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【インタビュー】ビジャが引退後も日本の育成に関わる理由とは? 久保建英は「欧州で一時代築く」

取材はオンライン会議ツールで実施

 多くの栄光を手にし、現役最後は日本のヴィッセル神戸でのプレーを選択した元スペイン代表FWダビド・ビジャ。2019年いっぱいでピッチから離れた彼は現在、『DV7 SOCCER ACADEMY』という少年サッカースクールを母国スペインやアメリカなどで展開しており、日本でも東京、千葉、神奈川で3校のスクールを開校している。

 そのDV7が、現在『Road to Spain 2020』として、日本からはじまるスペインへのプロ選手挑戦プログラムの募集をはじめている。

 18歳以上のサッカー経験者が対象で、7月24日締め切りの書類審査を経て、トライアウトを実施。ビジャをはじめとしたスタッフの審査を経て、スペイン現地のチームでのトライアウトに参加できる。

 なぜ、日本での育成プログラムをスタートさせたのか、自身は今後どういったビジョンを描いているのか。また、日本サッカーのポテンシャルをどう見ているのかを聞いた。

インタビュー=小澤一郎(サッカージャーナリスト)

■日本には多くのタレントがいる

子どもたちと交流している際のビジャ

―――2019シーズンいっぱいで現役を引退してから、どのように過ごされていますか?

ビジャ 元気にしていますよ。自由を謳歌しながらも、自分のプロジェクトに多くの時間を割いています。もちろん、コロナウイルスの問題で、予定していたことの全ては実現できていません。帰国後はマドリードで暮らしていますが、今は夏のバカンスで故郷のアストゥリアス(スペイン北部)で家族との時間を楽しんでいます。

―――数カ月前から日本でのアカデミー・プロジェクトが始動しました。すでに日本で3つのアカデミーが開校しています。最初の印象はいかがですか?

ビジャ とても満足しています。コロナウイルスの問題で開校時期が少し遅れ、当初は私も3月に日本を訪問する予定でした。しかし、日常が戻ってきたことで少しずつ生徒数も増えています。今は早く国外移動ができる日常が戻り、日本を訪問し、日本にいる全てのアカデミー生たちと一緒にこの素晴らしいプロジェクトをさらに推し進めていくことを望んでいます。

―――現在、世界7カ国でDV7アカデミーを開校されていますが、なぜ今回は日本だったのでしょう?

ビジャ 新しい国でアカデミーを開校するにあたっては3つの重要なポイントがあります。まずは私がその国と何らかの関係を持っていること。すでに訪問したことがある、ビジネスを展開したことがあるなどで、日本の場合は選手としてプレーしたことがある国でした。2つ目は、その国の育成環境においてタレントがいるということです。3つ目は、互いに信頼関係のあるローカルパートナーがいること。どうしても距離がある分、ローカルパートナーが担う日常の活動は重要ですし、パートナーを信頼できるかどうかはとても重要です。日本においてはまず、私が1年プレーした中で分析した結果、タレントが多くいることを理解しました。そして最後に、日本で素晴らしい仕事をしてくれるチームができたことを確信しました。これら3つの要素が全て合致し、DV7グローバルアカデミーを日本でも展開することに決めました。

―――プロジェクトにおいてはビクトル・オニャテさん(DV7 Group Co-Founder、スペインサッカー協会登録仲介人、元バレンシアCF幹部)がすべてに関わっており、キーパーソンの一人ですね。

ビジャ その通りです。彼なしでは何も実現していません。ピッチ上でのことは私の方が精通しているかもしれませんが、逆に私が知らないマーケティングや経営といった他の全ての分野は彼が取り仕切ってくれています。本当に彼なしでは存在しないプロジェクトばかりですし、全ての戦略は彼あってのものです。

―――ヴィッセル神戸でプレーしていた時、日本のサッカー、特に育成をどのように見ていましたか?

