2016.05.13

ブンデス史上最年少…ホッフェンハイムを奇跡の残留に導いた28歳の青年監督

ユリアン・ナーゲルスマン
ホッフェンハイムを残留に導いた青年監督・ナーゲルスマン(左) [写真]=Bongarts/Getty Images
ドイツ在住。ライター兼サッカー指導者

 7日に開催されたブンデスリーガ第33節、インゴルシュタットに勝利したバイエルンが史上初のリーグ4連覇を達成した陰で、ドイツ北中部の都市ハノーファーでも1人の若者が歓喜の輪に加わっていた。その男の名はユリアン・ナーゲルスマン――ホッフェンハイムを奇跡の残留へ導いた張本人である。

 フーブ・ステフェンス前監督が心臓疾患により辞任することが突如発表され、来シーズンからの指揮官就任が内定していたナーゲルスマンに前倒しでバトンが回ってきたのは、2月11日のこと。28歳6カ月というその年齢は、ブンデスリーガ史上最年少であり、世界を見渡しても、24歳1カ月でNBAデトロイト・ピストンズを率いたデイブ・ディバッシャー氏、また1979年に26歳2カ月でNHLワシントン・キャピタルズを指揮したゲイリー・グリーン氏に次いで、スポーツ史歴代3番目の若さだ。

ナーゲルスマン

ブンデスリーガ史上最年少でホッフェンハイムの指揮官に就任したナーゲルスマン監督 [写真]=Bongarts/Getty Images

 もともとナーゲルスマンは、選手としてU-23アウクスブルクのセンターバックを務めていた。しかし加入初年の2007-08シーズン、ひざの半月板と軟骨を損傷する大ケガを負い、2度にわたり手術を行ったものの、「このままプレーを続けると重度の変形性ひざ関節症になる恐れがある」という過酷な現実を突きつけられ、20歳で現役引退を余儀なくされている。

 一時はサッカーから身を遠ざけることも考えていたナーゲルスマンに救いの手を差しのべたのは、日本代表MF香川真司が所属するドルトムントのトーマス・トゥヘル監督。当時U-23アウクスブルクで指揮官だった同監督の発案により、対戦相手のスカウティングという役割を与えられたナーゲルスマンは、それがきっかけで指導者という道に心を惹かれ始めた。現在、かつての師と同じ土俵に立っているブンデスリーガ史上最年少監督は「トゥヘルの下で私は様々なことを学んだ。一見簡単なパス練習でも常に頭を使わなければならなかったし、彼はいつも選手に2倍の要求をしていた。彼は私の職業選択に大きく影響しているよ」と、自らの転機について回顧する。

トゥヘル

現在ドルトムントを率いているトゥヘル監督の存在が、ナーゲルスマン監督に大きな影響を与えた [写真]=Borussia Dortmund/Getty Images

 引退から半年後、指導者業は本格的にスタートした。08-09シーズンから2年間、ユース時代に自身がプレーしていた1860ミュンヘンのU-17チームでコーチや監督を務め、現在も所属するホッフェンハイムにやって来たのは2010年夏。同クラブでU-17を指揮した後、12-13シーズン後半戦はトップチームのコーチにも抜擢され、その翌季にはU-19ホッフェンハイムの監督となった。そこからの2シーズン、彼はU-19ブンデスリーガで優勝と準優勝を1回ずつ獲得している。

 卓越した手腕と史上最年少記録――そんな背景もあり、ナーゲルスマンのホッフェンハイム監督就任のニュースにドイツサッカー界は沸いたが、当の本人は周囲の喧騒に巻き込まれるわけにはいかなかった。なぜなら、今シーズン前半戦を終えた段階で、ホッフェンハイムは2勝7分8敗の最下位。その後、ステフェンス前監督が辞任するまでの3試合でハノーファーを得失点差で上回り、順位を1つ上げてはいたものの、第20節終了時に16位ブレーメンとは5ポイント差をつけられていた。窮地に陥っていたチームを救うことが、彼に課せられた最大のミッションだった。

 しかし、蓋を開けてみると、戦術家と謳われるトゥヘルの薫陶を受けた男は、相手の戦い方によって「4-3-3」、「4-2-3-1」、「3-1-4-2」、「3-4-3」、「3-5-2」など複数のフォーメーションを使い分け、白星を重ね続ける。その就任以降、ホッフェンハイムはリーグ戦13試合で7勝2分4敗の勝ち点23。同期間でこれを上回るのはバイエルン、ドルトムント、レヴァークーゼンの3チームしかいないという事実を鑑みれば、ナーゲルスマンによるチームの立て直しが成功したか否かは、一目瞭然である。

ナーゲルスマン

見事チームを立て直し、残留を果たした [写真]=Bongarts/Getty Images

 この先何十年と続くキャリアの中で、「ブンデスリーガ最年少監督」という記録が霞むほどの金字塔を次々と打ち立てていく可能性は十分にある。野心家であることを自認するナーゲルスマンの旅は、まだ始まったばかりだ。

文=鈴木智貴

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