FOLLOW US

「最後は必ず使われる。自分に自信がある」 新天地ベルギーで新たな挑戦を始めた松尾佑介の今

2023.02.22

試合後、取材に応じた松尾佑介 [写真]=元川悦子

 今季ベルギーリーグもプレーオフ(PO)争いが佳境に突入している。2月19日には25試合終了時点で9位のシント・トロイデンと7位のウェステルローが激突した。

 岡崎慎司、原大智、橋岡大樹、シュミット・ダニエルの日本人4人が先発したこの試合。相手ベンチからじっと見つめていたのが、1月末に浦和レッズからウェステルローへレンタル移籍した背番号79の松尾佑介だ。

 序盤はシント・トロイデンが主導権を握り、押し込んだが、前半34分にペナルティエリア内でファウルを与え、VAR判定でPKを献上。不運な形で1点をリードされた挙句、退場者を出してからは、数的優位のウェステルローが終始、押し込む展開となった。

「1-0でOK」とヨナス・デ・ローク監督は考えたのか、攻撃陣の交代は最低限にとどめ、リスク回避でゲームを運び、首尾よく勝ち点3を手に入れた。PO圏内を維持するにはそれが最善策だったのかもしれないが、日本人対決が叶わなかった松尾は悔しさをにじませるしかなかった。

「11対10で使わないというのは僕としては考えられないですが…。これが今の立ち位置ですね。チーム内での信頼感を築いていかないといけないんです。たぶん同じチームの選手たちは僕に対して『本当に大丈夫か』と思っているでしょうし、練習から信頼感を得られるように頑張っていきたいです」と出番なしに終わった25歳の日本人アタッカーは気持ちを切り替えた。

 新天地に本格合流してから3週間。ここまでの出番は2月11日のヘント戦の78分からだけだ。

「日本が長いオフだったうえに、10数時間のフライトでベルギーに入って、翌日に体力測定をやったので、コンディションがいいわけないですよね(苦笑)。おそらく日本人が初めてだから、そのあたりの事情が分からないんだと思います。でも、自分もフィジカルを上げないといけないし、プレーのテンポに慣れないといけないと感じてます。それができれば、クオリティは間違いないと監督も言ってくれている。プレータイムさえもらえれば、もっと順応できるという自信があります。特に攻撃面でチームを活性化させられると思います」と松尾は彼らしい強気の姿勢を見せていた。

 ポジション的には4-2-3-1の左MFかトップ下で考えられているというが、どこでもできるのが彼の大きな強み。実際、昨季の浦和でもリカルド・ロドリゲス監督の下で1トップに抜擢され、ゴールを量産。攻撃陣を大いに勢いづけていた。

「(浦和での1トップは)リカルドが我慢して使ってくれたおかげ。彼の選手を見抜く力によって、僕の最適解を見出してくれた。それには感謝しています。去年の浦和での1年は僕のプレーヤーとしての幅を大きく広げてくれたと思います。ただ、リカルドの時も最初は『この選手は守備をしてくれないんじゃないか』と思われていたところがありました。今の監督も『使いづらい』という印象があると思う。でもリカルドも結局、使ってくれましたし、問題はありません。どこのチームでも最初は苦労しますけど、最終的には必要とされる。心配はしていません」と浦和時代の経験も壁にぶつかっている今の自分を力強く後押ししてくれている様子だ。

 ベルギーで成功を収められれば、同い年の三笘薫のような華々しいキャリアを歩むことは夢ではない。松尾自身は「他の人のプレーはあまり見ないし、ポジションが似てるというだけで全く違う」と一切比較などはしていないが、日本代表に対しては純粋に「入ってみたい」という気持ちが少なからずあるようだ。

「カタールワールドカップは1ファンとして見ていましたけど、とても楽しかったです。盛り上がっていたし、W杯っていいなと思いました。日本代表もそうだけど、他チームの試合も見て、トップの選手が緊張感を持って試合をする大会の大きさに凄みを感じました。ぜひ一度、プレーしてみたいと思います。サッカー選手というのは、化ける時は本当に一瞬。今年は楽しんでプレーしたいと思っているので、短いサッカー人生をエンジョイしたいです」

 確かに三笘や堂安律といったW杯でインパクトを残した面々も大化けしたのはつい最近だった。松尾がそういった軌跡を描かないとは限らない。全ては今のウェステルローでのパフォーマンスにかかっている。

 幸いにして、ベルギーは日本よりも緻密さや組織力が求められないリーグ。その分、スペースが空いたり、オープンな展開になりやすい。松尾にとっては良さを出しやすい環境だ。そこで間合いや駆け引きを覚え、味方との連携を強化していけば、持てる才能は開花するはず。そんな期待を抱かせるスピード系アタッカーの異国でのブレイクが待ち遠しい。

取材・文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

SHARE

LATEST ARTICLE最新記事

SOCCERKING VIDEO