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北朝鮮がW杯招致に意欲…世界最大規模のスタジアムは15万人収容

2015.10.08

ワールドカップの優勝トロフィー [写真]=FIFA via Getty Images

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)最高指導者の金正恩第一書記は、自国をサッカー・ワールドカップ(W杯)やオリンピックなどの国際的なイベントの舞台とするための準備を着々と進めているようだ。イギリス紙『ガーディアン』が7日付で報じている。

 FIFA(国際サッカー連盟)のゼップ・ブラッター会長の収賄疑惑が騒がれた際、イギリスのコメディアンであるサイモン・ブロドキン氏が、「2026 ワールドカップ 北朝鮮大会」というジョークを飛ばしたことがあるが、それが冗談でなくなる可能性がある。

「FIFAのW杯視察団が近々(北朝鮮を)訪れる予定です」と関係者は語る。W杯を北朝鮮に招致するための目玉施設となるのが、平壌にある「綾羅島メーデースタジアム」だ。この世界最大規模のスタジアムは現在増築が進んでおり、収容人数は15万人になると発表されている。

 金正恩第一書記は2013年に同スタジアムを訪れた際、「綾羅島メーデースタジアムを改築し、北朝鮮のスポーツ施設のアイコンとすることは党の決定だ。このスタジアムは発展した国にふさわしい外観にする必要がある」と宣言していた。また、北朝鮮国内ではローラースケート場、乗馬用のアリーナ、サーフィンセンター、スキー場など他のスポーツ施設も続々と建設されているようだ。北朝鮮の財政に詳しい専門家は、「金正恩氏はスポーツ振興に熱心だ。スポーツ振興のための予算は別枠でとられており、2012年から毎年6から7パーセントの上昇を見せている。2014年には上昇率は17パーセントまで跳ね上がった」とコメントしている。

 今年発表された310個の新しいスローガンにもスポーツに関するものが多く、「全国にスポーツの熱風を吹かせよう」、「早急に国民のスポーツの実力を向上させ、国際舞台で活躍しよう」、「反日ゲリラのように積極的に試合でプレーしよう」などのスローガンが並んだ。

 だが、北朝鮮がW杯やオリンピックを招致するまでの道程はかなり険しそうだ。現在の同国は長距離弾道ミサイルの発射実験と独裁体制を理由に国際社会から孤立しているからだ。

 今年の3月には、FIFAが国際社会の批判に呼応して北朝鮮サッカー振興のために用意していた1億6600万ポンド(約305億円)の基金を取り止めた経緯もある。金正恩第一書記は経済改革によって国民の生活を向上させて飢饉発生のリスクを減らした点が評価されているものの、自国民の政治的自由と人権を抑圧する独裁体制に対する批判も根強い。他方で、スポーツ振興を積極的に推し進める北朝鮮の動向を、冷戦後の旧ソ連や東欧諸国が辿った「ノーマライゼーション」の過程として見る人たちもいる。

 高麗ツアーの社長であるシモン・コックレル氏は、「サッカーは北朝鮮で最も人気のスポーツです。韓国との紛争の危機もサッカーの試合に何ら影響を与えませんでした。サッカーはサッカーなんです。それは1つのピッチで2つのサイドに別れたチーム同士が戦うゲームです。政治的緊張抜きでね。韓国との試合でも11人の朝鮮人同士が対戦するだけで、それが共産主義と資本主義の対決を意味するわけではありません」と語っている。

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