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新体制で舵取り役を担う37歳・長谷部誠…黒星発進のチームを復調へ導く存在に

今季開幕戦のドルトムント戦に出場した長谷部誠 [写真]=Getty Images

「何度も話させてもらっていますけど、ここ数年は毎年『今年が最後のシーズンかな』と思って何年も過ぎているので、特別な感情はないです。自分の中ではあまり先を考えてもしょうがないなと思っていますし、今チームのためにできることをやることしか考えていません」

 2021-22シーズンを控えた今月上旬、長谷部誠はドイツ15年目に向けた心境をこう吐露した。30代半ばを迎えたあたりから、毎年のように地元メディアに「今季で引退」「クラブに残留してスタッフに転身」といった報道が出るようになっていたが、本人は全く辞めるつもりなどなかった。

「実際、フィーリングとしては体のスプリントであったり、強度やフィジカル的な部分は落ちているかもしれないけど、サッカー選手としての自分の評価はこれまでより落ちているということは決してないと思う。『今が一番いいんだ』と自分の脳に叩き込みながらやっています。まだまだ成長していける部分はあるのかなと感じています」と、彼は欧州5大リーグの大舞台で戦い抜く確固たる自信を胸に新シーズンに挑もうとしていた。

 だが、今季公式戦初戦となった8日のDFBポカール1回戦で、3部のヴァルドホフ・マンハイム戦に0-2で苦杯を喫するという波乱の幕開けを余儀なくされた。日本でも昨季2冠の川崎フロンターレがJ3の長野パルセイロにあと一歩で敗戦というところまで追い込まれたのだから、下克上というのは起こり得る。気を取り直して14日のブンデスリーガ開幕戦、ドルトムント戦に向かった。

 この一戦で長谷部はキャプテンマークをつけてボランチで先発。ジブリル・ソウとのコンビで中盤のかじ取り役を担ったが、マルコ・ロイスやアーリング・ハーランドを擁するタレント軍団の壁は高かった。

 最初の失点シーンは23分。長谷部がDFオビテ・エヴァン・ヌディカに出したパスを相手に奪われたのが発端だった。前線に抜け出したハーランドを背番号20は猛然と追走し、後ろからタックルに行ったが止められず、最後はロイスに決められた。

 それでも、4分後には長谷部のいいプレスがボール奪取の起点になり、同点弾をゲット。これで試合が落ち着けばよかったが、ドルトムントが攻撃の手を緩めることはなかった。トルガン・アザールとハーランドに立て続けにゴールを許して1-3に。フランクフルトは2点のビハインドを背負って試合を折り返した。

 新指揮官、オリヴァー・グラスナー監督は後半を迎えるに当たって鎌田大地ら3人を下げ、新たな攻撃カードを投入。反撃を試みた。けれども、一度失った流れは引き戻せず、瞬く間に4点目を献上。そして長谷部が退いた直後の70分に5点目を失った。結局、開幕節は2-5の大敗。ボランチとリベロを担う37歳の大ベテランにとっても、この大量失点はいただけない結果だろう。ドイツ15年目はいきなり苦境からのスタートとなってしまった。

「監督が代わればやり方、ボールへのアタックの仕方や戦術のディテールも変わる。グラスナー監督は細かい部分を試合でもミーティングでもすごく追及する。非常に頭を使わなければいけないサッカーをすると感じています。若い選手にしてみれば、監督から言われる部分が物凄く多いので、頭で考えてしまうところがあるでしょうけど、そこを経験ある自分のような選手がうまくサポートして、彼らのよさや勢いを消さないようにしないといけない。そう思っています」

 長谷部は新指揮官のアプローチをこう説明していたが、始動から4~5週間の段階では、チーム全体が細かい戦術や連携面をまだ消化しきれていないのかもしれない。新体制発足後のチームがそういった足踏み状態に陥ることは往々にしてある。戦術理解のスピードを上げ、それをピッチ上の実戦にどう落とし込んでいくのか…。百戦錬磨のリーダーを中心にいち早く解決策を見出していかなければいけないのは確かだ。

「ブンデス上位6チームすべて監督が代わったのは今季の大きなポイント。監督が代わればサッカーもガラっと変わるので、新しい雰囲気が見えてくると思います。実際、バイエルンなんかは多くの代表選手がいるので、ユーロで選手の合流が遅れたりして、あまりいい準備ができていないように見えます。この8年くらいはバイエルンが抜けている状態が続いているので、ほかのチームが頑張らないといけないですね」

 長谷部はこんな話もしていたが、確かに開幕節は昨季王者のバイエルンがボルシアMGとドロー発進を強いられ、同2位のライプツィヒがマインツに0-1の黒星と予想外の展開になっている。遠藤航がキャプテンに就任したシュトゥットガルトが暫定首位に立った状態だが、ここからどういう展開になるのか全く予想がつかない。それだけに、昨季5位のフランクフルトが巻き返すチャンスは大いにあると言っていい。

 9月からはヨーロッパリーグ(EL)もスタートする。今季同様、DFBポカール1回戦敗退を強いられた18-19シーズンも、ELではベスト4まで勝ち残る大躍進を見せていて、その再現が望まれるところ。代表引退から丸3年が経過したが、長谷部の多忙な日々は依然として続いているのだ。

 ドイツには今季から浅野拓磨が復帰し、田中碧や伊藤洋輝ら若い世代も参戦するなど、日本人選手が増加傾向にある。彼らが目指すべき存在でもある長谷部にはこれからも堂々とトップを走り続け、模範となってほしいものである。

文=元川悦子

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