2017.06.06

これを読めばすべてわかる! リーガ・エスパニョーラ 16-17シーズン「全クラブ通信簿」(1位~10位編)

16-17シーズンのリーガ・エスパニョーラを総括 [写真]=Getty Images
「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まったグループ。

 今シーズンのレアル・マドリードは、とにかく強かった。得点王もいなければ、最少失点GKもいない。戦術的にも洗練されているわけではなかった。だが、ピッチに立った全員がベストを尽くす。現役時代、誰もが羨む才能を持ちながらも、奢ることなく戦っていたジネディーヌ・ジダン監督のキャラクターが見事に反映された好チームだった。5年ぶりの優勝に異論はないはずだ。

 一方、3連覇を逃したバルセロナやアトレティコ・マドリードは、バックアッパーの“質・量”ともに物足りなさが残った。また、前半戦を2位で折り返したセビージャも終盤に失速。敏腕ディレクターとしてクラブを長年支えたモンチ氏やホルヘ・サンパオリ監督の退団など、最後はピッチ外の話題で揺れに揺れた。4位という成績ほどポジティブなシーズンだったとは言い難い。

 そんな中で目立ったのは、スモールクラブの健闘だ。10年ぶりの1部復帰を果たしたアラベスは、コパ・デル・レイ(スペイン国王杯)決勝で敗れたものの、今シーズン唯一、カンプ・ノウで勝利を挙げたチームとなった。また、1部在籍3年目を迎えたエイバルも、クラブ史上最高の10位フィニッシュを達成。最終節で乾貴士がバルセロナ相手に決めた2ゴール、また後日発表された日本代表復帰のニュースは、リーガ・ファンにとっても最高のご褒美となったことだろう。

 なお、今シーズンは1試合平均2.94ゴールを記録。これは、1試合平均3.10ゴールを記録した1962-63シーズン以来での最高記録だそうだ。来シーズンも“ゴラッソ”が飛び交う白熱した戦いが見られることを期待したい。


■優勝:レアル・マドリード(100点)
 2011-12シーズン以来、5年ぶりにリーガ・エスパニョーラを制覇すると、チャンピオンズリーグ(CL)では史上初の連覇を達成。UEFAスーパーカップやFIFAクラブ・ワールドカップの優勝と合わせて、シーズン4冠を成し遂げた。
 今シーズンは、スペイン1部のクラブとしては初の公式戦全試合得点を達成。7シーズン連続で40ゴール以上を記録したクリスティアーノ・ロナウドだけでなく、その他19選手が得点者に名を連ねるなど、どこからでもゴールを奪える攻撃力の高さが最大の武器だった。
 また、ジネディーヌ・ジダン監督がシーズンを通して、ローテーションを継続したことも功を奏した。リーグ戦で出場時間が1000分を超えた選手は、クラブ史上最多の20人を数える。これにより、主力組の消耗を最小限に留める一方で、控え組のモチベーション維持にも成功した。C・ロナウドは4月以降に出場した公式戦12試合で16ゴールをマークし、ラストスパートを牽引。また冬の移籍市場では放出候補の1人に挙げられたイスコも、年明け以降のリーグ戦で8得点を挙げる活躍を披露し、一躍主役の座へと上り詰めた。
 フランス人指揮官が頑なにローテーションを続けるため、メディアやファンの間では「“Aチーム(主力組)”と“Bチーム(控え組)”のどちらが優れているか?」といった論争も巻き起こった。しかし、常々「全員が大事な選手」と強調してきたジダン監督のプランが実を結び、クラブ史に新たな歴史を刻んだ。「私は世界最高の監督ではない」と謙虚さを崩さない指揮官だが、少なくとも現時点で世界ナンバーワンのチームであることに疑問の余地はないはずだ。


