2015.06.22

歓楽街・ドクロ・熱いファン…宮市の加入するザンクト・パウリってどんなクラブ?

ドクロのロゴが描かれたフラッグを掲げるザンクト・パウリのサポーター [写真]=Bongarts/Getty Images
ドイツ在住。ライター兼サッカー指導者

文=鈴木智貴

 様々なネオンで彩られたドイツ最大の歓楽街であるハンブルクのレーパーバーン。そこからわずか500メートルのところに存在するのが、FW宮市亮の新天地FCザンクト・パウリだ。かつて尾崎加寿夫氏が1シーズン在籍したことから、日本のサッカーファンにもある程度知られた存在であのクラブだが、同じハンブルクに拠点を置き元日本代表FW高原直泰が所属していたハンブルガーSVとは、あらゆる点で対極をなしている。

 まず、最も大きな違いはその経営規模だ。過去にブンデスリーガを3度制し、チャンピオンズリーグの前身にあたるチャンピオンズカップ優勝も成し遂げた“北の雄”ことHSVは、2013-2014シーズンに1億2030万ユーロ(168億4200万円)の売上を記録しているが、ザンクト・パウリは3073万ユーロ(43億220万円)と4分の1ほど。また前者の本拠地は5万7000人を収容できる近代型スタジアムであるのに対し、後者のミレルントーア・シュタディオンは2万9063人と約半分で、お世辞にも綺麗とは言い難い。

 そして一般的なファン層イメージも、HSVが市民階級である一方、ザンクト・パウリはもともと労働者階級の信奉者が多く、左寄りの思想を掲げ、サブカルチャーを愛するといったもの。しかし、そんな異端な存在であるからこそシンパシーを抱く者は多く、世界でも稀なドクロマークをフラッグに描く同クラブは、ドイツ全土に熱狂的なファンを持っている。

 彼らがいかに“小さなビッグクラブ”であるか――それを象徴するこんなエピソードがある。

 2001-2002シーズンにブンデスリーガ最下位となったザンクト・パウリは、その翌年も同2部を17位で終了し、2シーズン連続での降格が決定。そしてこの2002-2003シーズン後、資金繰りの悪化から3部リーグで戦うためのライセンスがドイツ・フットボールリーグ社(DFL)から発行されず、4部への降格危機に立たされてしまったのだ。

 同社が設けた支払期限は目前に迫っており、提示された金額は200万ユーロ(約2億8000万円)という大金。しかしこれに立ちあがったのは、他でもないサポーターだった。

 練習場の一部をハンブルク市へ72万ユーロ(約1億80万円)で売却すると、ファンからは現金での寄付20万ユーロ(約2800万円)が集まり、クラブのロゴの下に『Retter(※日訳:救世主)』と書かれたチャリティー目的のTシャツは全国で14万枚が飛ぶように売れ、手取り90万ユーロ(約1億2600万円)を確保。

 さらに地元のビール会社『アストラ』は「アストラを飲もう ザンクト・パウリを救おう」というキャンペーン(ビールケース1箱につき1ユーロの寄付金)を展開し12万ユーロ(約1680万円)が贈呈され、レーパーバーンを含む周辺地区の飲み屋でも「ザンクト・パウリのために酔いつぶれよう」と銘打ち、ビール1杯に50セントの寄付金を設定。2万ユーロ(約280万円)が集まった。

 そして、社会活動に熱心なバイエルンのウリ・ヘーネス社長(当時)がミレルントーア・シュタディオンでの慈善試合を提案し、ノーギャラでハンブルクまで遠征。同試合での収益金27万ユーロ(約3780万円)は、そのままザンクト・パウリの懐へ届いた。

 こうして目標金額は瞬く間に達成され、同クラブの4部降格は寸前のところで食い止められたのである。

 今シーズン、なんとかブンデスリーガ2部残留を果たしたものの、第26節まで最下位にいたザンクト・パウリだけに、来シーズンも厳しい戦いになることは十分考えられる。同クラブ補強第1号となった宮市は、上述のような熱いファンにとって、新たな『Retter』となれるだろうか。

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