2017.08.19

注目はアトレティコとセビージャ…モリエンテスが語る17-18シーズン、リーガ展望

海外サッカー専門誌の編集を務めた後にフリーとなり、ライター、エディター、スペイン語の翻訳&通訳、フォトグラファーとマルチに活動を展開中。

インタビュー=池田敏明
写真=小林渓太

16―17シーズンのリーガ・エスパニョーラは、レアル・マドリードが5年ぶりに優勝しました。R・マドリードがバルセロナを上回った要因はどこにあったと見ていますか?

モリエンテス シーズンを通じて万全の状態を維持できたことが大きいと思う。数年前には、前半戦は好調だったのに後半戦に入って調子を落とし、バルセロナに逆転を許したこともあったけど、昨シーズンはコンスタントに勝利を収め続けることができた。ホームゲームに強さを発揮したのも要因の一つに挙げられると思う。そして何より、ジネディーヌ・ジダン監督が23~24人のスター選手をうまくコントロールし、チームとして機能させたことだ。他のチームであれば主軸を担うような選手でも、R・マドリードではベンチを温めなければならない。指揮を執る人間は毎試合、難しい決断をしなければならないけど、ジダンは選手たちをうまく使いながらコンスタントに勝利を収め続けた。それがタイトル獲得につながったことは間違いない。

R・マドリードがシーズンを通じて好調を維持したことは、ジダン監督が採用したローテーション制と無関係ではないと思います。

モリエンテス 普通に考えて、リーガやチャンピオンズリーグ(CL)を制するにはある程度、陣容を固めて戦わなければならないと思う。ローテーション制はすごく難しい。どのチームでも機能させることができるとは限らないけど、それをジダンは本当にうまく活用したと思う。とはいえ、全員が納得しているとは言えないことも確かだ。ハメス・ロドリゲスは不満を抱えてバイエルンに移籍してしまったし、アルバロ・モラタもチェルシーに移籍してしまったのは、ローテーション制に納得がいかなかったのかもしれない。それでも、最終的にはリーガを制し、CLでも連覇を達成することができた。これは全員が同じ目的を持って戦った成果だと思う。

では、2位に終わったバルセロナについては? あなたはどう見ていますか?

モリエンテス バルサはR・マドリード同様、常に優勝することを義務づけられたチームだ。だから昨シーズン、タイトルを逃したことで“失敗のシーズン”と捉えられてしまった。R・マドリードを下回る成績は、彼らにとって“失敗”を意味する。だけど、バルサが非常にいいチームで、常に前進する姿勢を持っていることは間違いない。

とくに昨シーズンのバルサは、リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの3人の負担が大きかったように見えます。彼らの個人能力に依存した戦い方について、どう思いますか?

モリエンテス いろいろなことを言う人がいるだろうけど、メッシもスアレスもネイマールも高い年俸をクラブからもらっているのだから、大きな責任を背負うのはむしろ当然だと思う。彼らにはゴールを決めて、チームにタイトルをもたらす責任がある。もちろんR・マドリードの選手たちにも同じことが言える。僕が見る限り、バルサの前線の3人はシーズンを通じてトップコンディションを維持していた。彼らは攻撃の全権を担っていただけでなく、守備面での貢献度も高かった。とくにネイマールは攻守両面で活躍していたよね。いずれにしても、彼らは決定的な仕事ができるよう、フレッシュな状態を維持したまま試合に臨まなければならない。

2強以外で印象に残ったチームは?

モリエンテス たくさんあるよ。予想外の躍進を見せたチームが多かったからね。例えばアラベス。彼らはコパ・デル・レイで決勝進出を果たした。予算に乏しいクラブがあれほどの活躍を見せたのは称賛に値する。エイバルもいいシーズンを送ったと思う。この2チームは印象的だったね。彼らの第一目標は1部残留だったはずだけど、その目標を簡単にクリアしてみせた。もちろんアトレティコ・マドリードやビジャレアル、レアル・ソシエダ、アスレティック・ビルバオ……上位争いの常連チームも及第点の活躍を見せたと思う。

リーガは今シーズンもレアルとバルサの優勝争いになりそうですが、ここに加わる可能性があるチームはどこでしょう?

