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“勝ちパターン”にはめた市立船橋 OBの北嶋秀朗氏も「これぞ市船」

2014.01.02

二回戦 中津東 0-1 市立船橋 [写真]=鷹羽康博

第92回全国高校サッカー選手権大会 2回戦 市立船橋-中津東
鈴木潤(フリージャーナリスト) 取材・文

14年1月2日(木)/12:05キックオフ/千葉県・フクダ電子アリーナ/観客13059人/試合時間80分

市立船橋  1(0-0、1-0 )0 中津東

得点者
(市立船橋)
山之内(後半28分)

中津東が狙いどおりに試合を運ぶ。素早い帰陣で自陣のスペースを消し、タイトなマーキングで相手のキーマンを封じると、カウンターから好機を作り出した。リズムの作れない市立船橋だったが、後半は徐々にアグレッシブな姿勢が蘇り、後半28分に12山之内裕太がフリーキックを直接決めて先制する。これが決勝点となり、内容が悪いながらもセットプレーで奪った1点を守り切った市立船橋が、3回戦へ駒を進めた。

ボールをポゼッションして攻撃を仕掛ける市立船橋に対し、中津東の守備陣はマンツーマンで相手の攻撃陣に付き、自由を与えなかった。また、自陣深くでは守備ブロックを固め、バイタルエリア周辺では密集地帯を作って市立船橋が入るスペースを封鎖する。「市立船橋の縦パスへのプレッシャーとアプローチを徹底して話をしてきた」と中津東・松田雄一監督が振り返るとおり、市立船橋が16矢村健に攻撃のスイッチを入れる縦パスを放っても、中津東5榎木祥之のタイトなマーキングがボールを前線に収めさせず、相手の起点をつぶした。

そして、守備を重視するといっても、中津東が引きこもりの守備一辺倒のサッカーに終始したかといえば、決してそういうことではない。奪った後の縦への攻撃が鋭く、起点を作れる9楢崎颯晟に、スピードのある7山本隼斗、11松浪竜希が絡んでグイグイと市立船橋のラインを押し返していく。シュート精度やラストパスの精度に欠け、決定機という場面までは作れなかったが、狙いどおりに試合を進めているのは、明らかに中津東のほうだった。

市立船橋・朝岡隆蔵監督は、ハーフタイムにげきを飛ばし、仕切り直して選手を後半のピッチに送り出した。その効果は見事に反映され、前半は淡泊だった市立船橋の攻撃に、後半は連動性とダイナミックさが加わり、ボランチの縦パスを16矢村が落とし、10石田雅俊や8室伏航がそこに絡むことで攻撃にアクセントを加えた。後半9分、落としを受けた8室伏のミドルシュート。後半12分、ループ気味に狙った10石田のワンタッチシュートなど、際どいシーンが増えていった。

一転して押し込まれる展開になったが、それでも中津東守備陣の集中は途切れることなく、相手が個の力による突破を試みたとしても、人数をかけ、連動した守備でなんとかしのぎ切り、0-0のまま試合は進んでいく。

「セットプレーで点が動くということは考えていたので、この1週間その練習をしてきました」と話す市立船橋・朝岡監督。勝負を決めたのは1本のセットプレーだった。中津東のミスから生まれたショートカウンターから、市立船橋が絶好の位置でフリーキックを得ると、左足キックの練習を積んできた12山之内裕太が「ここは自分に蹴らせてくれ」と10石田に懇願。「マサ(10石田)が駆け引きをしてくれたので、GKが少し右にずれた」との12山之内の解説どおり、わずかに右に動いたGKの逆を取る形で、12山之内のシュートが枠を捉える。GKのはじいたボールが、そのままゴールネットに吸い込まれ、後半28分に市立船橋が先制した。

ここからの市立船橋は、老かいな試合運びで時間を浪費していく。試合内容がよくないなりにもセットプレー1発で点を取ってしまうという、ある意味“勝ちパターン”にはめた市立船橋が、残りの12分間をうまく使い、逃げ切りに成功した。観戦に訪れていた市立船橋OBでロアッソ熊本コーチの北嶋秀朗も「これぞ市船という勝ち方」と初戦を突破した後輩たちを褒めたたえていた。

初戦ということで硬さ・緊張、メンタル・モチベーション面で難しい一戦であっただろう。まずは初戦を飾れたことで、朝岡監督は「これで明日はもう少ししっかりとした試合ができると思います」と語り、安堵(あんど)の表情を見せた。ただ、粘り強く戦い、夏のチャンピオンを苦しめた中津東の戦いぶりも、勝者と同等にたたえられるべきである。

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