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ノイアーの実戦復帰で代表争い、正GKは? “世界一のGK大国”が最終選考へ

2018.06.01

ドイツのGK陣は世界一とも言うべき選手層を誇る(左からトラップ、テア・シュテーゲン、ノイアー、レノ)

 マヌエル・ノイアーがついに実戦復帰を果たした。5月29日、ドイツU-20代表とのトレーニングマッチ(30分×2本)で前半のピッチに立ったのだ。左足中足骨を骨折した昨年9月以来のカムバックだ。今年1月と目された復帰が大幅に遅れ、2018FIFAワールドカップ ロシアの開幕をおよそ2週間後に控えたタイミングとはいえ、名実ともに当代随一の守護神であり、チームのキャプテンが帰ってきたのは朗報以外の何物でもない。

キャプテンの復帰でテア・シュテーゲンは第2GKが濃厚

ドイツ代表はロシアW杯へ向けて南チロルでキャンプを行っている [写真]=Getty Images

 離脱期間が8カ月以上にも及んだゆえ、当然ながら試合勘の欠如が危惧される。それでもヨアヒム・レーヴ監督にとって、ノイアーが「ナンバー1」という事実は揺らいでいない。実際、指揮官は「コンディションさえ整えば、最終メンバーに入れる。バックアッパーとして連れて行くつもりはない」と明言している。つまり、ピッチに立てなくても、精神的支柱としてチームに帯同させる考えはないということだ。

 ノイアーの復帰により、割を食う格好になったのがマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンだ。バルセロナで正ゴールキーパーを務めるこの26歳は、コンフェデレーションズカップ、ワールドカップ予選、フレンドリーマッチで継続的にハイパフォーマンスを見せ、ドイツの各メディアから「ノイアーの代役以上の存在」、「ノイアーが不在でも大丈夫」といった高い評価を受けていた。バルサでのプレーも申し分がなく、昨年11月には『マルカ』紙が「メッシのGK版」と絶賛。リーガ・エスパニョーラで平均失点が最も少ないGKを讃えるサモラ賞こそ逃したものの、素晴らしい活躍を見せた。

 ノイアーが最終メンバーに入れば、テア・シュテーゲンは第2GKとしてロシアW杯に臨むことになる。本人からすれば、決して面白い状況ではないだろう。だが、テア・シュテーゲンは至って冷静だ。かねてより「ノイアーこそがナンバー1」と公言しており、チーム内のヒエラルキーを崩すような言動はしていない。かつてのテア・シュテーゲンを知る者からすれば、この精神的な成熟は驚くべきものだろう。

GK最後の1枠はレノとトラップの二者択一

3人のGK枠はレノとトラップが最後の椅子を争う [写真]=Getty Images

 こんなエピソードがある。同い年のベルント・レノと正守護神の座を争っていたU-21代表時代に、テア・シュテーゲンはチーム合宿を途中離脱した。その理由は翌日の試合に、レノが先発すると聞かされたから。公には「負傷離脱」としていたが、実際はポジション争いが存在すること自体に憤慨していたという。同い年の名手に対するライバル心は強く、レノの存在がテア・シュテーゲンを成長させたと言っても過言ではない。

 そのレノは23人枠に入れるかどうかの当落線上にある。ライバルは3月のブラジル戦で先発フル出場したケビン・トラップだ。パリ・サンジェルマンでは第2GKに甘んじたが、ドイツ代表のアンドレアス・ケプケGKコーチからの評価が高く、27人の予備候補メンバーに入り、南チロルで行っている直前キャンプに帯同している。

 ノイアーやテア・シュテーゲンほどの定評を確立していないとはいえ、レノもトラップも他国なら十分にレギュラーとなりうる実力者だ。ともに今夏の移籍が有力視されており、レノはアーセナル移籍の噂が浮上している。ノイアーが最終メンバーに入った場合、どちらかを外さなければならないのは、まさに贅沢な悩みと言えるだろう。筆者自身は2017年の代表マッチで二度のミスを犯したレノではなく、トラップが選ばれると見ている。しかし、ケルンU-21でGKコーチを務める田口哲雄氏は「レノが残りますよ。3月のブラジル戦でトラップを使ったのは、(パリ・サンジェルマンで出番を失っている)彼に試合勘を養わせる配慮からだと思います」と予想。この二者択一には注目だ。

豊富過ぎる人材…代表待望論が囁かれる実力者たち

代表待望論が囁かれるGKたち(左上から時計回りにフェアマン、バウマン、ホルン、ツィーラー) [写真]=Getty Images

代表入りは果たせなかったがカリウス(左)、ウルライヒ(右)も実力者だ [写真]=Getty Images

 ノイアー、テア・シュテーゲン、レノ、トラップのうち、同時に2人以上が離脱するような不足の事態に陥っても、世界ナンバー1の“GK大国”ドイツには代役候補がいくらでも存在する。例えば、2017-18シーズンのバイエルンでノイアーの穴を埋めたスベン・ウルライヒ。チャンピオンズリーグ(CL)準決勝の2ndレグ、レアル・マドリード戦でのミスが印象を悪くしているが、年間を通してのパフォーマンスは非常に高かった。

 他にも代表待望論が浮上した選手は少なくない。ブンデスリーガ屈指のビッグセーバーであるラルフ・フェアマン(シャルケ)、2シーズン連続で10回以上のクリーンシートを記録したオリバー・バウマン(ホッフェンハイム)、2部に降格したケルンで孤軍奮闘したティモ・ホルン(ケルン)などだ。代表歴を持つ選手ではシュツットガルトのロン=ロベルト・ツィーラーが、2017-18シーズンの国内リーグで2番目に高いセーブ率を誇るなど異彩を放った。CL決勝での二つのミスがとにかく悔やまれるが、リバプールのロリス・カリウスはまだ24歳。今後の奮起が期待される。

 ワールドカップ優勝国には必ずと言っていいほど、名GKが存在した。2006年のジャンルイジ・ブッフォン、2010年のイケル・カシージャス、2014年のノイアー……。まずは6月2日のオーストリア戦で、ケプケGKコーチが起用の可能性を示唆するノイアーがどんなパフォーマンスを見せるか。要注目だ。

文=遠藤孝輔

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