昨年3月のG大阪とPVFのパートナーシップ締結式
フィジカルと戦術面の強化は、長らくベトナムサッカーの課題とされてきたが、ガンバ大阪からベトナムサッカー選手才能開発投資ファンド(PVF)に派遣された町中大輔監督(36歳)は、強化ポイントはそれだけではないと考えている。
ガンバ大阪は今年3月にベトナム屈指の育成機関であるPVFと提携。その一環としてガンバのアカデミーでコーチを務めていた町中氏をU-15チームの監督としてPVFに1年間派遣することを決定した。
町中氏はガンバ大阪ユース出身で、大学卒業後は、JFLの大塚製薬や佐川印刷でプレー。2009年に現役引退してからは、ガンバの下部組織でコーチを務め、2012年と2014年には、ガンバ大阪ユースをJリーグユース選手権大会準優勝に導くなど育成年代の指導者として実績のある人物だ。
ガンバは、日本国内でも優秀なアカデミーを持つことで知られ、トップチームでは多くのアカデミー出身者がプレーしている。日本代表選手も多数輩出しており、現代表には、FW宇佐美貴史、DF丹羽大輝、GK東口順昭、U-23代表には、MF井手口陽介(HAGLの井手口正昭の実弟)が名を連ねている。また、日本代表のエースであるFW本田圭佑(ACミラン)もかつてガンバ大阪ジュニアユースに在籍していたことは有名な話だ。
ベトナム3大育成機関に数えられるPVFが更なる高みを目指して、ガンバ大阪と提携し日本人監督を招聘してから既に1ヶ月近くが経つ。町中氏はチーム指導の中で徐々に自分の色を出し始めているようだ。我々が練習を観察する中では、とにかく指導のきめ細かさが目についた。練習メニューについて、コーチ陣と入念に打ち合わせ、選手には、カバーリング、ドリブル、相手陣の空いたスペースでのボールのもらい方などを丁寧に指導している姿が見られた。
町中氏は、「チーム全体が高い集中力を持って、互いに議論し合った方が良いと思います。そうすれば、チームとして次に何をすべきか分かりますし、どうすれば、より効果的な動きが出来るようになるのかを導き出すことができます」と語った。
日本人にとってチームワークと規律は重要なことだ。選手たちの技術レベルの高さを認める一方で、やはりベトナム人の悪習を感じずにはいられないのも事実だという。町中氏は、「練習以外でも、選手たちの生活習慣を注意深く見るようにしています。選手たちには、しっかりと栄養をとって、十分な睡眠をとってほしいです。そして、ゴミのポイ捨ては絶対にやめること。プロサッカー選手を目指すなら、こうした生活習慣から見直す必要があります」と述べた。
また、サッカーの実力について町中氏は、「ベトナムの選手は、ボールを扱う技術は優れていますが、戦術理解や判断力はまだまだです。これは今後、フィジカルの問題よりもずっと深刻な問題として浮かび上がってくるでしょう。よく見られるのはボールを失った後、すぐ取り返しに行かず、そこでプレーを止めてしまうこと。ここを改善できれば、試合中も継続してハードワークができ、フィジカルも徐々に強化されていくはずです」と語った。
町中氏の就任以降、U-15チームでは、戦術理解や判断力を向上させるため、試合形式の練習により多くの時間をさくようになっている。フィジカル強化について同氏は、「体力や体格というのは、その民族の特質もあるため、改善には長い時間がかかります。PVFが提供する食事は栄養たっぷりですし、あとは私が指導者として、選手たちが練習の中で、どうやったら100%の力を出せるかを考えるだけです」と続けた。
最後に我々は興味本位からある質問をぶつけてみた。
-PVFとガンバ大阪の同年代のチームが対戦したら、どんなスコアになると思いますか?
「うーん(苦笑)、あと数か月トレーニングすれば、PVFも得点を奪えるようになると思います。でも、4、5点取られてしまうでしょうね」
-では、2年後では?
「その時は勝てるチームにしたいと思います」
記事提供:ベトナムフットボールダイジェスト
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By サッカーキング編集部
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