FOLLOW US

脳科学を用いたBrain Activityの第一人者エフィ氏が来日…ドイツサッカー界における功績と現代サッカーとの深い関わり

2022.11.18

 ドイツサッカー協会(DFB)が全幅の信頼とリスペクトを置き、自国の代表チームや指導者講習会などにも招聘する ”ある分野においてスペシャルでオンリーワン” な一人の指導者がいる。その名も、Efthimios Kompodietas氏(以下エフィ氏)。

 エフィ氏が提唱するBrain Activity(ブレインアクティビティ)は、脳の活性化により運動パフォーマンスの更なる飛躍を促すもので『認知・判断・実行』の速度を速めるものとしても注目されている。サッカードイツA代表、GK U15-U20のエリートキャンプを筆頭に、女子バトミントン代表など多くのアスリートに独自の脳科学における理論を指導してきた。とりわけドイツサッカーやドイツで活躍する日本人選手へのエフィ氏、Brain Activityの貢献度は非常に高く、ドイツ代表GK マヌエル・ノイアーを筆頭とするドイツ代表選手や酒井高徳、浅野拓磨、奥川雅也といった日本代表クラスのブンデスリーガーたちからの信頼も厚い。「脳にこれまで経験したことのない新たなものや情報を与えることで、脳の神経可塑性(かそせい:神経細胞が新たな回路を作り出して生まれ変わること)を作り出し、いかなる状況においても即座に対応できる」エフィ氏のこの言葉からもわかる通り、広いピッチで常に認知から実行までのプロセススピードの速さを求められるサッカーと脳科学との関連性は重要である。

 エフィ氏がドイツサッカーと深い関わりを持つようになったのは、2012年の欧州選手権(以下EURO2012)。エフィ氏が行ったケルン体育大学での認知に関するカンファレンスでのプレゼンテーションが、当時のドイツ代表コーチ ハンジ・フリック(現ドイツ代表監督)の目にとまり、EURO2012大会前のキャンプからエフィ氏がドイツ代表にメンタルコーチとして入閣した。「マルチタスクという状況下で、脳がそれに対して非常に早くリアクションできるかどうかを重要視していた。私を代表チームに呼ぶ前から、当時の監督ヨアヒム・レーヴやハンジ・フリックは私の理論やエクササイズを理解して、必要だと思って呼んでくれた。」エフィ氏は当時の様子をこう振り返る。近年メンタルコーチとして新たにスタッフを迎え入れるクラブも増えてきたが、エフィ氏はメンタル面においての脳科学的アプローチを通して、選手たちのパフォーマンス向上までを一貫して担う役割としてドイツ代表で指導してきた。EURO2012以降も、ドイツサッカー協会主催の指導者講習会 講師などドイツサッカーにおける重要なピースとしてエフィ氏のBrain Activityがドイツサッカーに落とし込まれている。こういった経緯から、ドイツサッカー協会やドイツ代表首脳陣がエフィ氏やBrain Activity、脳科学的アプローチをどれだけドイツサッカーに必要としていたのかが伺える。

現代サッカーにおけるBrain Activityの重要性

 世界の強豪国ドイツで、名だたるトッププレーヤーたちや指導者に脳科学的アプローチから指導するエフィ氏だが、今年7月には待望の来日が実現し、東京都内で約50名のサッカー指導者に向けた指導者講習会が実施された。そこで、今回エフィ氏の来日に尽力され、自身もシュトゥットガルトのトップチームコーチとしてブンデスリーガやUEFAヨーロッパリーグにもトップチームコーチとしてを経験された河岸貴氏にもお話を伺った。同氏はエフィ氏との親交が深く、来日の際もエフィ氏の通訳として日本滞在に帯同されている。

「サッカーのプレー面で言えば、現代サッカーは非常にコンパクトかつスピーディーで判断の速さが重要になってきます。プレミアリーグなんかでも非常にアスレティックな選手が増えてきているのもわかると思います。フィジカル面での強化を目指すクラブが増えてきたり、フィジカルコーチの役割が大きなものになってきていることに対して、あとはもう脳の強化や認知・判断力の向上くらいしかないんですね。鍛えるところを考えた時に、行き着くのはおそらくそこかなと思います。欧州トップレベルのサッカーは、ボールを持ってから考えるなんてしていたら遅すぎるんですね。認知から判断、実行までを同じタイミングで進めるくらいこのプロセススピードを上げないといけないというのを現代サッカー、特に欧州を見てて感じるところです。」

 今や欧州をはじめ、Jリーグでもトップチームにフィジカルコーチがいないクラブは存在しない。それに対して、脳科学的アプローチからメンタルやパフォーマンス向上を専門とする指導者がいないのが現状。プレーイングスキル、フィジカルの次に鍛えるべきはその全ての中枢ともいえる認知力や判断力、それを司る脳といったところだろう。

