後まで広範囲をカバーできるのも強みだ。この日は緊張からパスがブレるシーンも目立ったが、尻上がりに調子を取り戻して存在感を増していった。

 すでに森下監督が「いくつかのJクラブから興味を示してもらっている」と明らかにしているだけに、井上にとって今大会は自身の価値を証明し、進路を切り開くための場ともなる。「プロになるためにも、結果を出していきたい」。島根県で生まれ、滋賀県のクラブチームで技を磨き、遠く鹿児島へ自分を鍛える場を求めた男は、この山梨の地で花開くのだろうか。

(文=川端暁彦)

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