2部天王山で先発出場した酒井高徳 [写真]=Bongarts/Getty Images
ブンデスリーガ2部第29節が15日に行われ、DF酒井高徳とFW伊藤達哉が所属する2位のハンブルガーSV(HSV)はアウェイで首位のケルンと対戦。勝ち点「7」差で迎えた天王山は1-1のドローで終わった。
HSVは3試合未勝利で首位との大一番を迎えた。終盤の失速を招いた原因を酒井は「(チームの)自信がなかった」と説明する。
「自分たちで『この相手だったら勝てるだろう』と思ったり、ちょっと緩くなったりするところがあった。自分たちが120パーセント出したら試合で圧倒できて、勝てるということを忘れて、『なんとなく試合をしたら勝てる』という感じの雰囲気が流れてしまっていて、それでうまくいかなくなった。(昇格争いの)シチュエーションが近くなってくると、今度は自分たちで『ホームで絶対勝たないといけない』、『下位相手に勝たないといけない』といういろんなプレッシャーを感じて、少し押しつぶされてしまった。そこから自信がなくなって、ミスを怖がって、いろんな連鎖によってチームの雰囲気が少し落ち込んでしまった」
大事な天王山でも、その“雰囲気”が出てしまう。前半は立ち上がりからホームチームの勢いに圧倒されて、26分にはCKからドミニク・ドレクスラーに押し込まれて先制を許す。先発出場した酒井も、「(チームは)前半の入りが良くなくて、自分としてもあまり良くなかった」と苦戦を振り返った。
「全体的に見ていてボールが入ったときに、誰かが何かをするのを待っていたり、見ていたりという感じだった。後半は裏に出る動きや連動した動きとかがスムーズになってきたけど、前半はそのへんで簡単なミスが多かった。それが試合に入り込めなかった要因かなと思う。自分的にも動きが固かった部分もあったので、そこは反省したい」
この試合に負けると、残り5試合で首位との勝ち点差は「10」となり、2部優勝は厳しくなってくる。3位のウニオン・ベルリンとの差も「2」となり、自動昇格圏内のポジションすら危ない状況となる。そんな負けられない一戦だけに、HSVは後半から主導権を奪い返し反撃に出ると、終了間際の85分にCKで中央の混戦からマヌエル・ウィンツハイマーが押し込んで同点に持ち込んだ。
81分に途中交代となった酒井は「できればもちろん勝ちたかった」と逆転できなかったことを悔やんだが、それでも「後半は主導権を握ってサッカーができたのですごくよかった」と手応えもつかんだ。「不甲斐ないパフォーマンスや試合が全体的に続いていたので、今日はそれを払拭するようなチームのパフォーマンスや試合を見せられたと思う。ラストスパートをかけられるようないい一歩になったと思うので、今日ぐらいしっかり気持ちを込めてサッカーをできればいい」
HSVにとっては勢いを取り戻す価値ある結果となったようだが、主将のアーロン・ハントなどチームの支柱をケガで欠く中で、白星からは4試合も遠ざかっている。そんな苦しい状況で、また酒井がキャプテンマークを巻く機会も増えてきた。「今日は若いチームで、精神的に引っ張ることができる選手がいなかった。僕はプレーで引っ張れる選手じゃないので、そういうときは結構しんどくなってしまうときもあるし、自分に重荷を課せてしまうところもたまにある」と心境を吐露。
それでも、昨夏に主将を辞任するまで2年近く培った経験から、「どういう要領でやればいいかわかっているし、チームにできることを自分がやるだけだと思う」ときっぱりとした表情で言う。「その役割を担うためにチームに残ったというのもあるので、それは仕方ないし、自分も喜んでそこを引き受ける気持ちはある」。シーズン大詰めの時期に、昇格へ向けて酒井がチームの先陣を切る。
By 湊昂大