■2位:バルセロナ(75点)
 ヨハン・クライフ体制(1990~94)、ペップ・グアルディオラ体制(2008~11)に続く、リーグ3連覇はならず。レアル・マドリードとは対照的に、不安定さが目立つシーズンだった。
 上位4強との対戦成績は、4勝2分けで負けなし。4月の“エル・クラシコ”やチャンピオンズリーグのパリ・サンジェルマン戦など、大一番での勝負強さはさすがの一言だった。しかし、アラベス(9位)、マラガ(11位)、セルタ(13位)、デポルティーボ(16位)と、格下相手に敗れる脆さも同居していた。
 背景にあったのは、昨夏に150億円近くを投じて獲得した新戦力が総じて不発に終わったことが挙げられる。唯一、レギュラーの座を射止めたのは、サミュエル・ユムティティのみ。同選手が出場したリーグ戦はわずか1敗と、新たな“タリズマン”が誕生したのは喜ばしいニュースだが、一方で、アンドレ・ゴメスとパコ・アルカセルの“元バレンシア組”は低調なパフォーマンスに終始した。その結果、チームのバージョンアップを実現することは叶わなかった。
 3年間の任期で獲得可能なタイトル13個のうち、9個を獲得したルイス・エンリケ監督は、前線の3トップ“MSN”を誕生させるなど、新機軸を打ち出して古巣を復活に導いた。その功績は評価されてしかるべきだが、常にペップ・グアルディオラとの比較を強いられたのは不運だったとしか言いようがない。


■3位:アトレティコ・マドリード(80点)
 5シーズン連続の3位以上は、クラブ史上初めてのこと。“3強”の一角という立場を考えれば、最低限のノルマは達成した。しかし、レアル・マドリードに三度、欧州制覇の夢を阻まれ、現体制下では2季連続の無冠に終わった。
 ディエゴ・シメオネ監督は終盤戦、「就任以降で最も難しい1年だった」と何度も強調している。トップチームに登録された23選手のうち、18選手はケガを理由に1度は欠場。ティアゴ・メンデスやアウグスト・フェルナンデス、さらにヤン・オブラクなど主力級の選手たちを長期離脱で欠いたことは誤算だった。それ故、難しいやり繰りを強いられながら国内ではトップ3、欧州ではトップ4の地位を今シーズンも維持したことは評価されるべきだろう。
 それでも、再びタイトルを獲り損ねたという事実は変わらない。最大の目標であったCLで準決勝敗退が決まった後、アルゼンチン人指揮官は「ゴディンやガビのクローンを生み出せていない」、「(2強とは)近いように見える差だが、まだまだ大きい」と語り、チームの“伸び悩み”を示唆するようなコメントを残している。昨年9月には、2年間の契約短縮を発表。その後、指揮官は再延長の可能性を排除していないが、書類上では来季がラストシーズンとなる。新スタジアムで迎える新シーズンこそ悲願達成を期待したいが、またしても頂点に届かないとなれば、いよいよシメオネ体制にもひとつの区切りがつくかもしれない。


■4位:セビージャ(85点)
 リーガ・エスパニョーラで4位は、2009-10シーズン以来、7年ぶりのこと。また勝ち点72は、2014-15シーズンのウナイ・エメリ体制で獲得した勝ち点76に次ぐ、クラブ歴代2位の記録である。
 欧州で初指揮となったホルヘ・サンパオリ監督のもと、“魅せて勝つ”ことを目標に掲げたチームはリーグを席巻した。エスパニョールとの開幕戦で6-4という激しい撃ち合いを演じると、その後も順調に勝ち星積み重ねて前半戦を2位で折り返す。その過程では、レアル・マドリードの公式戦無敗記録をストップさせた。しかし、2月以降は急降下。チャンピオンズリーグ敗退後は、アトレティコ・マドリードに3位の座を奪われ、トップ4陥落の危機に瀕することに。そして4月には、スポーツディレクターのモンチ氏の退団が発表。さらにサンパオリ監督の去就問題も重なって、ファンは心ここにあらずの状態でシーズン閉幕を迎えた。
 清武弘嗣の加入もあって、今シーズン、最も注目を集めたチームの1つだったのは間違いない。そして、その期待に半分は応えたと言える。しかし、SDと監督が不在となった今、ゼロからのスタートを強いられるクラブには期待よりも不安しかないというのが正直なところだ。


