2018.04.23

【W杯直前!サンクトペテルブルク発】今季終盤ゼニトの見逃せないホットな話題と記録!

[写真]=FC Zenit
1983年生まれ、埼玉県出身。2017年3月、Jリーグヒューマンキャピタル(JHC、現スポーツヒューマンキャピタル) 修了後、同年8月よりスペイン エルチェCFのセールス・マーケティング部門にて活動開始。2018年2月にはハワイで開催されたPacific Rim Cupの企画・運営に携わり、現在はロシア FCゼニト・サンクトペテルブルクのPR部門にてシーズン終了まで活動中

 2018 FIFAワールドカップ ロシアの開幕まで60日を切り、各開催都市のスタジアムの状況やフットボールパークのオープン情報などが続々と舞い込んで来ている。ここロシアでも大会への関心が日増しに強くなっているのを日々感じている。一方で、当然のことながら開催国ロシアでも自国のロシア・プレミアリーグが他のヨーロッパ各国のリーグ戦と同様に佳境に突入。ワールドカップを目前に控え、例年とは違った注目を集める中、私の所属するゼニトがワールドカップ会場の一つであるホームのサンクトペテルブルク・スタジアムと共に、今まさにリーグの終盤戦を盛り上げている。今回は現在進行形のゼニトのホットな話題と記録、さらにそれらが生まれる現場であるサンクトペテルブルク・スタジアムについて現地からお伝えしたい。

後半アディショナルタイムに劇的決勝ゴール! 一夜にして17歳DFスクロボトフ・フィーバー!

[写真]=FC Zenit

 4月18日、サンクトペテルブルク・スタジアムでは延期になっていたロシア・プレミアリーグ第23節、ゼニト対ディナモ・モスクワの一戦が行われた。この試合でゼニトは88分にCKからヘディングで同点ゴールを奪われるも、後半アディショナルタイムにすぐさまこちらもCKから劇的な決勝点を挙げ、2-1で勝利を飾った。

 これでゼニトは2018年に入ってから初の連勝。2位のスパルタク・モスクワと勝ち点差を「2」とし、順位も4位に戻した。残り4試合となり、来シーズンのチャンピオンズリーグ出場権を獲得するためのラストスパートに入った形だ。ただ、今回の勝利の話はこれだけでは終わらなかった。この勝利は決勝ゴールを挙げた人物の存在によって、ただの連勝以上の価値を持つものになったからである。選手、サポーター、スタッフ、クラブに関わる全ての人の雰囲気を一瞬にしてお祭り騒ぎに変えたのは、地元サンクトペテルブルク出身で2000年7月6日生まれの17歳・身長193cmの長身DFイリヤ・スクロボトフであった。

 スクロボトフのトップチームデビューは、18年4月1日アウェイでのウファ戦で、90分にロシア代表のイーゴリ・スモルニコフと交代でピッチに立った。それからわずか17日後のディナモ・モスクワ戦、今度は87分からプレー。その5分後にゴールを決め、一躍ゼニトの新たなヒーローとなった。このゴールでスクロボトフは二つの記録を作っている。一つは、17歳286日でロシア・プレミアリーグにおけるゼニトの最年少ゴール記録を樹立(※ソビエト連邦時代まで遡ると、1986年3月のディナモ・キエフ戦でオレグ・サレンコが16歳と126日で挙げたゴールがゼニトの最年少ゴール記録となっている)。もう一つは、2000年代生まれのゼニトの選手として初めてのロシア・プレミアリーグでのゴールである。

[写真]=FC Zenit

 チームは3月と4月、ヨーロッパリーグ敗退後から勝ちきれない試合が続き、監督や選手の来シーズンの去就が度々ニュースになるなど、決して明るくない話題も多かった。そんな中で、17歳のしかも待望の地元サンクトペテルブルク出身選手の劇的な決勝ゴールは、まさに多くの人が待ち望んでいた明るい最高の話題となった。こうして、試合の翌日から一夜にしてスクロボトフ・フィーバーが始まり、各メディアが彼を取り上げ、中には「スクロボトフの学校の先生に話を聞きたい」という取材の依頼もクラブには届いている。

 とは言え、本人はいたって冷静で試合後のインタビューでも笑顔を交えつつ落ち着いた受け応えを見せ、高校生である彼は試合翌日には朝から生物の授業を受けていたとのことである。加えて、チームの現状を踏まえて見た時に、各国の代表選手が居並ぶゼニトのディフェンスラインで、今後すぐさまレギュラーとして活躍できるかは未知数な部分も多いだろう。しかし、近い将来彼がゼニトの中心選手の一人としてチームを牽引してくれることを多くのサンクトペテルブルクの人々が期待しているのは事実。まずは今回のこのスクロボトフ・フィーバーの勢いそのままに、チームが最高の形でシーズンを締め括れることをクラブに携わる全ての人々が願っているところだ。

ロシア・プレミアリーグにおける平均観客動員記録を更新!