ビジャ 日本には多くのタレントがいます。サッカーを始める時期から子どもたちはボール扱いが上手く、低年齢から良い指導がなされていることが、うかがえます。その意味では、かなりスペインに近い環境にあると思いますし、サッカーの理解という意味も似たものを感じます。実際、年々ヨーロッパで活躍する日本人選手が出てきていますし、彼らはヨーロッパでプレーする用意があることを披露しています。今シーズンのマジョルカでの久保建英選手がその一例です。日本で目にしたのは、そうしたサッカーの質の高さです。

■恩返しのため、できる限り多くの選手をサポートしたい

ダビド・ビジャ

―――新たに「Road to Spain 2020」というプロジェクトを立ち上げましたが、どういうプロジェクトなのでしょうか?

ビジャ 何よりもまず、スペインのクラブと契約したいと考える日本人選手にチャンスを与えることが目的です。国内でのトライアウトを通してタレントを絞り、スペインのクラブでプレシーズンのトレーニングを経験してもらうことによって、最終的にはスペインのクラブが獲得を判断します。もしプレシーズンで良いプレーを披露することができれば、スペインのクラブを契約することができます。残念ながら契約を獲得するまでには至らなかったとしても、スペインのクラブでのトレーニング経験を積むことができます。そのために私たちはかなりのリソースをこのプロジェクトに割いていますし、上手くいくことを願っています。また、今回のプロジェクトが毎年恒例となるための最初の一歩となることも願っています。

―――どういうプロセスになるのでしょうか?

ビジャ まずは(18歳以上のサッカー経験者に)応募してもらうことから始まります。一次審査である書類審査はDV7サッカーアカデミージャパンのディレクターコーチであり、UEFAプロライセンス所有者であるアレックスを筆頭に、日本にいるコーチ陣が担当し、次のステップに進んでもらいたいタレントを選抜します。現状では二次、三次審査である2日間の日本でのトライアウトをどのくらいの規模で行うかは決めておらず、あくまで応募してもらう選手の数とタレントの質を見た上で判断します。日本でのトライアウトは私もリモートですがしっかり審査に入り、そのうえでスペインに挑戦してもらう選手を選びます。

―――このプロジェクトでは、あなたの家族がオーナーを務めるUDジャネーラ(スペイン4部)が現地での受け入れ先となっています。どのようなクラブですか?

ビジャ 受け入れ先のクラブについてはまだ調整中です。UDジャネーラは我々との信頼関係があるクラブですし、少し前からいろいろな共同プロジェクトを進めています。受け入れ先がどういうクラブになってもスペインで素晴らしい体験ができることは約束します。それから、トレーニングするのは一つのクラブであっても、そのトレーニング参加時には近隣のクラブ関係者やスカウトにも見に来てもらいますので、受け入れ先のクラブ以外からのオファーが届く可能性もあります。

―――とても良いアイディアですね。特にアストゥリアス州でトレーニングを積むという考えは素晴らしいと思います。観光客もさほど多くないですし、落ち着いてサッカーに集中できる土地だと思います。

ビジャ その通りです。素晴らしい経験ができます。スペインのクラブでトレーニングをする経験や、契約を勝ち取ることができるかどうか以外にも、スペインでの日常の全てが選手にとって貴重な経験となることでしょう。

―――通常あなたのような実績ある元選手であれば、名前や実績を使い、もっと容易にこうしたプロジェクトを実施できそうですが、なぜこれほどまでにコミットしようとしているのですか?

ビジャ 引退前から常々、口にしてきたのは「引退したらできる限り多くの選手の夢を叶えるサポートをしたい」ということです。私は幸運にも育成年代で多くの人たちに支えられ、プロ選手にまで到達することができました。その恩返しのためにも今度は自分ができる限り多くの選手をサポートしたいと考えています。今はいろいろなプロジェクトを同時進行で進めていますが、それらの目的は多くの子どもたちの夢の実現をサポートすることです。彼らの夢が実現するためにも、様々な形で彼らに手を差し伸べたいと考えています。

―――そうした素晴らしい考えはプロとしてのキャリア、スタートに関係しているのでしょうか? あなたはスペインでも育成に定評あるスポルティング・ヒホンの下部組織出身で、プロデビューはスポルティングが2部在籍時。必ずしも華やかなキャリアスタートではありませんでした。

