バルサとレアルを率いる両監督 [写真]=Getty Images
分刻みでニュースが更新され、1日で情報が消費される現代において、日毎にチームの置かれる状況が変わるのは、当たり前のなのかもしれない。
バルセロナがエスパニョールとのダービーに大勝し、開幕したチャンピオンズリーグ(CL)でユヴェントスに快勝すると地元メディアから綺麗に「危機」というフレーズが消えた。スーペル・コパでレアル・マドリードに大敗してから「危機」と連日騒ぎ立て、メディアに煽られるようにカンプ・ノウのスタンドが「バルトメウ、辞任しろ!!」とコールしていたのが嘘のようだ。エスパニョール戦で何度も起こった会長の辞任を要求する声は、ユヴェントス戦では「ほとんどなかった」と友人のソシオは言っていた。そんな彼もエスパニョール戦の前には現体制への不満を語っていたが、そのクレームは今は霧散した。地元メディアも「今のバルセロナは危機にあるが、それはこの次のゲームに有利に働くか?」とエスパニョールの選手に質問をしていたはずだが、1週間も経たないうちにリオネル・メッシに始まり、エルネスト・バルベルデ監督、そして彼が指揮するチームへの賛辞の言葉が並ぶ。
スペイン紙『マルカ』は電子版で、バルセロナの好調はバルベルデの采配にあると分析した。
「メッシがゴールにより近い位置にポジションを取るようなった」
「MSNがなくなり、システムが変わった。ディフェンスの時は4-4-2で、メッシとルイス・スアレスを前線に残し、ウスマン・デンベレ、アンドレス・イニエスタがそれぞれのサイドのポジションを埋め、イヴァン・ラキティッチがダブルボランチの位置に下がるようになった」
「ネルソン・セメドの補強が当たり、ディフェンスが強固になり、また攻撃面でも厚みを加えた。昨夏に加入し、即戦力となったサミュエル・ユムティティのようになるだろう」
「バルベルデは中盤に時間を作りたいと考えており、イニエスタが絶対的なレギュラーとして、主役の1人に戻ってきた」
夏の移籍市場が終わった時は「エクトル・ベジェリンを獲得できず、第2候補がやって来た」と言われたセメドだったが、チーム同様に今ではそのパフォーマンスは誰もが認めている。
一方、レアル・マドリードはリーガ・エスパニョーラでバレンシア、レバンテ相手に引き分けに終わり、早くもバルセロナのとの勝ち点差を広げられてしまった。スーペル・コパに完勝した時は「史上最高の陣容」と評していたが、今では手の平を返し、チームの編成に疑問符が投げかけられ、決定機をことごとく逃した挙句に、負傷交代したカリム・ベンゼマの代役を務められる「“9番”を獲得しなかったのは、失敗ではないか?」という議論が起こっている。昨シーズンはアルバロ・モラタがいたが、今シーズンはいない。昨シーズンはジネディーヌ・ジダン監督がローテーションを採用し、クリスティアーノ・ロナウドらがいなくてもリーガではモラタやイスコが活躍し、勝ち点3を取りこぼさなかった。今シーズンは早々と2引き分けと、勝ち点を4も失ってしまった。スペイン紙『マルカ』は「ジダンはボルハ・マジョラルに信頼を置いている」とレンタル移籍から復帰した若手に懸けるチームの決断を称えたが、決定力不足で2戦連続ドローとなった後は「ジダンが会長に“9番”の獲得を直訴」「レアル・マドリードの“9番”候補はこの選手だ」という具合にトピックの見出しが変わっている。
世相は目まぐるしく変わる。
特にサッカーでは、1試合の結果で全てが変わる。
バルセロナがユヴェントスに勝利した翌日、決定力不足が指摘されていたレアル・マドリードは、リーガでは出場停止中の大エース・クリスティアーノ・ロナウドがスタメンで出場し、キプロスのアポエル相手に2得点を決めた。さて地元紙の論調は、どう変わるだろうか。
19シーズン連続でチャンピオンズリーグ初戦で黒星を喫しなかった試合の翌日、嬉しそうにしているクレはこう言う。
「ベルトメウへの退任を求めるコールはなかった。でも次のヘタフェ戦で負ければ、また全てが変わるんだ」
まだ9月だ。シーズンは始まったばかりで、その1試合で全てが決まるわけではない。そうは頭で理解していても、地元メディアの報道に染められ、週末の結果に大げさなほどに一喜一憂し、結果で生まれた感触、感情が次のゲームまで世相を支配する。一事が万事。それがメガクラブとそのクラブを応援する人の宿命だ。
文=座間健司
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