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大学1年でトライアウトからモンテネグロリーグへ 本田の後輩・植田裕史の挑戦

2014.02.06

本連載の著者である安藤隆人氏は、元銀行員という異色の経歴を持つサッカージャーナリスト。今では、高校サッカーを中心に日本列島、世界各国を放浪し精力的な取材を行っている。巷ではユース教授と呼ばれる。本連載では安藤氏の“アンダー世代”のコラムをお届けする。

文=安藤隆人

 先日、サッカーキングのサイトを何気なく見ていると、ある記事に目が行った。

『植田裕史、豊嶋邑作の2選手がモンテネグロ1部リーグへ移籍』

 「植田裕史……もしかして星稜の……」と思いながら記事を読むと、今年1月にトライアウトに参加し、監督や首脳陣に能力を認められ、1年半の契約を勝ち取ったという。クラブ名はロブチェン。今季のモンテネグロリーグで3位の好位置につけており、来季のヨーロッパリーグ出場圏内にある強豪クラブ。このクラブに2人の日本人の若者が加入にいたったというのだ。

 植田は京都U-15から石川県にある星稜に進学し、高校2年の時から攻守の要として、安定感あふれるプレーを披露。危機察知能力が高く、相手の攻撃の芽を巧みに摘み取る守備と、パスセンスは当時から光っていた。

 星稜では冷静かつ献身的なプレーを磨き、高校3年になると選手権ベスト4進出に大きく貢献。国立では優勝した鵬翔にPK負けを喫したが、彼のテンポの良い配球は、チームにリズムとダイナミックさを生み出していた。

 卒業後は「大学でしっかりとプレーを磨いて、プロになりたい」と高いモチベーションを持って専修大に進み、彼のこれからのさらなる成長を楽しみにしていたが、去年の関東大学リーグで彼を見ることはできなかった。

 もちろん1年生ではあったし、長澤和輝(現在はケルン所属)、仲川輝人ら錚々たる上級生たちが顔を揃えるレギュラー陣に割って入るのは至難の業であった。それだけに今年に期待をしていた。

 そんな時にこのニュースが飛び込んできた。正直、驚いてすぐに星稜高校サッカー部の河崎護監督に話を聞いたが「大学は休学をして、チャレンジを決断したようだ」という答えが返ってきた。

 どうやら彼は指定校推薦で専修大に入ったため、休学してこのチャレンジが出来たようだ。大学でレギュラー獲得に向け、4年間努力するのもいいが、こういう形で世界に飛び出して行くのも、また重要なことだ。もちろんリスクは大きいが、自分の人生は一度きり。環境を劇的に変えてでも、プロになりたいという夢に向かって走り出す勇気も必要だ。

 これからはすべてが自己責任の世界となるだけに、こうしたチャレンジを決断するのは、相当な労力と苦悩があっただろう。だが、彼は決断をした。

 ぜひ植田にはこのチャレンジをプラスのものにしてほしい。自分で選び、責任を持って決断をし、努力をして勝ち取る。この過程がどれほど人として、選手として成長をさせるか。

「日本にいるだけじゃ分からないこともたくさんある。若いうちにこっちに来てチャレンジするのは重要なこと。俺はもっと早くこっちに来たかった」

 これは植田と同じ星稜高校出身の大先輩である本田圭佑の言葉だ。モンテネグロリーグは、決してメジャーではないが、しっかりと成長する姿をもって、この大先輩の言葉を実証していってほしいと切に願う。

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