[写真]=FC Zenit

 スクロボトフが劇的ゴールを決めた4日前にもゼニトは大きな記録を打ち立てている。4月14日のアンジ・マハチカラ戦で、ロシア・プレミアリーグにおける一試合当たりの平均観客動員数の記録を塗り替えたのだ。 2017-18シーズンのゼニトは、新しくホームとなったサンクトペテルブルク・スタジアムで行われたロシア・プレミアリーグ13試合で、現時点で561,892人を動員し、一試合当たりの平均観客動員数は43,222人に上っている。

 ちなみにこれまでの最高記録は、1995シーズンにウラジカフカスのチームであるアラニアが達成した33,467人。続く二番目の記録は、2016-17シーズンのスパルタク・モスクワが残した32,760人となっている。 今シーズンのゼニトの一試合当たりの平均観客動員数をヨーロッパのチームと比較してみると全体で32位。現在の数字はポルト、スポルティング、ナポリ、チェルシー、バレンシア、ユヴェントス、ローマといったヨーロッパ各国の強豪クラブよりも上位となっている。

 この記録達成は、当然ながら地元サンクトペテルブルクの熱狂的なサポーターの存在があってこそではあるが、やはり一番の要因は56,000人以上を収容できるサンクトペテルブルク・スタジアムが今シーズンからホームになったことである(通常ロシア・プレミアリーグでのサンクトペテルブルク・スタジアムの収容人数は最大で約56,000人。ワールドカップ開催時は約67,000人を収容する予定)。昨シーズンまでのホームスタジアムであるペトロフスキー・スタジアムは約21,000人収容のスタジアムだったため、キャパシティは3倍近くまで増えた。さらに、開閉式の屋根のお陰で冬場でも常に室内気温を17℃程度に保ち、快適なスタジアム環境を維持できることも真冬のロシアでは集客をする上で大きな強みとなった。もう一つ最後の理由として、こうした新スタジアムのファシリティそのものの充実に加えて、集客におけるチームの努力も忘れてはならない。ゼニトでは現在『ファン・プロムナード』と呼ばれる様々なファン向けのイベントを試合開始の2、3時間前から巨大なスタジアムの広いコンコースを活用して実施している。もともとは、キックオフ間際のセキュリティチェックや入場口での混雑緩和が狙いで始まったものだったが、今ではすっかり家族連れを中心にスタジアムを存分に満喫してもらうための仕掛けとして機能しており、集客にも大きく貢献する企画となっている。こうした幾つかの要素が揃ってこその今回の観客動員記録の更新であった。

 シーズン終了までに、ゼニトはホームゲームを2試合残しており、4月29日にはCSKAモスクワとのビッグマッチも控えている。この記録がどこまで伸ばせるのか、ロシア中から大きな注目が集まっている。

サンクトペテルブルク・スタジアムは準決勝及び3位決定戦の会場!

[写真]=FC Zenit

 さて最後になるが、当然皆さんご存知の様にゼニトのホームであるサンクトペテルブルク・スタジアムは、間もなく開幕するワールドカップのために建設されたものである。当地では準決勝及び3位決定戦を含む計7試合が行われる予定で、ワールドカップに向けた準備も着々と進んでおり、最終段階に入っていると言えるだろう。一方で、4月29日のCSKAモスクワ戦当日に合わせて開業予定であるスタジアムに隣接する地下鉄の新駅は、完成が遅れそうとの情報も入っており、ロシア第二の都市サンクトペテルブルクにおいてもその準備に遅れが見受けられるのも事実。例えば、サンクトペテルブルクのファンフェスタは4月20日の時点でも『HOST CITY FAN ZONE 2017 FIFA CONFEDERATIONS CUP』のカバーが掛けられたままの状態になっている。

 残念ながら、現時点では日本代表の試合が行われる予定がなく、日本からこのスタジアムに訪れる方の数は限られるだろう。しかし、今のヨーロッパで一番美しく“インスタ映え”するスタジアムと言われているサンクトペテルブルク・スタジアムに、一見の価値があることは言うまでもない。4月に入ってからも、グループリーグでは試合予定のないフランス代表やスペイン代表のテレビ局もスタジアムの取材に訪れるなど、開閉式の屋根、可動式のピッチ、宇宙船の様な外観を持つスタジアムへの関心が一層高まっている。ゼニトのファンのみならず、一人でも多くの皆さんに足を運んでもらいたいスタジアムである。サンクトペテルブルクの街の美しさとマッチしたスタジアムの姿に圧倒されることは間違いないであろう。

 今「ロシア」と言えば、間もなく始まるワールドカップ本大会に自然と目が向くことだろう。その一方で、この機会にぜひシーズン終盤の話題豊富なゼニトの動向や大会会場となるスタジアムをホームに持つクラブにも注目してもらいたい。これらのクラブを通じて、ロシアのサッカー熱や有用な現地情報を得ることもでき、ワールドカップの違った楽しみ方もきっと増えることだろう。

文=井ノ口孝明

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