現役引退を発表したサムエル(写真は2010年3月) [写真]=Getty Images
柿谷曜一朗のチームメイトで、スイス・リーグのバーゼルに所属する元アルゼンチン代表DFワルテル・サムエルが今シーズン限りで現役を引退すると表明した。
現在37歳のサムエルは、スイス紙『Neue Zürcher Zeitung』のインタビューで、「まだサッカーを続けたいと思うが、肉体的に厳しくなってきた。引退を決めるのは決して簡単ではなかった」と、自らの意志に体がついてこず、引退の決断に至ったことを明かした。
1996年に母国のニューウェルズ・オールドボーイズでプロデビュー。ボカ・ジュニオルス、ローマ、レアル・マドリード、そしてインテルと、南米と欧州のビッグクラブを渡り歩き、昨シーズンからバーゼルに在籍する。
約20年にもわたって現役を続けられたエネルギーについて問われると、「とにかくサッカーが好きだった。もちろん、仕事になってからは時間の使い方や、自分のために働いてくれる人々に対しての責任も生まれたが、プレーすることが楽しかった」と、サッカーへの情熱が全てだったことを明かした。
アルゼンチン代表で長く10番を背負ってきたフアン・ロマン・リケルメは、ボカ時代からのチームメイト。「リケルメが“最後の10番”と言われるのは、近年、サッカーが変化したことの象徴ではないか」との問いには、「今の時代、リケルメのような選手は存在しない。彼のような10番が好きなので残念に思う。現代サッカーで重要なのは運動量で、選手は走って相手にプレッシャーをかけなければいけない」と答え、一時代を築いた司令塔を懐かしんだ。
数多くの名将のもとでプレーしてきたサムエルだが、最も影響を受けた人物には、代表デビュー当時の監督であるマルセロ・ビエルサ氏を挙げた。「彼のもとでは、スペシャル・トレーニングが行われていて、MFやFWの選手とは別のメニューをこなしていた。競り合いの入り方や、空中戦で勝つ方法を学んだ」
“The Wall”、アルゼンチンの壁と称えられた守備力の原点は、ビエルサ監督の指導だったとした。
「自分は古い時代の人間だから、SNSは苦手だし興味もないんだ。(自分の)子どもたちには必要なものみたいだが、私のやる世界ではないね」と、イマドキ世代とはジェネレーションギャップも感じている様子。
チームメイトで18歳のブリール・エンボロを「自分の息子であってもおかしくないね」と、いつの間にか親子ほど年の離れた選手がチームメイトになっている時の流れに実感を込めた。
そんな若武者たちに対して、「アドバイスは惜しまない」というサムエル。しかし、そんな思いとは裏腹に、彼らの興味はもっぱら「一緒にプレーしてきたスター選手たちのエピソードを聞き出すこと」だという。
バーゼルの若手にとって、生きた手本とともにプレーできるのも、あと半年。アドバイスを請わないのはもったいない。
By サッカーキング編集部
サッカー総合情報サイト