■5位:ビジャレアル(90点)
 2013-14シーズンの1部復帰後、これで4シーズン連続の欧州カップ戦出場権獲得となる。とはいえ、開幕当初は前途多難だった。リーグ開幕10日前に、マルセリーノ・ガルシア・トラル監督を電撃解任。のちに、前シーズン最終節で故郷のクラブ(スポルティング・ヒホン)を残留させるべく、わざと負けたかのような発言をしたことが原因だったことが明らかとなったが、2部在籍時からチームを率いてきた“功労者”との関係を突如絶ったことにファンやメディアは動揺を隠せなかった。
 ただ、火中の栗を拾うこととなった後任のフラン・エスクリバの対応が秀逸だった。特に、騒動の原因はサッカーそのものにあるのではないと、システムやプレースタイルを大きくいじらなかったことが功を奏す。4-4-2を基本とするショートカウンターは、今シーズンも威力を発揮。レアル・マドリード、バルセロナ、アトレティコ・マドリード、セビージャのトップ4相手との8試合でわずか2敗(2勝4分け)と、上位キラーぶりを見せつけた。
 終わってみれば、マヌエル・ペジェグリーニ体制の2007-08シーズンに記録した勝ち点77に次ぐ、クラブ歴代2位の勝ち点67を獲得。オフ突入後まもなく、エスクリバ監督が1年の契約延長を勝ち取ったのも当然のことだと言える。


■6位:レアル・ソシエダ(85点)
 今シーズンは、勝ち点64を獲得。昨シーズンの勝ち点から「+16」の伸びを記録したが、これは「+20」を記録したセビージャに次ぐ成績である。
 エウゼビオ・サクリスタン体制2年目となった今シーズンは、指揮官が掲げるポゼッションサッカーが見事に嵌った。4-3-3を採用し、ピッチを広く使う攻撃サッカーを展開。アンカーポジションに入ったアシエル・イジャラメンディを中心としたテンポの良いパス回しは、「本家のバルセロナを凌ぐレベルだ」と現地でも高い評価を受けた。実際、1試合平均のチャンス創出数は、レアル・マドリードとバルセロナに次ぐ3位。1トップを務めたウィリアン・ジョゼが途中ケガで離脱しなければ、得点数や勝利数をさらに伸ばしていたかもしれない。
 そのW・ジョゼとともに、今シーズンから加入したフアンミの活躍も見逃せない。昨シーズン、サウサンプトンで失意の1年を過ごした小兵アタッカーは、キャリアハイの11ゴールをマーク。さらにリーグ戦で得点した試合は無敗という“不敗神話”も打ち立てた。最終節のセルタ戦でも、94分に値千金の同点弾をマーク。この1点によって、チームは6位を確定し、ヨーロッパリーグ出場権を手中に収めた。


■7位:アスレティック・ビルバオ(70点)
 2003年から2005年の第一次政権を合わせて、計7年間にわたってチームを率いたエルネスト・バルベルデ監督が今シーズン限りで退任(*その後、同監督はバルセロナの新指揮官に就任)。ひとつの時代が終わりを告げた。
 すでに知られているように、アスレティック・ビルバオには“バスク縛り”という特殊なルールが存在する。時代錯誤とも言えるハンデを自らに課したうえで、毎年のように成績を残すことは並大抵なことではない。そんな中で、2013年からスタートした第二次政権は今シーズンで4年目を迎えたが、いずれも7位以上という成績を残したのだから、その功績は称えられるべきだろう。
 また、数字を残すとともに、緩やかな世代交代にも成功した。御年36歳のアリツ・アドゥリスが今シーズンもチームトップスコアラーに君臨したが、リーグ全38試合に出場したイニャキ・ウィリアム(22歳)を筆頭に、DFイニゴ・レクエ(24歳)やDFイェライ・アルバレス(22歳)、またスペインA代表初招集を果たしたGKケパ・アリサバラガ(22歳)ら、20代前半のカンテラーノたちがレギュラー、あるいは準レギュラーとして活躍。彼らをBチームで指導してきたクコ・ジガンダが新監督に就任する来シーズンも、“バスクの雄”として確かな存在感を発揮することが期待できそうだ。


