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イラクと開いた実力差 日本のアンダー世代で最も重要なことは“危機感の共有”

2014.01.28

(Photo by Francois Nel/Getty Images)

本連載の著書である安藤隆人氏は、元銀行員という異色の経歴を持つサッカージャーナリスト。今では、高校サッカーを中心に日本列島、世界各国を放浪し精力的な取材を行っている。巷ではユース教授と呼ばれる。本連載では安藤氏の“アンダー世代”のコラムをお届けする。

文=安藤隆人

 オマーンで開催されたAFCU-22選手権。リオ五輪を目指すべく立ち上がった手倉森誠監督率いるU-21日本代表にとって今大会は、五輪予選のシミュレーションとして、重要な大会だった。

 なぜならば、これまで五輪予選はホーム&アウェー方式で、一次予選と最終予選を行ってきたが、今回から予選方式はU-17、U-20のワールドカップと同じ、セントラル開催となる。つまり来年のこの大会の予選(AFC U-22選手権予選)と、再来年1月のこの大会が、リオ五輪のアジア最終予選となるため、日本はここで3位以内に入らないと、リオ五輪に出場できない。

 今大会日本は準々決勝でイラクに敗れ、優勝の栄冠はそのイラクの頭上に輝いた。もし本番に置き換えるとすれば、日本は五輪出場権を逃したことになる。

 確かにイラクは強い。先日書いた日本対イラクのコラムでも触れたが、イラクのこの世代は『史上最強』との呼び声が高い。2012年のAFCU-19選手権・準々決勝(1-2で日本が敗戦)と今大会の敗戦は共に、『惜しい試合』ではなく、文字通り『完敗』だった。ボランチの構成力、サイドアタックの質、FWの質、どれを取ってもイラクが上であった。日本はイラクと比べ、2歳年下で臨んだチームではあったが、年齢以上の差があった。イラクは非常にシステマティックで、これまでの中東のチームとは違い、組織面での粗さを感じさせないチームだった。

 アジアのレベルは間違いなく上がっている。U-16AFC選手権やU-19AFC選手権を継続して取材していると、それを強く感じる。今大会はイラクがフィーチャーされているが、この年代はウズベキスタンも力があり、東南アジアを見ても、ベトナムやインドネシアのサッカーのレベルも確実に上がってきている。アンダー世代のアジア予選を取材するたびに、この危機感は膨らんでいく。

 イラク相手にU-19、U-21と準々決勝で日本が2度も敗れたことは、アジアのレベルが上がっている証左である。もちろん、この敗戦だけで手倉森ジャパンをとやかく言うつもりはないが、アジアにおける日本の立ち位置という面では、憂慮しなければいけない。

 日本はこれまで五輪に、アトランタから5大会連続で出場している。だが、U-20ワールドカップは3大会連続で出場権を逃し、U-17ワールドカップには連続出場しているが、アジアチャンピオンとなって出場したのはたった2回しかない(AFC U-19選手権で日本は一度も優勝したことがない)。セントラル開催はそれだけシビアな戦いと言えるし、近年のアジアのレベルの向上を考えると、一筋縄ではいかないレギュレーションだ。

 今からでも遅くない。この危機感を力に変え、1次予選に向けてリスタートを切ってほしい。A代表が2011年にアジアカップを優勝していることで「日本はアジアのトップ」という認識があるかもしれない。しかし、下の世代の結果を真摯に受け止め危機感を共有する必要がある。手倉森ジャパン、いやアンダー世代全体において、今最も重要なことはこの「危機感の共有」である。

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