2018.09.08

フュルトで挽回期す井手口、移籍の理由を語る「すぐに答えは出ていた」

井手口陽介
今季はフュルトにレンタル移籍した井手口陽介 [写真]=鈴木達朗
ベルリンの大学でドイツ文学部を卒業後、サッカーが繋いでくれた縁によりスポーツレポーターおよび翻訳家としてドイツ国内で活動中。

 8月21日から南ドイツのグロイター・フュルトに加入したMF井手口陽介。クラブの広報から「イデグチの身の回りが落ち着くまでは待ってほしい」との連絡を受けてから2週間、ようやく地元および日本の報道陣に取材許可が降りた。

 取材は通訳を介して行われ、練習前の限られた時間の中で姿を現した井手口は、静かに言葉を選びながら質問に答えた。フュルトに来た理由を尋ねられると、「リーズに行った時から、あまり戦力として見られていないという実感はあったので…。『(クラブから)出たい』という気持ちがあった中で、声をかけてもらった。僕の中では、すぐ(答えは出た)」と言葉をゆっくりと紡いだ。

 他のクラブからのオファーがあった中で、フュルトを選んだ理由には、自身のプレースタイルとドイツとの相性の良さが見て取れたからと話す。「サッカー面で、前からドイツはハードワーカーが生きるというのは聞いていた。スペインではそういうことがなかったので」。フュルト合流後は「僕自身は、海外に来て一番自由にできている。(スペインに比べて)戦術とかはそんなに厳しいわけではなく、ある程度の規律を守って、自由にプレーすれば良いのかな」とこの2週間でのピッチ上での実感を振り返った。

 同年代の選手も多く、ブンデスリーガ2部とはいえ、小都市クラブが持つのアットホームな雰囲気は井手口にとっても馴染みやすいようだ。チームに合流した感想を聞かれると、「楽しいです」という言葉も聞かれた。実際に練習中は他のチームメイトが“グチ”と積極的に井手口に話しかけ、クロアチア人のダミル・ブリッチ監督の指示を理解できるようにサポートしている姿が頻繁に見られた。

 自身も外国人選手としてドイツにやって来て、30年も生活しているブリッチ監督は、外国でプレーする難しさを身をもって良く知る一人だ。それだけに、練習後の談話では、「忍耐」という言葉をキーワードのように繰り返す。「とても興味深い選手だ。彼に時間を与えたい。チームに馴染んで、ドイツのサッカーにも適応しなければならない。我々は忍耐強くなければならない」。さらに指揮官は、シーズン前の準備をしっかりできていれば、チーム内での立ち位置は全く違っていた評価しつつ、現状の状態を説明した。「彼が半年間、サッカーの試合から離れていることは、我々にも見て取れた。彼のリズムを取り戻さなければならない。“グチ”は日に日に良くなっている」。

 その一方で、「彼の創造性を制限したくはないんだ。そうではなく、ピッチ上でそれを最大限に発揮できるようにしたい。彼がその自由を存分に活かしてプレーできるようにしたい」と中盤での役割を説明した。「もちろん、彼のポジションにおける守備のタスクと、その連動性における役割を担わなければならない。状況によっては、彼も点を取ることができる。2列目からのミドルシュートも高い能力を持っている。彼にそういったプレーも要求するし、チームも必要としている」。

 練習中は、中盤から逆サイドに展開するボールを井手口に要求していたブリッチ監督は、質の高いボールには何度も「良いぞ!」と声をかけ、用意したグラフィックを見せながら図でポジショニングや動き方の説明を行う工夫も見せており、合流したばかりの外国人若手たちへの対応にも気配りが見られる。練習後には、訪れたファンの一人の話に15分ほど付き合うなど、丁寧な人柄だ。そのブリッチ監督から見ても、井手口の性格は好感が持てるようだ。

「彼は性格的にも良いヤツだ。良いチームを選んだと思うよ。もし、このチームで欧州に適応できなかったら、他のどのチームでそれが成功するか、わからないな。我々は良いチームだし、本当に性格の良い選手が揃ったチームだ。とりわけ、若手選手にとっては、特に適しているクラブだ。我々には、本当に多くの若手選手がいる。彼はチームの中でも好かれているし、彼もチームのこと気に入っていると思う。彼はある種のシンパシーを集める存在だ」とフュルトというクラブの特徴が井手口に適していることを紹介してくれた。

 現在のフュルトは、若手を起用しながら育てることで、ドイツ国内のみならず、欧州のマーケットから注目を集める存在になりつつある。そのクラブを迷いなく選んだ井手口は、「この苦い経験を、半年以上のこの苦い経験をつなげて…、『あの経験があったから、今に生きている』というように出せれば」と言葉を絞り出した。出場機会を貪欲に狙う若手選手にとって最高のクラブで、挽回を期す。

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