ムアントンでのACL決勝トーナメント出場への思いを明かしたチャナティップ[写真]=Getty Images
アジア・チャンピオンズ・リーグ(以下、ACL)予選リーグ、E組は第5節を終えて、昨季タイ王者であるムアントン・ユナイテッド(以下、ムアントン)が悲願の決勝トーナメント進出を決めた。
ブリスベン・ロアー(以下、ブリスベン)をホームへ迎えた大一番、水曜日開催にも拘らずスタジアムはほぼ満員、期待の大きさが伺えた。
試合は、37分にトリスタン・ド―の絶妙クロスをシスコがヘディングで合わせてムアントンが先制する。後半、ブリスベンに幾度とチャンスを作られるものの凌ぎ、83分にチャナティップ・ソングラシンがGKを含む3人を抜きさり追加点。89分にはティーラシン・デンダーがダメ押して3-0とし試合を決めた。
この日も一番の輝きを放っていたのは“メッシ・ジェイ”こと、チャナティップだった。本家メッシのお株を奪うような小刻みなステップのドリブルから生まれた2点目にはスタジアムが沸き上がった。
そんなチャナティップだが、今夏、北海道コンサドーレ札幌への移籍が既に発表されている。この“時差移籍”の理由を移籍発表会見で「冬の札幌は大雪が降り寒過ぎてタイ人は馴染み難い」といったが、それは建前に過ぎない。彼等はACL予選リーグを勝ち抜くために彼を抱えておきたかったのだ。
試合を終えたばかりのチャナティップへ、その辺りの話しを直接聞いてみた。
――決勝トーナメント進出、おめでとうございます。しかしあなたは、今のままでは出られません。チームはあなたの日本行きを先延ばし出来るよう、コンサドーレ札幌と交渉するのではないですか?
「予選を勝ち抜けたことは凄く嬉しいです。しかし、契約の話しは、私がどうこう出来ることではないんです。(交渉するかどうかは)チーム次第ですよ」
――勝ち抜いた強豪揃いのACL決勝トーナメント、自らの力を図る意味でもプレーしたいのではないですか?
「もし出られるのであれば、是非プレーしてみたいです」
フットボールの世界、何が起こっても不思議ではない。決勝トーナメント進出が確定した今、チャナティップの日本への旅立ちが遅れることだって十分に考えられる話なのだ。
日本とタイを股に掛ける“メッシ・ジェイ”の綱引き合戦、果たしてどうなるのか、楽しみがまた一つ増えた。
取材/文=佐々木裕介
協力=アジアサッカー研究所
【佐々木裕介】
1977年生まれ、東京都世田谷区出身。旅行事業を営む傍ら、趣味が嵩じてアジアのフットボールシーンを中心に執筆活動を行うフリーランスライター。自らを“フットボール求道人”とも呼ぶ。また「スポーツ×トラベル」の素晴らしさを伝える“スポーツツーリズムアドバイザー”としても活動中。