モリエンテス まずはA・マドリードだね。間違いなくR・マドリードやバルサと互角に渡り合う実力を備えている。近年、2度にわたってCLで決勝進出を果たしているし、リーガ・エスパニョーラのタイトルも獲得している。それからセビージャも昨シーズンは上位争いを演じていた。この夏、多くの選手を放出してしまったけど、セビージャはもともと将来有望な選手を手頃な値段で獲得して、高値で売却することで経営を成り立たせてきたクラブだ。今夏はまた確かな実力を備えた選手を獲得しているから、期待が持てると思う。ビジャレアルやR・ソシエダ、A・ビルバオあたりも健闘するんじゃないかな。

バルサのエルネスト・バルベルデ新監督は「バルサのスタイルを継続する」と言っています。彼はバルサにどんな変化をもたらすでしょうか?

モリエンテス 監督が替わった時は、チームの戦い方もがらりと変わると思われがちだけど、R・マドリードやバルサの場合は事情が違う。彼らは常に攻撃的に戦って、守備面でのリスクは顧みずにゴールを奪い、勝利を目指すという確固たる哲学があるからね。そこから大きく逸脱しない範囲での変化にとどめるのではないかな。でも、ルイス・エンリケ前監督が今までにやってきたことをバルベルデがどう変えるか、一人のサッカーファンとして僕も楽しみにしているよ。試合中に戦術を変えることもあるだろうし、就任から開幕までの短い時間で彼がどのような変化をもたらしているのか、注目したいと思っている。

日本人にとっては、エイバルの乾貴士選手、2部のテネリフェからヘタフェに移籍した柴崎岳選手の活躍ぶりにも注目したいのですが、彼ら2人のことをどう評価していますか?

モリエンテス イヌイはバルサ戦で2ゴールを決めて一気に注目度が上がったけど、昨シーズンは1年を通じてコンスタントにいいパフォーマンスを見せていた。左サイドから攻撃を仕掛ける彼の活躍がエイバルの躍進につながった認識している。今まで何人もの日本人プレーヤーがスペインでプレーしてきたけど、ここまで短期間のうちにスペイン人の間で有名になった日本人選手は初めてだし、今シーズンも特に注目度が高い選手だと思う。ガクはスペインでの2シーズン目を迎える。スペインサッカーがどのようなものかはすでに分かっているはずだ。新しいチームにどれだけ順応できるか、という問題はあるけど、プレーの質は高いから、これから先もっと成長していってくれると思う。

君自身、現役時代はモナコやリヴァプールでプレーしました。スペイン人プレーヤーは国外のクラブに移籍しても活躍できる選手が多いですが、どうしてだと思いますか?

モリエンテス スペイン人プレーヤーは“完璧”だからさ(笑)。冗談はさておき、スペインの選手が国外で活躍できるのは、他国やその国のサッカーに素早く順応する能力があるからだと思う。スペインのクラブはどこも優れたアカデミーを持っていて、選手は若い頃からサッカーの技術だけでなく、人間性、様々な環境への適応力を学ぶ。そうやって成長してきたからこそ、国外の環境にも素早く適応できるのだと思う。

リーガの主役といえばクリスティアーノ・ロナウドとメッシの2人です。あなたが今も現役だったとして、一緒にプレーしてみたいのはどちらの選手でしょう?

モリエンテス 僕にまだプレーさせる気かい? どちらかというより、2人と一緒にプレーできたら最高だね(笑)。現時点で世界最高峰の選手はロナウドとメッシだと思うし、世界中のファンがサッカーについて語る時、彼らのことを話題にする。何度もバロンドールを受賞しているほどの選手だから、それも当然だよ。実際のところ、現役時代にはロナウドともメッシとも対戦したことがあるし、ユニフォーム交換もした。当時の思い出として、彼らのユニフォームは家に保管してあるんだ(笑)。

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