ビジャ そうですね。大きく関係していると思います。もちろん、レアル・マドリードやバルセロナのような下部組織に所属することは素晴らしいことですが、多くの選手はそうではないクラブで育ちます。私の場合、比較的遅い年齢(17歳)でスポルティングのカンテラに入りました。私の成長プロセスにおいては、幼い時期に有名ではないクラブでも良い指導を受けることができました。サッカーにおいて、プロに到達できるのはごく一握りで、とても難しいことですが、私たちはこのプロジェクトを通して子どもたちに良い成長プロセスを提供したいと考えています。結果としてできる限り多くの子どもたちをサポートし、できる限り多くのプロ選手の成長プロセスに関わりたいと考えています。

■久保建英がヨーロッパで一時代を築くのは間違いない

久保建英

[写真]=Getty Images

―――スペインにおける現在の育成トレンドをどのように見ていますか? 例えば年々、ヨーロッパでは(海外移籍可能な)16歳になると国外のビッグクラブに移籍する選手が増えており、クラブのスカウティングも年々低年齢化しています。

ビジャ サッカーはインターナショナルなスポーツです。確かにスペインには競争力の高いリーグがありますが、それは各クラブが競争力を高めるために世界中で選手を探し、選手を獲得しているからです。もちろん、他の国も同じように努力していますので、選手の獲得競争は激化しています。選手個人としても、チームとしても、そしてリーグとしてもより高い競争力を目指しての結果だと思いますので、私は今のトレンドを好意的に捉えています。グローバルなスポーツですからもっと発展していくと考えています。

―――先ほど、一例として名前を挙げられましたが、ここ最近の久保選手のプレーをどう見ていますか?

ビジャ マジョルカはチームとしては苦しんでいましたが、タケ(久保建英)はスペクタクルな状態です。日々我々を驚かせ、日々新たなものを披露してくれています。まだ若いですが、違いを生み出すことのできる選手です。彼には素晴らしい未来が待っています。共通の知人もいて、何度か話したこともあるので、今の活躍をとても嬉しく思っています。素晴らしい才能を持った選手で、ヨーロッパで一時代を築くのは間違いありません。もちろん、日本サッカーにおいても一つの時代を作るでしょう。

―――久保選手は日本人ですが、バルセロナのラ・マシア(育成組織、施設などの総称)で育った選手です。日本からも彼のような選手を輩出できると思いますか?

ビジャ はい、できると思います。指導の問題ですから。ラ・マシアは長い年月をかけて今の結果を出すために地道な指導を続けてきたので、バルセロナに肩を並べることは難しいでしょう。しかし、私たちのDV7アカデミーに限らず、日本にはどの地域にもしっかりとした環境や指導がありますから、選手をプロに送り出すことを目標に、全国で今のようなしっかりとした指導を続けていけば、世界的な選手がもっと出てくると考えています。

―――日本でのDV7の目標は何でしょう。

ビジャ できる限り多くの選手をサポートして、プロ選手を育てることです。それから彼らの人生において良い経験を積ませることです。アカデミーの大半の選手がプロになれないことは理解しています。先ほど述べたように、プロの世界に到達できる選手の割合がとても低いことを理解しているからこそ、私たちが関わる選手たちにはその期間、素晴らしい経験をしてもらいたいと思っています。ただ、私たちの究極の目標としては、できる限り多くのプロ選手を輩出することです。その結果、私たちのアカデミー出身選手がヴィッセル神戸でプレーしたり、さらにレアル・マドリード、バルセロナ、アトレティコ・マドリードといったクラブでプレーするような日を夢見て活動していきたいです。

―――日本の多くの人があなたに感謝しています。あなたのような元選手が日本の育成で仕事をしてくれることは容易なことではないからです。

ビジャ いえいえ。とても満足していますよ。今は私が日本で受けた応援、愛情に恩返しをする番だと思っています。日本ではマイホームのような居心地の良さを感じましたし、多くの人に応援してもらいました。せめてもの恩返しとして今のような形での取り組みをできるだけ長く続けていきたいと思っていますし、また日本に戻って、もっと日本のことを学んだり、訪れたことのない土地を訪ねたりできる日が早く来ることを楽しみにしています。付け加えると、本場のお寿司を沢山食べたいですね(笑)。また皆さんとお会いできる日を楽しみにしています。

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