■8位:エスパニョール(80点)
 欧州カップ戦出場権は獲得できなかったものの、毎年のように残留争いに身を投じてきたエスパニョールにとって、今シーズンは満足のいく1年だったと言えるだろう。実際、勝ち点56は、21世紀以降では、ミゲル・アンヘル・ロティーナ(現東京ヴェルディ監督)が指揮官を務めた2004-05シーズンの勝ち点61に次ぐ、2番目の好成績になる。
 就任1年目のキケ・サンチェス・フローレス監督が好守にソリッドなサッカーをチームに浸透させたことはもちろん、選手個々の活躍も光った。前線では、チーム総得点の6割を叩き出した、レオ・バチストン、ジェラール・モレーノ、パブロ・ピアッティのトリデンテ(三銃士)が躍動。L・バチストンは6ゴールに留まったものの、枠内シュート率はリーグトップの約60%を記録。また、ジェラールはチーム最多、また自己記録を更新する13ゴールをマーク。ピアッティに至っては、得点とアシストの両方で2桁を達成し、『Uefa.com』が選出する今シーズンのリーガ・エスパニョーラのベスト11にも名を連ねた。
 さらに後方でも、3シーズンぶりのスペイン復帰で守護神に君臨したGKディエゴ・ロペスと、好連係を誇ったダビド・ロペス&ディエゴ・レジェスのCBコンビで構成される“守備の三角形”が抜群の機能性を発揮した。
 2015年秋に中国の大企業「ラスター・グループ」が経営権を取得して以降、クラブの経営体力も向上の一途を辿っており、来シーズンはさらなる躍進が期待できそうだ。


■9位:アラベス(95点)
 10年ぶりの1部返り咲きを果たした今シーズンは、開幕前に大ナタを振るった。就任初年度でチームを昇格に導いたホセ・ボルダラス監督に代えて、OBのマウリシオ・ペジェグリーノを新指揮官に招へい。さらに、新スポーツディレクターのもと、夏の移籍市場ではリーグ最多19名の新戦力を確保した。総入れ替えを敢行したチームに対する前評判はそれほど高くはなかったが、結果的には全てが良い方向に転んだ。
 2012-13シーズンのバレンシア監督時代に一度失敗しているペジェグリーノは、シンプルな堅守速攻を徹底。また対戦相手によって3バックと4バックを使い分ける柔軟性を披露し、限られた戦力を最大限引き出すことに注力した。すると、バルセロナとビジャレアルとのアウェーゲームでジャイアント・キリングを達成。また、平行して行われていたコパ・デル・レイ(スペイン国王杯)でも、初の決勝進出を決めた。練習の成果が着実な結果となって表れたことも大きかったのだろう。マルコス・ジョレンテ(←レアル・マドリード)やテオ・エルナンデス(←アトレティコ・マドリード)ら若手レンタル組もメキメキと頭角を現していった。
 歯車がかみ合ったチームは、1999-00シーズンの勝ち点61に次ぐ、クラブ歴代2位の勝ち点55を獲得。スペインサッカー界にも“敢闘賞”が存在するならば、彼らこそその受賞に相応しいと言えるはずだ。


■10位:エイバル(85点)
 1部在籍3シーズン目を一言で総括するなら、「大変よくできました」となるだろう。勝ち点(54)、勝利数(15)、得点数(56)、順位(10)は、いずれもクラブ史上最高の成績である。ラスト7試合で1勝(1分け5敗)しか挙げられず、最終的に10位でシーズンを終えたが、ホセ・ルイス・メンディリバル監督が「素晴らしいシーズンだった」と断言したように、記憶にも記録にも残る1年となった。
 スペイン2シーズン目となった乾貴士も、充実の1年を過ごしたと言えるだろう。3得点2アシストは昨シーズンとほぼ変わらないが、先発出場数は前年度から8試合増の26試合を記録。定位置を確保すると、今年1月には、リーガ・エスパニョーラの日本人最多出場記録を更新した。さらに最終節には、バルセロナ相手に得点を挙げた初めての日本人選手となり、新たな歴史にその名を刻んだ。そして、4月にはスペイン国王の来日に伴い一時帰国。クラブの“広告塔”としての役割もこなすなど、ピッチ内外でフル稼働だった。
 なお、現在の契約は2018年6月末までとなっている。“鬼門”とされてきたスペインの地で活躍する男の今後の動向も気になるところだ。

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