2017.06.14

【コラム】かつての失敗を糧に…“第2次ペレス政権”で成功のサイクルを迎えたレアル

フロレンティーノ・ペレス
レアル・マドリードはペレス会長のもと、成功のサイクルを迎えた [写真]=Real Madrid via Getty Images
フリーライター&フォトグラファー。スペインで活動中。

 レアル・マドリードがチャンピオンズリーグ(CL)を制した。今シーズンは、リーガ・エスパニョーラとの2冠達成であり、さらにCLが現行の大会方式になってからは史上初めての連覇となった。

 決勝で2得点を決め、リオネル・メッシに並ぶ5度目のバロンドールをぐっと引き寄せたクリスティアーノ・ロナウド。そんな絶対的なエースに休みを与え、ビッグマッチでの爆発を引き出し、巧みなローテーションで層の厚いメンバーを扱い、チームを2シーズン連続の欧州王者とリーガ制覇に導いたフランス人指揮官ジネディーヌ・ジダンには2冠の立役者としてスポットライトが集まった。彼ら2人はクラブにおいて、レジェンドと称えられている。一方、あるレジェンドと比較されている人物がいる。フロレンティーノ・ペレス会長、その人だ。

 レアル・マドリードで活躍した元ブラジル代表FWロナウド氏はスペインのテレビ番組に出演した際に、「会長にはリーガとCL優勝の祝辞を送った。フロレンティーノ・ペレスは、新しいサンティアゴ・ベルナベウだ」とコメントした。サンティアゴ・ベルナベウとは、元レアル・マドリードの選手であり、1943年から1978年まで会長を務めた人物で、今のクラブの礎を築いた。彼はアルフレッド・ディ・ステファノを獲得し、欧州カップ5連覇という黄金期を築き、さらにスタジアム、トレーニングセンターも建設した。その名前が現在の本拠地の名称となっていることが、その偉大さを雄弁に物語る。ペレス会長はそんな伝説の人物と比較され、「レアル・マドリード歴代史上最高の会長か?」と地元メディアの間で議論されている。

 ペレス氏は1994年に会長選に敗れたが、2000年に再度会長選挙に打って出ると勝利し、レアル・マドリードの会長に就任した。選挙の公約どおり、ライバルであるバルセロナからキャプテンのルイス・フィーゴを獲得した。それを皮切りにジダン、ロナウド、さらにデイヴィッド・ベッカムと、夏が来る度にスーパースターを1人ずつチームに加えた。その集団は『ロス・ガラクティコス(銀河系軍団)』と呼ばれもてはやされたが、チームとしてはベッカムを加えた時点でバランスが崩れた。その崩壊は指揮官を何度代えても止めることができず。そして2006年2月に2シーズン連続での無冠が濃厚となり、ペレスは会長を辞任した。クラブ所有の土地を売却することで多額の負債も返済し、さらにはスター選手も獲得したが、第1次政権では、欧州制覇は1度に終わった。

レアル・マドリード

第1次政権ではスター選手を集め、銀河系軍団と呼ばれるチームを作った [写真]=Bongarts/Getty Images

 世間はスペイン最大の建設会社のオーナーであるペレス氏の経営手腕は有能であることを認めていた。負債をチャラにし、チームを黒字に好転させたのはまさに彼でなければできなかった。しかし、言わずもがなレアル・マドリードは企業であり、かつスポーツチームでもある。現場の意向を聞かずにマーケティングを重視し、スターを加え、自分の意向に従わない監督も次々に替えてしまったので、同氏は“サッカーを何も知らないのに現場介入する会長”という烙印を押された。

 経験というのは、やはり何物にも代えがたいものだ。それは何も選手や監督に限ってのことではない。会長もそうだ。

◆失敗を糧に迎えた第2次政権

 ペレス氏は2009年に再び会長選挙に立候補し、彼1人しか手を挙げなかったため、会長に復帰した。そして就任と同時にC・ロナウド、カカ、カリム・ベンゼマを獲得した。当時は『第2次銀河系軍団』とも呼ばれていたが、今から思えば、全く違うことが分かる。ペレス会長はギャレス・ベイル、ハメス・ロドリゲスも獲得したが、チームの編成を考えず、無闇にスター選手を加えたりはしていない。と同時に買うだけでなく、売却も巧みだ。今やレアル・マドリードは買うだけのクラブではない。メスト・エジル、アンヘル・ディ・マリアは世界的なスターになる前に獲得し、退団する時は自分たちが買った価格よりも高値で放出した。相変わらず世界で買えない選手はいない潤沢な財政を誇るが、かつてとはお金の使い方が明らかに違う。

レアル・マドリード

第2次政権でも豪華なメンバーを揃えたが、同時に選手売却や若手への投資にも力を注いだ [写真]=Getty Images

 スペイン紙『ABC』によれば、レアル・マドリードは2009年の第2次ペレス政権が発足されてから、タレントかつ将来がある若い選手たちを集めた陣容をつくることを掲げている。第1次政権時には「ジダンネス・イ・パボネス(ジダンとフランシスコ・パボン)」という方針を掲げた。パボンとは当時トップチームに定着し始めていた下部組織上がりのセンターバック。つまりジダンのような出来上がった完成品のスター選手と、自前で育てた発展途上の選手でチームを構成するというものだった。

 第2次政権では国籍を問わず、タレントがある若い選手への先行投資に力を入れている。前記したエジル、ディ・マリアもそうだが、ネイマールと比較されるタレントを持つフラメンゴのヴィニシウス・ジュニオールもその典型だろう。近年でもCL決勝でゴールを決めたマルコ・アセンシオ、ドイツへレンタルに出されているスペイン人センターバックのヘスス・バジェホなど10代のスペイン人選手を獲得した。今夏はアトレティコ・マドリードからアラベスにレンタル移籍し、活躍した19歳のフランス人サイドバック、テオ・エルナンデスを加える予定だ。そう思えば、C・ロナウドもすでにバロンドールを獲得していたとはいえ、レアル・マドリードに入団した時はまだ24歳で、ベンゼマも21歳だった。そんな彼らが経験も手にし、全盛期を迎えた最近4シーズンで、レアル・マドリードは3度欧州王者に輝いた。

 ペレス会長は第1次政権の失敗を糧に第2次政権では新たな方針を掲げ、そして今、我が世の春を謳歌している。このレアル・マドリードの成功のサイクルは、21世紀のメガクラブの主流となるだろうか。

文=座間健司

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