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新天地オランダで地位確立を! 斉藤光毅が明かす危機感と決意

2022.08.03

新シーズンからオランダでプレーする斉藤光毅 [写真]=グロボル・フットビズ・コンサルティング

 2022-23シーズンの欧州リーグが続々と開幕している。8月5日からはオランダのエールディヴィジもスタート。1年半過ごしたベルギー2部・ロンメルSKを離れ、今シーズンからスパルタ・ロッテルダムでプレーするパリ五輪世代のアタッカー・斉藤光毅も「新天地で早く地位を確立したい」と闘志を燃やしている。

 6月下旬の新チーム合流後、本拠地のロッテルダムで始動。7月11日~16日には同国のデルデンで短期キャンプを行い、実戦の中でコンディションを引き上げてきた。ここまではヘラクレスやヴィレムⅡなど6チームとのテストマッチを実施し、斉藤は4-3-3の左サイド、あるいは1トップでプレー機会を得ているという。

「今のチームでは『前の選手は自由に動いて個性を発揮してほしい』と(モーリス・ステイン)監督に言われているので、自分はドリブル突破や裏への突破を意識的にやっています。今はいろんなポジションをやらせてもらっていますけど、自分の特徴を出してゴールやアシストという結果を残せれば理想的。開幕からどれだけ数字を残せるかで自分の立場が決まってくるので、最初からスパートをかけたいですね」と彼は目を輝かせる。

 今シーズンで欧州3シーズン目となるが、2021年1月にロンメルに赴いた時は驚きと戸惑いの連続だった。

「正直、何もかもが難しかったです。行った当初はまだコロナが落ち着いていなくて、不安もありました。食生活も日本のようにはいかない。自分なりに自炊を始めましたが、悪戦苦闘の日々でした(苦笑)」

「ピッチ上でもフィジカル面の壁にぶつかったし、芝生が日本と全然違うので、ボール扱いにも苦しんだ。リカバリーをするにしても器具が整っていないし、自分で超音波治療器を買ったほどです。環境含めてギャップがメチャメチャあって、最初の半年は適応するので精一杯。自分らしいプレーができなくて、2年目に入ってやっと慣れた感じでした」

斉藤光毅

ロンメルでは約1年半プレー [写真]=Getty Images

 本人は苦労話を打ち明けるが、欧州経験者は必ずと言っていいほど、こういった難しさに直面する。横浜FC時代の先輩である中村俊輔、松井大輔らも例外ではなかった。斉藤自身も「横浜FCにいた当時は、そういう話を聞いてもなかなか実感を持てなかったけど、改めて今、俊さんや松井さんと喋ったら、全然違う捉え方ができるんじゃないかなと思いますね」としみじみ語っていた。

 苦難を承知で10代のうちから異国でのチャレンジに打って出て、ようやくオランダ1部まで辿り着いた斉藤。ここからが本当の勝負と言っていい。同国からは本田圭佑、堂安律、板倉滉らが欧州5大リーグに飛躍した例もあり、彼にも大きな期待が寄せられるのだ。

「スパルタ行きを決める前に何人かの日本人選手の先輩に話を聞く機会があったんです。『オランダはステップアップするのにすごくいいリーグ。活躍できれば幅が広がる。頑張ればできると思うよ』と言ってくれた人もいて、モチベーションが高まりました。今のオランダには僕と(菅原)由勢君の2人しかいないですけど、カズ(三浦知良)さんが言っているように早く『チームの幹』になって、リーグを盛り上げていけるように頑張りたいですね」

斉藤光毅

[写真]=グロボル・フットビズ・コンサルティング

「今年11月にはカタールワールドカップもありますし、それも諦めたわけじゃない。大きな目標を持って取り組むことが自分を追い込むことにつながりますから。9月のアメリカとエクアドルとのテストマッチまでは1カ月半ありますし、開幕直後からゴールを奪えれば、いろいろな可能性も開けてくる。そう信じて取り組んでいきます」

 20歳のアタッカーはどこまでもポジティブだ。実際、若い選手というのはきっかけをつかめば急成長することが往々にしてある。先月のEAFF E-1選手権でも、同じパリ世代の藤田譲瑠チマが堂々たるパフォーマンスを披露。森保一監督の評価を一気に上げた。そんな同世代の仲間の一挙手一投足も斉藤の大きな刺激になっている。

「ジョエルが活躍したと聞くと『負けてられない』という気持ちは強まりますね。同世代だけじゃなくて、年上の選手でも、際立った存在感を示しているのを見れば、危機感が強まります。自分は現状に満足していられる状況じゃない。今はまだもがいている真っ最中ですけど、そういう時期があってこそ、大きく成長できると思う。今季は2ケタゴールを目指していますけど、必ずそれを達成して、近い将来の5大リーグ参戦の布石を打ちたいです」

 自らにそう言い聞かせる斉藤。パリ世代の中で数少ない欧州組である以上、大岩剛監督率いるU-21日本代表にも高度な経験を還元していくべき立場にいる。6月のAFC U-23アジアカップでは「過去の代表史上、最低のパフォーマンスだった」と悔しさいっぱいだっただけに、ここからリベンジを果たしていかなければいけない。

斉藤光毅

U-23アジア選手権では背番号10を背負って戦った [写真]=AFC

 カタールW杯後には新たな日本代表もスタートするだけに、斉藤らパリ世代の面々は新生ジャパンの軸を担うべきだ。そういう意味でも新シーズンは彼のキャリアを左右する大きな1年になる。だからこそ、積極果敢なトライをしていくべきなのだ。

「8月14日の第2節は由勢君のAZとの直接対決。僕が左サイド、由勢君が右サイドバックで出れば、ガチのマッチアップになる。物凄く楽しみですね。日本人ダービーに勝って『斉藤光毅の存在』を広く知らしめたいです」

 果たしてそれが実現するのか否か…。まずは序盤戦の動向からしっかりとチェックしていきたいものである。

取材・文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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