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新天地ハノーファーで困難に直面する山口蛍…盟友・清武のサポートで現状打破へ

2016.02.23

新天地ハノーファーで壁に直面する山口蛍。復帰した清武の支えで現状打破を目指す

 清武弘嗣が昨年11月以来の復帰を果たしながら、21日のアウクスブルクとの下位対決に0-1の苦杯を喫したハノーファー。司令塔は「失うものは何もない。思い切ってやって落ちるなら仕方ない。悔いのないようにプレーしたい」と語気を強めていたが、これでリーグ戦8連敗。ブンデスリーガ残留に向けていよいよ後がなくなってきた。

 今のチーム状況、そして自身の状況に焦りをにじませるのが、この冬にセレッソ大阪からドイツ挑戦を決意した山口蛍だ。

 冬の移籍市場で新天地に赴いた彼は、後半戦2試合目となった1月30日のレヴァークーゼン戦でいち早くブンデスリーガデビューを飾った。ポジションは不慣れな右のインサイドハーフだったが、持ち前の球際の強さを生かして守備面で貢献。及第点の結果を残した。だが、2月6日のマインツ戦では同じポジションで先発出場しながら、味方との連携不足が響いたのかミスが重なり、わずか33分で交代を命じられてしまう。その後の2試合はベンチ入りも出番なし。2部降格危機に瀕するチームの救世主になる以前に、「いかにして出場機会を得るのか」という大きな壁にぶち当たっているのだ。

「チーム状態も良くないので、正直、そんなにすぐに試合に出られるとは思っていなかった。早いうちに出れたのはポジティブに捉えてます。ただ、2試合目ですぐに代えられたし、やっぱり厳しいなとは感じています。セレッソでもレヴィー(クルピ元監督)が相当厳しかったんで、ダメだったら前半で交代させられることもあった。当時のことをちょっと思い出したりすることもありますね。もちろん(監督から)与えられたポジションでやることは大事だし、そこに適応していかなくちゃいけないのも事実。だけど、やっぱり自分が真ん中の選手であることを練習から周りにも認めてもらわなくちゃいけない。そういうプレーを出して、やっていくしかない」

 自身の置かれた現実を冷静に客観視している山口だが、状況は芳しくない。後半戦からハノーファーを指揮するトーマス・シャーフ監督は、4-2-3-1をベースにしていた前任のミヒャエル・フロンツェック監督とは異なり、アンカーを置いたダイヤモンド型の中盤を用いた4-4-2を好んでいる。アンカーにはケガで前半戦の大半を欠場したアンドレ・ホフマンが主に起用され、前半戦にボランチをやっていたサリフ・サネやマヌエル・シュミーデバッハ、エドガー・プリプらがサイドハーフで使われている。山口も同じように位置づけられたようだが、レヴァークーゼン、マインツとの2試合で「右サイドの選手ではない」と判断された格好だ。だからこそ、本人が言うようにボランチで出られるように一からアピールしていくしかない。

 最近の紅白戦で、山口はダブルボランチの一角に入るケースが多いという。2月16日の練習で行われた紅白戦では1本目はサブ組でイヴェル・フォッスムと、3本目は主力組でシュミーデバッハとそれぞれコンビを組んでいた。2本目はサブ組の左サイドバックに入れられたが、これはあくまで人数の都合だったようだ。

 ゲームを通して指揮官は「ヤマ、ヤマ」と山口を繰り返し呼んでポジションの修正を図り、周囲と連動させようと仕向けていた。実戦ではまだこの形にはトライしていないが、ハノーファーの停滞感を考えると近い将来、布陣変更に踏み切る可能性もゼロではない。そこが山口にとっての大きなチャンスになりそうだ。

「自分の武器は球際の強さやボールを奪うところ。最初はなかなか自分のタイミングで行けなかったけど、今は練習でもかなりガツガツ行けるようになってきました。コーチからも『もっとどんどん取りに行け』と言われるし、自分の特徴がそこにあると分かってくれていると思うので、練習から出していきたいという思いはあります。ただ、僕は新しい環境に行くと、どうしても遠慮してしまいがちなんで。(アウクスブルク戦、マインツ戦の)2試合を見た父(憲一さん)にも『遠慮せずやれ』と言われて。性格的な部分もあると思うんですよ。代表でも慣れるまでにすごく時間がかかったし、そこは自分の課題でもあるので、何とか克服しなきゃいけない。練習から下を向かずに黙々とやっていくしかないと思います」

 チームへの適応スピードを加速させようという意識を強めている彼の大きな助けになるのが、清武の存在だ。チームの大黒柱は「俺が待ち望んだボランチがやっとハノーファーに来た。もちろんマヌ(シュミーデバッハ)やサリフ(サネ)もいい選手ですけど、ホタルは常に俺のことを見てくれている。あいつがボールを持てば俺は前に顔を出せるし、また一緒にプレーできて本当にありがたい」と、かつてC大阪でともにプレーした日本代表との競演を前向きに捉えている。紅白戦でも2人が絡む場面が随所に見られ、息の合ったところを印象づけていた。山口も「キヨくんがケガから戻って、一緒のチームでやることが増えてきた。そうなると自分のリズムも全然違うし、気持ち的な余裕も生まれてきた。僕にとってはすごくプラスだと思います」とやりやすさを感じている様子。彼らに加え、右サイドバックの定位置を確保している酒井宏樹の日本人トリオがそろってピッチに立ち、チームを泥沼状態から救い出すことができれば最高だ。チームになじみ、自分の良さを出すことで道は開ける。いずれにしても山口が現在直面する壁を乗り越えるためには、ボランチとして持てる能力を100パーセント出し切ることが一番の近道となる。

文・写真=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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