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契約寸前で破談となったボルシアMG戦でも存在感 上月壮一郎、奮起してシャルケを救う存在に

2023.02.07

シャルケFW上月壮一郎 [写真]=Getty Images

 FIFAワールドカップカタール2022を経て再開したブンデスリーガの後半戦で注目される1人が、シャルケで躍動する上月壮一郎だろう。

 わずか1年前の2021年末にアカデミー時代から育った京都サンガF.C.を契約満了となり、その後、ドイツ5部のデューレンへ。そこで11試合5ゴール5アシストと結果を残し、今シーズン開幕時にシャルケU-23入りのチャンスを得て、半年後にはトップチームへと飛躍したのである。

「詳しいことはあまり言えませんが、本当は1年前にここ(ボルシアMG)に来ていたんです。トライアウトを受けて、受かったんですけど、いろいろあって1月末までに入れなかった。(2022年)1月31日の時点でチームがなく、5部に入ることになった時には『自分、落ちるところまで落ちたな』という感じでしたね」

 2月4日のボルシアMG対シャルケ戦の後、上月はしみじみとこう語っていた。

 彼はもともと久保建英や菅原由勢、中村敬斗らとともに、AFC U-16選手権2016、U-17ワールドカップ2017に参戦した年代別代表の一員だ。当時の仲間たちとは「みんなで切磋琢磨して絶対に上に行こう」と話し合っていたという。

 だからこそ、5部のアマチュアチームというのはショックが大きかったに違いない。それでも、当時21歳の若武者は異国でリベンジを誓った。

「ドイツに来たからにはブンデスリーガに出て見返してやるという気持ちしかなかった。1年間我慢して、やるべきことをやり続けてきた結果だと思うので、こうしてトップの舞台に立てたことはすごく誇らしい。周りの人にも恵まれたし、僕1人では絶対にここまで来れなかった。そういう人たちのために戦うという気持ちも分かってきました」と上月は今、真摯な姿勢でピッチに立っているのだ。

 1月21日のフランクフルト戦から4試合連続スタメン。24日のライプツィヒ戦では大量6失点と守備が崩壊する中、彼はブンデス初ゴールを挙げ、一矢報いることに成功した。こうして上昇気流に乗った中、迎えた2月4日のゲームは、奇しくも自身が1年前に入るはずだった因縁のチームが相手。しかも、この日は日本代表の森保一監督も視察に訪れていた。先輩の吉田麻也から「いいアピールをしろ」とハッパをかけられ、意気揚々とピッチに立ったという。

 上月の魅力である縦の推進力とアグレッシブさは序盤から大いに光った。右から中に持ち込んで思い切りシュートを放った開始8分のチャンスに始まり、グイグイと前へ出る姿勢は顕著だった。19分には右クロスからの豪快なバイシクルで見る者を魅了し、24分にも惜しいフィニッシュのシーンがあった。この日は65分間のプレーにとどまったが、前半に関してはかなりボルシアMGに脅威を与えていた。

 これで決定力に磨きがかかってくれば、ゴール数を伸ばしていくことも十分可能なはず。得点力不足にあえぐシャルケの救世主になるべく、彼にはさらにブレイクしてもらわなければならないのだ。

「正直、今日は4試合出た中で一番ひどい出来でした。準備の段階から問題があったなと。もう少しプロフェッショナルとして試合に向けていい準備をしていかないといけないなというのは改めて感じました。自分はゴールを決めて、勝利に貢献しないといけない立場。とにかく結果だけにはこだわってやろうと思っています」

 反省しきりだった上月だが、ボルシアMG相手に大舞台で堂々と戦える立場になったのは事実。「ここのピッチに来た時は感慨深い気持ちになりました」と本人も語るように、ドイツで回り道したことは決して間違っていなかったようだ。

 加えて言うと、ボルシアMG相手に0-0というのは、最下位に沈むシャルケにとって悪くない出来。上月を含めてスタメン11人中5人が冬の移籍期間の新戦力ということで、チーム完成度はまだまだだが、それでも最悪の状況からは脱出できそうな雰囲気も少なからず感じられた。

 この調子で22歳の快足ドリブラーが名門シャルケの希望の光になることができれば、自ずから日本代表入りも見えてくる。3月から再出発する新生・森保ジャパンでキーマンになることも夢ではないのだ。

「もちろん代表は目指していますけど、まずは目の前の試合で結果を出さないと話にならないと思うので。今日の試合でもっと走って点決めて勝ってたら、そう胸を張って言えたと思うんですけど、今は目の前の1試合1試合、1日1日に必死。なかなかそこに意識は向けられないですね」

 一歩一歩着実に前進しようとしている上月。ドイツ5部から這い上がった男は日々の積み重ねの重要性を誰よりもよく分かっている。その貴重な経験を生かし、今いる環境で力をつけ、違いを見せられるアタッカーになること。それが上月壮一郎の目先のテーマである。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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