「ここ数年のドイツサッカーの傾向としてゴールを直線的に目指すことにかなりの重きを置いて、幅をあまり使わないです。少ないプロセスで縦に速いサッカーが展開されているんです。このサッカーをするのであれば、当然22人がピッチ上に密集します。ピッチをいっぱいいっぱい使うサッカーなら認知スピードや判断スピードはそこまで必要ないかもしれないです。コンパクトな陣形で奪ってから早くゴールを目指す現代のドイツサッカーには、エフィが言うブレインアクティビティで養うことのできる認知力や判断力の速度が必要不可欠なんです。なので、そういった判断の速さを求めるトレーニングはドイツサッカーではたくさんやるんです。コンパクトでスピーディーなサッカーですが、そこには機能美も兼備されている。いい意味で混沌さがありますよ。」

 幅を使わず、縦に早いサッカーが主流となっている現代のドイツサッカーでは、『いかに認知、判断、実行までのスピードを短縮できるか』が大きな鍵となっているのだ。フィジカルはもちろん、そこにプレーと判断のスピードも求められてきたブンデスリーガでは多くの日本人選手もプレーする。W杯日本代表メンバーにも選出された浅野拓磨(ボーフム)は、河岸氏の紹介もあってエフィ氏によるBrain Activity を実践しているブンデスリーガーの一人。

「拓磨くんは、僕がエフィの話やブレインアクティビティの話をすると『なるほどね〜』とすごく興味を持ってくれました。エフィがいるビーレフェルトと拓磨くんがいるボーフムは近い距離にあったというのもあり二人を繋げたんです。彼自身は、すぐに結果が出るトレーニングではないのでやり続けないといけないものだと今も懸命にエフィのエクササイズに取り組んでいますよ。奥川(雅也)くんはビーレフェルトにいるということで、彼もエフィのエクササイズを定期的に受けています。因果関係は分かりませんが、彼がエフィのエクササイズを受けはじめてからパフォーマンスも一気に上がって、ブレイクしたと思っています。彼は言葉が堪能ということもあり、エフィの意思や伝えたいことをうまく汲み取ってエクササイズしているからですかね。」

 河岸氏ご自身が長くブンデスリーガを見られ、世界最高峰でサッカーを体験されてきたからこそ重要と感じた、『認知、判断、実行の速さ』。その認知力向上こそがエフィ氏のBrain Activityにおける最も重要なパートであり、常に判断の速さを求められるドイツサッカーがエフィ氏を求め、Brain Activityに着目したのも深く頷ける。

 エフィ氏が来日直後、東京での指導者講習会を前に真っ先に訪れたのはまだ夏の暑さが残る港町 神戸。シュトゥットガルト・ハンブルグ在籍時代からエフィ氏のBrain Activityを実践し、Jリーグ復帰後もエフィ氏に教えを仰ぐ酒井高徳へのフィードバックも含めたパーソナルコーチングが目的である。チームとしてはもちろん、選手個人へのBrain Activityを用いたトレーニングやパーソナルコーチとしてフィードバックも行うのがエフィ流。自身の理論やトレーニングを、より日本に広めるためのプロジェクトを立ち上げた酒井高徳との久しぶりの対面には笑顔を交えながらも、冷静な分析と継続的なBrain Activityのトレーニングを行った。

「BrainActivityによるストレスマネジメントは、スポーツだけでなくいかなる組織においても重要視すべき項目。メンバーが最大のパフォーマンスを発揮できる組織にするために必要なことは、脳の構造を正しく理解してストレスがどのようにして生まれるのかの原理原則を知ること」

実際の試合映像を用いてのコーチングセッション、選手のストレス値を計測しそれを元にしたオリジナルエクササイズ。選手のその時々に合わせたエクササイズを行うことで、より選手の抱える課題に適切なトレーニングを行うのが、エフィ氏によるパーソナルコーチングの強みだエフィ氏はこういったプロフットボーラーへの集団的・個人的なBrain Activityを行う一方で、スポーツだけでなく企業の管理職や幹部に向けた講習会なども積極的に行っている。

さらに日本滞在終盤には、サッカージャーナリスト小澤一郎氏にも特別トレーニングを実施。エフィ氏によるBrain Activityが脳にもたらす効果や働きかけの解説、それを交えながらのエクササイズを体験した。

 今回エフィ氏が来日し、日本全国から集まった約50名のサッカー指導者を対象として行った指導者講習会はヴィッセル神戸 酒井高徳が立ち上げた新たなプロジェクトの第一弾企画。今後も指導者や選手たちといったサッカーファミリーを中心に企業向けにもエフィ氏のBrain Activityを体感し、実践する機会を創出していく予定だ。ドイツサッカーにおいて、脳科学を用いた理論とトレーニングを導入した第一人者エフィ氏。こういった新たなアプローチが、日本サッカー界や社会全体に伝染していく流れから目が離せない。

【お問い合わせ先】
「ブレインアクティビティ」プロジェクト運営事務局
https://footballcoach.jp/form/efthimios

By サッカーキング編集部

サッカー総合情報サイト

世界のサッカー情報を配信する国内最高峰のサッカー総合メディア。日本代表をはじめ、Jリーグ、プレミアリーグ、海外日本人選手、高校サッカーなどの国内外の最新ニュース、コラム、選手インタビュー、試合結果速報、ゲーム、ショッピングといったサッカーにまつわるあらゆる情報を提供しています。「X」「Instagram」「YouTube」「TikTok」など、各種SNSサービスも充実したコンテンツを発信中。

SHARE

SOCCERKING VIDEO