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“ビースト”林大地の現在地 2季連続7得点も目標の二桁届かず 今夏の「チャレンジ」はあるのか

2023.05.23

シント・トロイデンFW林大地 [写真]=元川悦子

 2022-23シーズンのベルギー1部リーグもレギュラーシーズン1位から4位と5位から8位からが参加するプレーオフの佳境に突入。日本人選手も参戦中だが、5選手が所属するシント・トロイデンは12位でプレーオフには進めなかった

 4月23日の最終節の後、チームはすでに来シーズンに向けての準備を進めており、ヴィッセル神戸を2019年の天皇杯制覇へと導いたトルステン・フィンク監督の就任が決定。6月から始動する予定だ。その中で2021年夏から2シーズンを過ごしている林大地は去就が注目される1人と言える。

 東京五輪でバックアップメンバーから一気にレギュラーをつかみ、直後にシント・トロイデンへ赴いたアグレッシブな点取屋は、1シーズン目から25試合出場7得点という好成績を残した。それを踏まえ、2年目だった今シーズンを「勝負の年」と位置づけ、二桁ゴールという大目標を掲げてシーズンに挑んでいた。

 強い意気込みは早速結果に表れ、開幕戦のユニオン・サン・ジロワーズ、2戦目のヘント戦で連発。幸先のいいスタートを見せた。9月中旬から10月頭にかけてケガで一時離脱したものの、スタメンとして出場を続け、FIFAワールドカップカタール2022メンバー発表直前のウェステルロー戦、セラン・ユナイテッド戦で再び連続ゴール。代表メンバー入りにかすかな期待を抱いた。

 だが、最終的には落選。履正社高校の後輩である町野修斗が追加招集された時には「俺を呼んでくれよ」と複雑な感情を覚えたという。

 気持ちを入れ替えて12月末から再開したリーグに挑み、1月末までの1カ月間で3ゴールを奪う好調ぶりを見せたが、その後はベルント・ホラーバッハ監督がアラベスから呼び戻した原大智に先発の座を奪われるなど、苦しい時期が続く。

「大智もいい選手だし、ジャニー(ジャンニ・ブルーノ)もチームで一番点を決めている。僕ら3人はそれぞれ長所があるし、使う、使わないを決めるのは監督ですけど、やっぱり試合に出続けるのは点を取っている人間。僕は最近、ゴールを奪えていないですし、先発を外されるのも仕方ない部分があります。最後まで3人でいい競争をし合えたらいいと思います」と2月時点で林は奮起を誓っていた。

 そこから巻き返し、3月以降はスタメンを取り戻したが、今度はゴールという結果が出なくなる。「自分のほしいところにボールが来ない」というのは、海外に赴いた日本人FWが直面しがちなケースだが、シント・トロイデンの林はより深刻だった。

 データではゴール期待値が0%台と、チームの攻撃力不足は顕著。「前からプレスに行って、後ろが奪ったらアバウトなボールが前線に飛んできて、収められなかったらガッカリされる。ホンマに大変です」と本人も難しさを吐露していた。

 結局、最後までこの苦境を打開しきれず、林は1年目と同じ7ゴールでシーズンを終えることになった。二桁をクリアできなかったことはやはり納得がいかない。後からベルギーにやってきて、1年目で現在21ゴールをマークする上田綺世の存在が身近にあるだけに、より悔しさは強まったはずだ。

林大地

Jヴィレッジで子どもたちに指導する林大地 [写真]=元川悦子

 シント・トロイデンとの契約がまだ残っているため、来シーズンの海外挑戦続行は基本線。ただ、本人のステップアップへの意欲は高まる一方と言っていい。

「自分がステップアップだと思えるようなチームからオファーが来れば、しっかりそこに飛び込んでチャレンジしたい。それがドイツやイングランドの2部でも全然問題ない。シントにいてドイツ2部チームと練習試合をしますけど、どのチームも実力があるし、力もあると感じたので、カテゴリーは気にしないです」と5月20日に行われたJヴィレッジでの小学生向けサッカー教室の場で、目をギラつかせたのだ。

 野心を抱く要因として大きいのは、まず岡崎慎司や香川真司の飽くなき向上心を間近で見てきたこと。特に岡崎は37歳という年齢にして、今季30試合先発とフル稼働し、40歳まで欧州挑戦を目指すことを明言している。

「オカさんはすごく実績がある方なので、熱心にいろいろ教えていただきましたし、考え方やどういうメンタリティで世界を戦ってきたか聞けました。プライベートではすごく優しい兄ちゃん。かわいがってもらって、飯に連れていってもらったり、いろいろしてもらって、大好きです」と林は笑っていたが、大先輩に負けているわけにはいかない。

 もう1つは、昨年12月頭の長女の誕生。家族がベルギーにやってきてからは父親業にも精を出し、今季終了後も日本に戻って子育てに努めたようだ。応援してくれる家族のためにも成功したいという意欲は高まったはず。

「僕は代表にも入りたいし、W杯にも出たい」と語気を強める“ビースト”にとって、2026年北中米W杯は絶対に射止めなければならない大舞台。同い年の三笘薫や前田大然に追いつけ追い越せでやっていく必要がある。そのためにも、主戦場としているリーグは可能な限り、高いレベルの方がいい。

 シント・トロイデンから欧州キャリアをスタートさせ、ドイツ2部のシュトゥットガルトに赴き、そこで1部に上がって代表の絶対的主力になった遠藤航のようなキャリアを描ければまさに理想的。2023-24シーズンは大ブレイクを果たす林大地の雄姿をぜひ見たい。

取材・文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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